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日本の農業に未来はあるか ─ 種子が危ない? Vol.5

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こんにちは、Parole編集部です。

猛暑日の連続によるお盆休みも終わりましたが、まだまだ猛暑日が続きそうな気配です。甲府エリアでは40度を超す日が連続で続きましたので、熱中症対策のために地元名物のモモやブドウをたくさん食べて、美味しい日々を過ごしておりました。皆さまにとって今年のお盆休みはいかがお過ごしでしたでしょうか?

さて前回は「種子法」の制定から改正案が提出されるまでの歴史とその理由について実例と共に解説いただき、一次的な情報が重要だということで農林水産省からの資料をご案内し、このテーマに関する皆さんのご理解を深めていただきました。

そして今回ですが、実は最終回になります。山梨県の名産であるブドウを例にして、種苗法および商標法などの運用の現状とその問題点についてお話いただきます。

■専門用語を理解する

【ゴトウ】
今回が最終回なんですね、かしこまりました…。
今回も実例をとおして「種子法」改正の重要なテーマについてお伝えできればと思っております。どうぞよろしくお願いします。
さっそくですが、前回ご案内した法律案関連の資料等には目を通していただけましたか?宿題としてお出ししましたが…。

【編集部】
はい、ちゃんと宿題はやってきました。一見大変そうに思えましたが、読んでいくうちに、全体に流れる意図が見えてくる感じがしました。
ゴトウさんがおっしゃるように、一次情報にアクセスすることは大事ですね。

【ゴトウ】
宿題おつかれさまでした。たしかに専門用語を理解していないと、法律文を読んでも意味不明な部分が数多くあります。ですが、省庁が公開する「一次情報」にアクセスし、理解を試みことはとても大事だと思います。

フェイクニュースを簡単に信じてしまう人の多くは、「一次情報」を軽視しています。あるいは難しく理解が面倒な「一次情報」をスルーして、他人発のバイアス(先入観、偏りなど)がかかった「二次情報」と、マスコミや情報元が分からない「三次情報」ばかりにアクセスしてしまう傾向があります。

例えば「種子法廃止問題」騒動の時も、「主要農作物種子法」(通称、種子法)なんて、全部でたったの8条、農水省の資料では5ページ分程度しかありません。こんなに短い法律にもかかわらず、法律原文を実際に通読されている方は少ないのが現状です。

ボクが実際に「種子法廃止問題」に関するセミナーを開催した時、参加者の方々に「種子法の原文を読みましたか?」とお尋ねしたところ、ほとんどの方が原文を読んでいませんでした。

その反対に「種子法廃止反対派」の方々の著書は、多くの方が既読していました。だからこそ、この難しいテーマに関心を持たれてセミナーにご参加していただいているのは理解しています。

とはいえ、法律の原文はまったく読まずに、反対派の書籍を読むだけですと、やはりどうしても情報が偏ってしまうのは当然のことかと思います…。
〈まだお読みになっていない方は、以下のURLにアクセスしてみてください〉

▼主要農作物種子法(種子法)
・全文第8条(種苗法は全文第362条)
※出典:主要農作物種子法を廃止する法律(原文)<全5ページ>
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/info/attach/pdf/171116-11.pdf

【編集部】
でも、正直いいまして、農業分野の専門用語、法令用語が多く、読み難くく、正しく理解できているのかは自信がありません。

【ゴトウ】
たしかに専門用語を理解していないと思考停止になりやすいですよね。ボク自身もそうですけど、専門用語をある程度は理解していないと、本題について深く理解することは困難です。

【編集部】
「種苗法改正」問題を正しく理解するためにも、前回の「遺伝子組み換え」の専門用語の解説に続き、最低限必要レベルで結構ですので専門用語の解説をしていただけませんか?

【ゴトウ】
そうですね。法律の原文を読み解くために必要な、「種子法改正」に関わる専門用語の解説と同時に問題点を解説していきましょう。

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法律原文から以下の専門用語を抽出してみました。

▼関連する専門用語
・品目
・交配
・品種名
・登録品種名
・登録番号
・育成者
・育成者権名
・商品名
・商標名
・権利者
・出願者

続いて、分かりやすい事例として、多くの方が一度は食べた経験があるであろう「巨峰」と「シャインマスカット」との違いを簡単に比較してまとめてみました。

「巨峰」と「シャインマスカット」は、いずれも生食用の高級ブドウですが「種苗法」の観点では大きな違いがあります。

▼巨峰
・民間の個人育成家が開発
・品種登録を拒絶

▼シャインマスカット
・公的機関が開発
・品種登録された

■図表-1:巨峰とシャインマスカットの比較

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初めて見聞きする言葉ばかりで困惑するかも知れませんが、ここまでは大丈夫でしょうか?

【編集部】
はい。こうして比較してみると分かりやすいですね。
今まで、農産物に、品種名、登録品種名、商品名、商標名などの違いがあるとは知りませんでした。ブドウの「巨峰」は品種名ではなく、商標だったなんて驚きです……。

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