日本という、このすばらしい国 その11
執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰
我が国古来の、<話し言葉>の不思議
現在、私たちが喋っている日本語の祖語(原言語)は、まったくもって不明(系統未詳言語:国立民族学博物館教授先崎山理教授)なのですが、言語学的に分類すると膠着語にあたります。単語と単語の間に切れ目がなく、テニオハ等の助詞でいくつでも単語をつなげて言葉をつくることができる<話し言葉>です。
トルコ語、朝鮮語、モンゴル語、フィンランド語、ハンガリー語、タミール語などが、同じ膠着語に属する<話し言葉>とされていますが、どの言語も、日本語の祖語ではないようです。また、これらの言語は、同じ膠着語に属してはいても、お互いが自由にコミュニケーションできる言語でないことは言うまでもありません。コミュニケーションを自由に取り合うためには、それぞれの膠着語を、時間をかけて習得していかなければなりません。1万年以上も前から日本列島に棲んでいたといわれる縄文人も、現代に生きる我々日本人も、同じ膠着語を使って喋っていたはずです。とはいえ、果たして1万年前の縄文人と現代の日本人が自由にコミュニケーションがとれるかというと、たぶん難しいはずです。
理由は簡単です。文化や文明や気候や風土や社会や風習が異なるからです。「キャンプ道具を積んだ四駆に乗って、来週の土曜日から房総半島に遠出して、ボディサーフィンをバッチリ、キメてきます」といった日本語で、1万年前の縄文人に話しかけてもコミュニケーションがとれるはずがありません。縄文時代の人口は、南北に3,400kmという弓状に細長い地域に2万人から30万人ぐらいの間で推移していました。縄文時代の最盛期、つまり紀元前4,000年頃の縄文人の人口は26万人前後でした。26万人の縄文人が、仮に500人単位で日本列島に分散して居住していたと考えると(36万km2÷26万人)×500人=650km2となり、650km2の広さに500人しか住んでいないことになります。
陸地においては、間違いなく徒歩でしか移動できなかった縄文人が、北はオホーツクから、南は沖縄までの3,400kmにわたる長大な距離を、自由に行き来していたとは、とうてい考えられません。日本列島に分散して居住していたそれぞれの縄文人は、文化や文明の違いはもちろん、気候や風土や風習も明らかに異なっていたはずです。例えば、海苔を見たことも食べたことのない人たちの間で、海苔という言葉が生まれてくるわけがありません。当然のように、言葉も異なっていたに違いありません。交通機関や通信手段が高度に発達した現代においても、地方ごとに固有の方言が色濃く存在しています。
言語とは、本来そのようなものです。気候や風土や生活誌などと密接に連関しているのです。また、文字と違って言葉は、その地域で生まれて生活していれば、誰でも間違いなく習得できてしまいます。学校に行って学んだことが無くても100%の確率で習得できてしまいます。コミュニケーションできるようになるわけです。
しかし、生まれた地域が異なっていれば、たとえ言葉でも、時間と費用をかけて習得しなければ喋れるようにはなりません。文字のように読み書きできない人と、できる人が生まれる格差が発生します。言葉を喋る能力は、人間として生まれたからには、誰にでも平等に与えられている能力なのですが、文字を綴る能力は、生まれ育った環境が大きく影響する、格差のある、決して平等に分け与えられた能力ではないのです。このことは、これも先にパローレで記述した「知識」の問題に大きく関わっているのですが、ここでは、あえて言及しません。(つづく)
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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】
◎立命館大学 産業社会学部卒
1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
1990年、株式会社 JCN研究所を設立
1993年、株式会社CSK関連会社
日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
マーケティング顧問契約を締結
※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。
◎〈作成論文&レポート〉
・「マトリックス・マネージメント」
・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
・「コンピュータの中の日本語」
・「新・遺伝的アルゴリズム論」
・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
・「人間と夢」 等
◎〈開発システム〉
・コンピュータにおける日本語処理機能としての
カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
・TAO時計装置
◎〈出願特許〉
・「カナ漢字自動置換システム」
・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
計測表示できるTAO時計装置」
・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等
◎〈取得特許〉
「TAO時計装置」(米国特許)、
「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等