年末年始いろいろ
実家の倉庫の奥の奥に立派な四段重を見つけたのは去年の春頃のことで、それ以来機会を見つけては積極的に使うようにしている。気ぜわしい年末にわざわざ重箱料理を拵えようというのは、滅多に着ることのない晴れ着を苦労して着付け、楽しむのと同じようなものだと思う。そういう遊びができるゆとりを構えて忘れないようにしたい。
御重
日程の都合上、御節ではなく年末料理として。
来年こそは御節として御重の本領を発揮させてやりたいところだが、個人的には、御節に付き物の「茹でた海老」、あれがどうしても冷めた御節の中にあって美味しくなるとは思えず悩ましい。いっそ西京焼きにでもしてみようか。
下仁田の八幡巻きは、味としては申し分ないのだけれど、お重につめた時に形が崩れるのがよくなかった。やはり芯は硬いものに限る。
一の重
出汁で茹でた豚もも肉をスライスしたもの
茶ぶりナマコ
牡蠣焼味噌
鶏の焼き漬け
車海老と菊花のなます
タコの唐揚げ
鶏田柚味噌
鰆の味噌粕焼
下仁田ネギの八幡巻き
ニの重
根菜5種炊き合わせ
三の重
ぶりの漬けチラシ
天ぷらと蕎麦
出汁を張った銘々の椀に、揚げた天ぷらと大皿に持った蕎麦を自由にとっていただくスタイルで、年越し蕎麦を。
雑煮
アゴと昆布の出汁に、干し椎茸の戻し汁、そしてかつお菜と金時人参からでる野菜の旨味、そこに網で焼き上げた塩鰤。
旨味に旨味をここまで重ねても怒られないのは、日本料理の中では雑煮の他には豚汁くらいしか思いつかない。まさに年に一度の贅沢である。
牡丹鍋
この猪肉をもらって驚いたのは包丁を入れた時のその身の柔らかさで、いくら「若いメスだから柔らかくて臭みもない」と言われていても、『猪にしては』という条件付きであろうとたかをくくっていたところを見事に覆された。
普段であれば赤味噌の出汁でグツグツとたいて粉山椒でもふりかけて食べる(無論それはそれで美味い、しかし別の料理である)のだが、今回は白味噌をベースにただただ優しく。甘い脂身が溶け込んで少しとろみのついた具合の出汁を絡めて食べる猪肉の上品な滋味は、到底筆舌に尽くすことができない。
アゴ出汁のうどん
雑煮のせいかアゴ出汁は力強いという印象があるけれど、アゴだけで丁寧にとった出汁は実に上品なものになる。
太めの生うどんに、薄くスライスした大根と菊の花を散らして。