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持続可能な農業を目指すフィールドワークスの「とみつ金時」
Park Coffee&Bageld(以下、「Park.」)では、地元福井の農家さんから旬の食材を仕入れさせていただき、季節に合わせたベーグルをお作りしています。今回ご紹介するのは、福井を代表するサツマイモブランド「とみつ金時」を生産されている株式会社フィールドワークスさんです。とみつ金時は、特別な貯蔵法で旨味が凝縮されたサツマイモで、全国的にも知られるブランド芋。Park.でも、これまでにもとみつ金時をベーグルに使用させていただいています(販売時期は商品によって異なりますので店舗にお問い合わせください)。
福井県あわら市にある株式会社フィールドワークスさんの農場。今でこそ福井を代表するブランドとして有名なとみつ金時ですが、ここまで知られるようになった背景には、地域の農業衰退に危機感を抱いた農家さんたちの奮闘がありました。
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収穫したサツマイモを大きさ、形などによって選別する
地域を再生した革新的な取り組み
「一番は危機感です。産地が高齢化に伴いどんどん衰退していく中で、今何もしなければ、10年後には廃れていくことが見えていました。自分たちが余力のあるうちに、失敗してもいいからなんでもやるしかない。そうしなければ、生き残れないだろうという危機感がものすごくありました。」そう話すのは、とみつ金時を栽培する株式会社フィールドワークス代表取締役の吉村智和さん。
15年ほど前、このエリアのサツマイモ農家は後継者不足が深刻な課題になっていました。吉村さんの農家は、戦後の開拓地として祖父の代から入植し、3代に渡り農園を営んできました。当時、同じ課題を抱えていた同世代の農家4軒とともに組合を作り、とみつ金時のブランド強化を進めていったそうです。
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とみつ金時のおいしさの秘密
とみつ金時とは、福井県あわら市の富津(とみつ)という地域で栽培されているサツマイモです。日本海に面した丘陵地である富津地区は、赤土を含み、程よい保湿性を維持する土壌の土地です。さらに、とみつ金時がブランド芋として人気を集めるおいしさの秘密は「キュアリング貯蔵」にあります。サツマイモの収穫時期は8月〜11月頃ですが、とみつ金時は12月中旬以降からキュアリング貯蔵に切り替わります。サツマイモを35C°、湿度95%以上の室内に90時間以上置き、その後温度を12C°まで下げて一気に冷やします。
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温湿度の差によって、ぎゅっとサツマイモに負荷をかけることで、サツマイモ自身が身を守ろうとして皮と実の間にコルク層を作ります。コルク化によって病原菌からも守られ、痛みにくくなるので長く持つようになり、糖度も上がってきます。この徹底した温湿度管理方法キュアリング貯蔵によって、甘みが強く、きめの細やかでしっとりホクホク食感のサツマイモに。智和さんとともに農場を運営する妻のみゆきさんは、「キュアリングは、元々サツマイモ以外の野菜で行われていた方法のようです。父の世代が他県を視察して、サツマイモに取り入れたと聞いています。また、他のサツマイモ産地でも導入されているところはありますが、温度と湿度をしっかりと管理するのがとても難しい方法なんです。」と説明します。
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ブランディング強化と産地化への挑戦
とみつ金時は、先代の時代からブランドとしての差別化を図ってきたそうです。冬場は強風が吹き荒れ、ミゾレや雪が降り積もる北陸地方は、農業を営むには厳しい気候だったといいます。そのため、農家にとってサツマイモ生産は、冬場の安定した収入源の確保に繋がったのです。一般に、サツマイモの産地としてすぐに思い浮かぶのは、温暖な気候の鹿児島や徳島のなると金時でしょうか。以前は、サツマイモの生産が可能なギリギリのライン(北限)と言われていた福井県。この地域で作られたサツマイモはおいしくないだろうというイメージがついていました。キュアリング貯蔵を行うことでブランド化を確立しましたが、智和さんの代では冒頭で触れた後継者不足で農場が存続の危機に直面していました。当時、智和さんとみゆきさんは、他の4軒の農家のメンバーとともに地域を再生するために組合「エコフィールドとみつ」を立ち上げ、とみつ金時の生産体制を再構築。さらに、出荷箱のデザインをリニューアルしたり、動画やWebサイトの制作を行い、見せ方を変えていきました。智和さんは、「僕らが組合を作った当初、県外の方に全く知られていないことに愕然としました。県内ではある程度認知されていると思っていましたが、いざ県外に行くと僕らの認知ってそんなもんなんだということを実感して。それから自分たちの農業をもっと伝えないといけない、違いを出すとか差別化を意識するようになりました。」と振り返ります。
当時は、農家でも自分たちのホームページ制作を推進する動きが出てきていたのだそうです。農家自らコンテンツを発信することが推奨され、農水省が農家さん向けの講座を開いたり、直売所で農家が直接商品を販売するような動きが一気に加速したのもこの時期だったとか。フィールドワークスさんは、自分たちでブランディングしていかなければならない状況の中で、農園や生産品の写真撮影や動画撮影、PRなども自ら進めていきました。
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時代の変化を意識したリニューアルの軌跡がうかがえる
多様性を育む土壌管理
智和さん、みゆきさんは、ともに1年間の海外派遣の農業研修の経験があります。同じ年に派遣されましたが、智和さんはアメリカの大規模農場、みゆきさんは家族経営のスイスの農場での研修でした。智和さんがアメリカ式の合理的な大規模経営の農業を学ぶ一方で、みゆきさんの研修先のスイスは景観保全、環境保全型農業の先進国。実家も農家であったみゆきさんは、スイスで目の当たりにした持続可能な農業のあり方に強く感銘を受けたそうです。「食の原点はやっぱり農業だと思っていたし、子どもの時から実家の農業の手伝いをしていましたから。農業は、作物をどうやって作るか、どう売るか、種蒔きから販売まで全部を自分たちでできる仕事なので、全てに関わることができるところがおもしろいですね。」(みゆきさん)
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Photo courtesy of FIELD WORKS
フィールドワークスさんでは、化学肥料や農薬だけに頼らず、乳酸菌を散布したり、微量要素と呼ばれるミネラルや鉄分を施すことでサツマイモに適した土壌作りをしています。人間の体内で善玉菌と悪玉菌がバランスよく存在することで成り立っているように、作物を植える土でも、菌の多様性によって豊かな土壌が育まれるそうです。高度経済成長期を経ている先代では、規模を拡大し、土地を無駄なく効率的に使い農作物を生産することが求められました。結果的に、土が疲弊し、化学肥料や農薬を多用することの限界がきていることを感じた智和さん、みゆきさんは、畑を休めるためにクロタラリアという緑肥(マメ科の植物)などを植えることで定期的に土壌を蘇らせています。
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とみつ金時ブランドの認知を強化し、地域の産業を再生させたフィールドワークスさん。今、持続可能な農業経営のモデルとしても注目を集めています。
※Park.店舗で販売する商品は季節によって変わります。本記事掲載の商品の販売時期については店舗までお問い合わせください。
※本記事の内容は、取材時(2023年)のものです。
Park. では、季節に合わせたベーグルをご用意しています。店舗で焼きたてベーグルとともにお待ちしております。
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