見出し画像

【精神疾患の家族を護る】

精神疾患を持つ家族の間で起こった事件を深めてみたいと思います。
専門用語を説明しながら進めますので、精神科の世界について考えていただける機会になればと思います^_^

文春オンライン



事件の概要

●4人家族
●長男30代:学生期に統合失調症が疑われる
●長男の拒否強く受診は叶わず
●5年前から近所を全裸で徘徊するように
●それを機に、家族が本人の手足を家具にくくりつけ生活するようになる
●亡くなる1ヶ月ほど前に階段から転落
●“褥瘡”から感染症にかかり死亡



褥瘡とは

いわゆる「床ずれ」のこと。
皮膚が一定期間同じところに触れ続けることで皮膚荒れし、傷になる皮膚疾患です。
高齢者の看護や介護で問題になることが多いですね。

さて、こちらの長男さんはまだ30代。
これほど若くして床ずれができる背景は、次の段でお話ししますね。

褥瘡は、医療的にはとてもシビアに対応します。
怪我を超えて皮膚が壊死することもありますから、そんな脆いところにバイ菌がくっついたら…想像するだけでコワイですね。

褥瘡を加速させた背景
栄養不良

褥瘡は、栄養不良でテキメンに悪くなります。
傷口を治す体の体力が無いことで、一気呵成に悪化しますし治りにくくなります。

長男さんは転落後は食事がまともに取れなかったとのこと。
転落か何らかの影響で栄養摂取が満足にできなくなった背景もあり、褥瘡が悪化してしまったのかもしれません。


褥瘡を加速させた
統合失調症の症状:陰性症状

統合失調症は、脳の病気。
脳内の信号が上手く働かないことで現れる疾患です。

有名な症状として、幻覚や妄想がありますが、真反対の症状もあります。
・まったく持って活動しなくなる
・表情が消えてしまい感情が感じられない
など。

陰性症状と言いますが、一般の感覚では想像がつかないほど活動しませんし笑いません。
誰から何も言われなければ、同じところにずっと座っていることもあるでしょう。

同じ格好を続ければ、皮膚の同じところ(お尻や背中など)がずっと圧迫されます。
栄養も不良であれば褥瘡になっても不思議ではないですね。

親から隔離されるきっかけ
統合失調症の症状:思考力の低下

統合失調症は、脳の病気と表現しました。
脳になんらかの(研究途上)エラーが起こるため、考える力や考えをまとめる力が低下します。

これが、全裸徘徊につながる一因ではないかと感じます。
幻聴に唆された可能性もあるでしょうが、「裸を見られると恥ずかしいもの」という思考ができず、全裸徘徊→隔離となったのかもしれません。

統合失調症は適切な治療をすれば脳へのダメージを緩めることができますが、医療にかからず放置すると症状は進行します。

統合失調症の詳しいことはこちらもどうぞ^^


家の恥は隠す

日本は、社会的立場を気にする国民性があります。
シゴトを持っていないと恥ずかしい、結婚歴が無いと人格的に難ありなど、相対評価を元にした人間評価が根強いですよね。

この長男さんは、もしかすると、そのような「日本人魂」の洗礼を受けてしまったのかもしれません。



専門職の発信力不足

専門職であるワタシたちの発信力がまだまだ足りないなと、このような事件を見ると思います。
精神科の偏見を減らすことができず、家族に抱えさせてしまっています。

多くの人がヘルプを出せるように普及啓発も大切だと改めて感じました。


この家庭にしかわからないつらさ

最後に、精神疾患の家族を抱える家族には、想像して余りある苦労や葛藤があります。
記事一つであれやこれやと言えるものではありませんので、学びの一つとして記憶に留めたいと思うのでした。
長男さんのご冥福をお祈りします。


オンライン相談室
ぱれぱれ