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都市と自然のつながりを感じさせるサステナブルな展示。伊勢丹新宿店「Museum Cube」ができるまで

『毎日が、あたらしい。ファッションの伊勢丹』として、日々最先端のファッションやカルチャーを発信している伊勢丹新宿店。

この度、parkERsは伊勢丹の靖国通り側の階段の踊り場に位置するディスプレイスペース「Museum Cube」のデザインを手がけさせていただきました。

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森の中の木肌に木漏れ日が落ちる様子を表現した、
4.5階 木肌×木漏れ日

地下1階から7階まで全8フロアの踊り場のディスプレイデザインのコンセプトは「Connected to Nature」。ショップとしてサステナビリティを発信している伊勢丹新宿店で、自然の美しさを切り取り再構成することで、訪れた方に都会で自然とのつながりに気づかせるようなデザインとなっています。

ショッピングの間に少し立ち止まり自然の豊かさに目を向ける時間が、サステナブルな社会づくりに繋がるよう、ひとつひとつ想いを込めて作りあげました。

各階に使用されている土・水・綿花・木・種など自然の要素がどのようにして集結したのか。今回のnoteでは、そんな制作秘話をご紹介いたします。

毎週生け変えられる旬の花

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大地の豊かさと、地面を切り裂いて芽吹く花を表現した
1.5階 大地×花

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建物の壁を雨が滴り、都市と自然が調和する風景を表現した
2.5階 建物× 雨

ディスプレイウィンドウの中に見られる花。フェイクでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、すべて生花です!

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毎週parkERsメンバーが現場に伺い、生け込みを行なっています。訪れるたびに違うディスプレイを見ることができ、季節を感じることができます。名称未設定-3_アートボード 1

生け込みのバリエーション

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自然の素材を工芸に発展させた漆と、自然そのものを凝縮した盆栽を対比させた
0.5階 漆 × 盆栽

こちらの盆栽は、普段より百貨店やホテルなどと取引のある由緒ある盆栽園さんに選定いただいています。

伝統の中でも「個性」や「遊び」のあるもので、奥行きの限られたショーケースの中で最大限に魅力を発揮できる盆栽をお願いしています。こちらも、毎回交換いただいているので、訪れたその時にしか見られない展示を楽しむことができます!

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盆栽のバリエーション

ボリューム感に圧倒!綿花のディスプレイ

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ふと手に取った洋服の一枚も、自然の一部であることを感じさせる
3.5階 綿花

こちらのディスプレイ。なんと約700個の綿花を手作業で配置しました。

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作業風景

フローリスト経験のあるメンバーのアイデアのもと、ひとつひとつをワイヤリングしてから刺しています。凸凹をつけてランダムに見えすぎず立体感が見えるように演出。

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5人ほどが手分けして、2日間かけて完成!重量感と存在感に圧倒されます。

これをみて、自分が今身につけている服も自然の一部だったことに気づいていただき、ひとりひとりがなにかサステナブルな取り組みをするきっかけになればと思います。

東京都檜原村の木材

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スギやヒノキの間伐材を用いた アップサイクルな、
5.5階 樹齢

間伐材を新しいアートとして仕立てたアップサイクルなこのディスプレイ。使用されている木材は東京都檜原村のもの。

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檜原村の森

都心から電車やバスを乗り継いで3時間ほどの場所にある森です。

この東京の森の木材を使うことで、都心も自然の景色と地続きで繋がっているということに気づいて欲しいという想いを込めています。

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ちなみにこちらもこのように手作業で並べて作っています。

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「木肌×木漏れ日」で使用しているこちらの木肌も檜原村のもの。きちんと自然に生えていた通りの向きで貼り付けているのがデザイナーの密かなこだわりです。

ちなみに木肌の横に植え込まれたアセビももちろん本物。ディスプレイの中でどんどん新芽が出て育っていっています。

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写真中央あたりに新芽が!

地層の表現

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ダイナミックな大地の表現が印象的
1.5階 大地×花

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地層の積み重なりから時間を感じることで「今」の大切さに気づかせる
7.5階 時間

「大地×花」と「時間」で使用している土を使った表現は、専門性を持つパートナー企業さまのご協力のもと、完成しました。

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サンプルの一例

土の色味の細かな差や、クラックの入り具合、濡れ感まで細かく調整いただき現在のものが完成。この質感は、ぜひ肉眼で見ていただきたいです!

建物を滴る水の表現

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花がせせらぎに影を落とす
2.5階 建物×雨

「建物×雨」では静かに水が流れています。ここでは、建物の壁が雨が滴る様子を表現しています。

実は難易度の高い、ディスプレイウィンドウの中での水を使用した表現。こちらはparkERsの空間で多くの施工や水什器の制作を担当いただいているパートナー企業さまのご協力のもと作成しました。

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こちらもサンプルをいくつか作っていただき、検討を重ねました。

日本全国から集まったどんぐり

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生命の多様性を感じさせ、眺めているだけで楽しい
6.5階 種

全国のどんぐりを集め、使えるものをひとつひとつ判別。こちらもひとつひとつ手作業で貼り付けています。

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種類ごとに選別したどんぐり

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混ぜて貼り付けるものや、飾りで最後につけるものなど、細かく指示をして貼り付けていただきました。

いよいよ施工当日

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百貨店のディスプレイですから、施工は閉店中の一晩で完成させました。

また、この「Museum Cube」の背景である壁の大理石。こちらは今までの展示では隠されていることが多かったそうです。今回はそこにある環境を生かし、そのままにすることで、伊勢丹新宿店の内装を自然の要素と同時に見せることができるデザインになりました。東京都選定歴史的建造物にもなっている伊勢丹新宿店本館の、由緒正しい建物と自然との親和性を感じることができます。

ファッションの世界でサステナビリティへの配慮が求められる時代背景を受けて、持続可能な社会を実現するために取り組んでいる伊勢丹新宿店だからこその発信を、parkERsの「自然」という要素が担うことができればと考えています。

さらに空間づくりに止まらず、今後はショップのみなさまと植林の活動などを通して、持続可能な活動を続けていく予定です。

parkERsのデザインのなかでもアート的な要素の強いものとなった「Museum Cube」。実際に手を動かして作り上げた部分も多いため、想いの詰まった空間になりました。ぜひ伊勢丹新宿店にお越しの際はお立ち寄りください。