#BLINDLOVE
他ブログで浜崎容子さんの歌声は筋肉質と評されていた。筋肉質な音楽と言えば、SPANKHAPPYもそう表現されていたような気がする。高校の音楽のテストが赤点ギリギリで素養も素質もない私は、筋肉質という意が解らない。わからないならわからないなりに、他の視点でやるしかない。
ライナーノーツを制作者本人が書くことほど野暮なことはないだろう。しかしライナーノーツをなにものでもないわたしの生活を通してこのブログに垂れ流すことには意味がある。という訳で『BLIND LOVE』をテーマにブログを書きます。多分『生欲』でもやります。
このアルバムはえらく力が入っていて、歌詞カードがめちゃめちゃお洒落。ユニバーサルが出していてサブスクも先行配信していた。当時金がない私は買わなかったけど、浜崎容子という看板女優だけで私は嬉しいのに、結構偉大なおいちゃんたちがバックにいて、これでコケるわけがないだろうな、コケたらそれは捉え方が問題だろうからかわいそうだなと思っていました。
結果アルバムが通販で届いて聴いてみたらいつまででも聴いていたい作品群だった。フィルムノワールは昔サブスクで買ったのだが、実のところあまり聴けていない。ブルーフォレストもサブスクで買っていて、それはガシガシ聴いていた。これは好みの問題で、フィルムノワールはコアな世界観で、わたしはその対象ではなかった。しかし、BLIND LOVEは好みとかを超越した質の良さを感じた。
私の作品に関する評価と影響力のある方面の世間の評価が一致したのかまではわからないが、これから浜崎容子の動向を見れば自ずとわかるはずでしょう。
『不眠』
という一曲目を聴いて、この高揚したテンションはあれを思い出さずにはいられない。ルネスタ(マイスリーの弱いやつ)を飲んでも眠れない丑三つ時に、「自慰なう」と捨て垢で呟いた自分の黒歴史である。(もちろん、捨て垢にはフォロワーがいない。歴代の捨て垢の中でも、唯一のフォロワーが絵恋ちゃんだった時代があったが、その日々をもう少し大事にしておけばよかった気がする)今は自力で寝付くようになったが、統合失調症向けのエビリファイ系とマイスリー系の薬を飲むと黒歴史を生みやすい。ソースは私。人によっては深夜のノリで好きでもない人に告白する。そんな精神状態を歌詞も疾走感でも表現できていて凄みを感じました。
『バイブル』
という二曲目。これはMVがYoutubeで先に公開されていたので見たけど、その時は好きになれなかった。重くて暗いからである。しかし、『不眠』というクラッシュメロディのおかげなのか、このくらいのボディブローでも全然胃もたれしなかった。海外サイトで聖書を燃やす場面について質問されていたが、彼らは聖書を燃やしたくならないのか。ならないんだとしたらずいぶんと禁欲的でおそろしい。多分質問しておこう、みたいなノリで質問したのだろう。ドラゴンフルーツを食べたことがあるけど、熟れてないと地獄みたいに酸っぱかった。失恋した心情表現に観葉植物はしっくりきます。
『新宿三丁目』
ときたら「あなたには文化がないから」という出だしについて触れない訳にはいかない。この歌詞だけ引っかかっていて、というのも私は国際文化を大学を専攻して思ったんですけど、どんな人であっても文化がないなんてあるわけないんですよね。でもそれは言葉狩りです。だとしても、「あなたは消費するから」って言いかえたほうが切実じゃないかと思わないでもないけど、そういう言葉を選んだ以上は浜崎容子の消費性という文脈が発生するわけで、それは避けたいですよね。これからも歌で飯を食ってほしいんで。今食えているのかな。関係ないんですけど、このアルバムが出たくらいの頃まで松永天馬と浜崎容子の仲を疑っていたんですけど、『新宿三丁目』を聴いて無いなと思いました。続く『これは涙じゃない』を聴いて確信しました。
『春の去勢不安』
は歌詞が意味わからなさ過ぎて思索していません。でも甘ったるい、これぞショートケーキみたいな歌詞なので、これをアーバンギャルドが調理する方面も楽しみだったんですけど、角松敏生って人はボサノバにしたんですね! ボサノバってお洒落だなってつくづく思いました。H&Mの植物柄の服みたいで。今ヤプログの松永天馬の日記読んでいるんですけど、上京したての浜崎容子はあどけなかったんだろうな、と読んでいます。化粧もあんまりわかってない人が、こんなに洗練されたのだと思うと浜崎容子のポテンシャルを大前提として、情熱は夢を育てるものだと思います。
『リフレイン』
の冒頭を聴くと必ず「本当にこの人は歌に感情を込めないなあ」と思うんですよね。でも今改めて聴くとガイドボーカルがそんな感じってだけで、主音声はフィギュアスケートみたいに演技力がかっています。「神様なんて信じてるの?」あたり聴いてみるとそんな感じします。リフレイン!っていう発音ぶりが筋肉質を感じるポイントなのかってくらい、力強いですね。21世紀がうんたら~で菊地成孔みを感じたので、SPANKHAPPYやっぱり好きなんだ~と思いました。音楽の素養がないとこんな話しかできないんです、ごめんなさい。語彙力は落ちましたが、どの曲にも劣らずいつまでも聴いていたい曲です。
『これは涙じゃない』
のイントロはいかにもなムードを漂わせて、バーとかでバーとかでバーとかで流れてそうな曲です。しかも客層の質がいい店。私は自分の経験を創作にしがちなんですけど、本気であればあるほど小説にできないと思っています。いつかは長編小説にしたいところですけど、そのストーリーを今歩んでいるという自負がある限りは怖くて未来なんか読めません。というのもあるし、本気であればこそネタにされた相手の屈辱も透けてみえてしまいます。そんな世の常で、失恋がこんなしっとりしたいい曲に仕上がるんですね。相手も、この曲を知ったらうれしいに違いありません。別れたことに関して一抹の後悔くらいは抱くでしょう。それが当事者たちにとって幸か不幸かは知りませんけど。
『THE TOKYO TASTE』
で大団円。角松さんの声があんまりにも若々しいので、大御所みを感じられませんでした。それこそがレジェンドの証なんですかね。英語の発音で苦労したとインタビューで見ましたが、音楽やっている人ってみんながみんな英語好きじゃないんだなって安心しました。このインタビューを見るまで、私は角松さんがくずやろうと本気で思っていました。というのも、制作経緯が小出しになってて、途中で角松さんがプロデュースを降りようとした、という話を聞いてすごく邪推して、変な話「肉体の強要とかあったのかな……(AV脳)」とか思ってたんです。いや、6月は本当にわたし調子が悪かったんです。許してください。そこら辺の常軌を逸した私の思考はツイッターを遡れば垣間見えます。低気圧ほんと嫌だよね!
BLIND LOVEが世に出て私は浜崎容子をより好きになることができたというよりは、BLIND LOVEによって私は浜崎容子を真に見つめようとすることができたかもしれません。私にはアーバンギャルドという大きな歴史を紐解いているという文脈があるので、浜崎容子に拘泥するわけですが、そうじゃなくてもふらっと気分を変えたい時にこのアルバムはきっと役に立つでしょう。そういうちょっとした憂鬱の時こそ上質なものが薬になるからです。