【国際的に変わる"精神疾患"の概念】
ICD-11の日本語訳が、ようやく公開されたようなんです。
はて、ICDとは?
言葉を説明しながら、精神科の概念が変わる近未来のハナシをします。
少し難しいですが、病気の概念も普遍ではないことがわかるお話です(^^)
参考URLはこちら
病院で「診断名」を付けるときに
参照される2つの“字引き”
国際的に、病気は「診断名」と診断名を付けるための「要件」が規定されています。
全てのお医者さんが使う共通した診断名や概念をまとめたものなのですが、次の2種があります。
ICD(あいしーでぃー)
精神科だけにとどまらず、医療で扱う疾患全ての要件をまとめています。
DSM(でぃーえすえむ)
精神科で扱う疾患のみをまとめています。
今回は、ICDのお話です。
これまでの数十年、医療現場ではICD-10を使っていたのですが、2018年にICD-11が公開されました。
日本語訳も進んだようなので、これからの医療はICD-11をもとに回っていくはずです。
ICD-11は大きな改変
2018.6月 ICD-10 → ICD-11
第10版から第11版にバージョンアップしました。
この変更は、ポケベルからスマホに飛び級するくらいの大きな改革かも。
精神科に限り述べると、ICD-10までは「精神科で扱う疾患」として分類した一方、ICD-11は「病態の似ているもの同士」でまとめたんですね。
例えば、睡眠。
ICD-10では「精神科で扱う疾患」としてまとめられていました。
ICD-11では「睡眠に関する疾患」として新しいカテゴリが作られたんです。
これ、結構、画期的でですね。
睡眠というと精神科の病気に思えますが、実際のところ、耳鼻科で扱う「睡眠時無呼吸症候群」、内科等でも扱う「むずむず脚症候群」など多岐に渡ります。
睡眠だから精神科
ではないんですね。
診療科の別なく、病態を見ながら治療の組み立てができるようになるのかもしれません。
「病気」の概念の変化
ICDにせよ、DSMにせよ、海外の言葉や概念で作られたので、日本語訳に難渋します。
とくに[disorder]の翻訳に難儀してきた過去があるようですね。
精神科の疾患名には、disorder がよくつきます。例えば↓
日本はこれまで[disorder]を「障害」と訳してきました。
ただ、日本語の「障害」はdisabilityの意味も含みますし、handicapの意味も含みます。
原語のdisorderのニュアンスをきちんと受け止めた和訳ではないんですね。
ということで、日本の概念に左右されない、原語に近づくことを目指し…
ICD-11から『症』と訳すことになりました。
ICD-10世代としては聞き慣れません。
ですが、「障害」という言葉の日本におけるイメージを払拭するために練りに練って翻訳された名前です。
大切に使っていきたいものです。
名前一つでこれだけ悩むのは、現在の「障害」や「精神疾患」という概念が新しいものに変化しようとしているからなのでしょうね。
言葉一つで何かが大きく変わることは無いかもしれませんが、新しい風を吹かせる好機にはなるかもしれないと思うのでした。
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