カミュ「シーシュポスの神話」の『すべてよし』
-1a.「・・だが、世界はひとつしかない。」
-2a.「私は、すべてよし、と判断する」とオイディプスは言うが、これは[不条理な精神にとっては]まさに畏敬すべき言葉だ。」
-3a.「この言葉は、人間の残酷で有限な宇宙に響きわたる。」
-4a.「すべてはまだ汲みつくされていない、かつても汲みつくされたことがないということを、この言葉は教える。」
-5a.「この言葉は、不満足感と無益な苦しみへの志向をともなってこの世界に入りこんでいた神を、そこから追放する。」
-6a.「この言葉は、運命を人間のなすべきことがらへ、人間たちのあいだで解決されるべきことがらへと変える。」
-7a.「シーシュポスの沈黙の悦びのいっさいがここにある。」
-8a.「かれの運命はかれの手に属しているのだ。」
-9a.「かれの岩はかれの持ち物なのだ。」
-10a.「同様に、不条理な人間は、みずからの責苦を凝視するとき、いっさいの偶像を沈黙させる。」
・・・カミュ「シーシュポスの神話」より前部
1.「ひとはいつも、繰返し繰返し、自分の重荷を見いだす。」
2.「しかしシーシュポスは、神々を否定し、岩を持ち上げるより高次の忠実さをひとに教える。」
3.「かれもまた、すべてよし、と判断しているのだ。」
4.「このとき以後もはや支配者をもたぬこの宇宙は、かれには不毛だともくだらぬとも思えない。」
5.「この石の上の結晶のひとつひとつが,夜にみたされたこの山の鉱物質の輝きのひとつひとつが、それだけで、ひとつの世界をかたちづくる。」
6.「頂上を目がける闘争ただそれだけで、人間の心をみたすのに充分たりるのだ。」
7.「いまや、シーシュポスは幸福なのだと想わねばならぬ。」
・・・カミュ「シーシュポスの神話」より後部
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18年ぶりにSと会った。
お互い歳をとった。
共通の友人(若い女性:17歳年下)の墓参りをした(20周忌)。
標高7000mを征した(Sと、その若い女性:共にプロの登山ガイド)とは思えない程、足が弱っているのがいちばんショックだった。私の足もそうだが・・
錯綜した心と心の絡み合い・・
生死の危険を共にした山仲間とは言え、
ちっぽけだった「違い」は増幅し、一層鮮明化したのだろう・・
ギクシャクした会話・・ボソッボソッと
共通点は、自然、山、ネパール好き、組織嫌い。「共通の若い友人」以外では・・
Sの病の話・・シニア世代の常・・
そんな年頃なのだ。お互いに。
・・すきま風が少し冷たい。
神保町の古書街は余計に寂寥感を掻きたてた。
かつて、この地域では珍しく労働争議をやったことがある。
某喫茶店・・気が合い過ぎる女性との静止した時間・・淡い記憶。
-9a.「かれの岩はかれの持ち物なのだ。」
「岩」を持ち過ぎているのかも、お互いに・・Sも私も
-2.「私は、すべてよし、と判断する」とオイディプスは言うが、これは[不条理な精神にとっては]まさに畏敬すべき言葉だ。」
3.「かれもまた、すべてよし、と判断しているのだ。」
Sも、私も、『すべてよし』と判断しているのだろう・・か?
否、だからこその「ギクシャク」なのかもしれない・・
-3a.「この言葉(『すべてよし』)は、人間の残酷で有限な宇宙に響きわたる。」
『すべてよし』・・「人間の残酷で有限な宇宙に響きわたる」・・ネガティブ?!否!
6.「頂上を目がける闘争ただそれだけで、人間の心をみたすのに充分たりるのだ。」・・ポジティブ!
『すべてよし』・・ポジティブに「頂上を目がける」「ただそれだけで、人間の心をみたすのに充分たりるのだ。」としても、これもまた「人間の残酷で有限な宇宙に響きわたる」のではないか?! (諦めでもなく、諦念でもなく、虚無でもなく、「事実」の重みに打ち拉がれるでもなく)
だとしても、声を大にして叫ぼう!
『すべてよし』・・と。
写真は、アフロディーテ(愛と美と性の女神)誕生地
ΑΦΡΟΔΙΤΗ, Ἀφροδίτη, Aphrodītē
ΑΦΡΟΔΙΤΑ, Ἀφροδιτα, Aphrodita(アイオリス方言)
Πέτρα του Ρωμιού στην Κύπρο
ペトラ・トゥ・ロミウ/ キプロス
20.Oct.24