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福井のクラフトチョコレートメーカー×イラストレーターのコラボレーション

ベーグル専門店 Park Coffee&Bagel(以下、「Park.」) が関わらせていただいているたくさんの福井の生産者さん。今回は、福井県のBean to Bar(ビーン・トゥ・バー)のクラフトチョコレートメーカー AFTERGLOWCHOCOLATE (アフターグロウチョコレート)さんと福井在住のハイカー・Chao(チャオ)さんの手がけるイラストのコラボレーションをご紹介します。

illustration by Chao @chao__illustration

ユーモラスでどこかシニカルな印象もあるパッケージの中身は、詩的な余韻を感じられるチョコレート。この商品は、Park. をはじめ、アウトドア・ライフスタイルストア THE GATE、THE GATE Sporting Club など株式会社カンパネラが運営する各店で期間限定販売を行いました(販売は終了しています)。ベーグルの商品ではありませんが、県内の製造メーカーさん、生産者さんとの連携、そしてアウトドアを通した人との繋がりの中で行った Park.の新しい取り組みとなりました。


詩的な世界観と「余韻」を感じるチョコレート

福井市照手に店を構える AFTERGLOWCHOCOLATE さん。その店の名前が示すようにコンセプトは、「余韻」。カカオ豆の仕入れから製造までを一貫して行う方法「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」でチョコレート作りをされています。同店では、カカオ豆の選別、焙煎、粉砕、練り上げ、成形してチョコレートを作るプロセスを一つの工房で手がけています。細やかな製造管理により、カカオ豆の品質や風味を最大限に活かした、個性的で高品質なチョコレートが作られます。

AFTERGLOWCHOCOLATE の工房兼店舗
チョコレートの自動販売機が設置されている(写真右側)


お店の代表であり、作り手である納谷俊徳さん。店の内装や銅版画を元にしたパッケージの意匠は全てご自身で手がけられているそうです。というのも、納谷さんは渡独してドイツで金属加工を学び、金属作家として活動されていたといいます。「金属作家としての活動が土台としてあって、モノを作るということが僕の中で〈存在〉を作るという感覚があるんです。」と納谷さんは話します。
「たとえば、僕が何かモノを作り、それをある空間や場所に置くことで、いろんなものが変わるんですね。見えない空気だったり、モノと自分の間にある空間だったり。そのおもしろさに気がついた時、僕はモノそのものというより、何かこの空間に感じる〈存在〉を作りたかったんだなと思ったんです。」(納谷さん)

AFTERGLOWCHOCOLATE 代表 納谷俊徳さん
納谷さん自身が手がけた銅版画作品を印刷したパッケージ
パッケージに使われた銅版

創造の源としてのチョコレート

金属作家の納谷さんが、なぜ畑違いのチョコレートメーカーの道を歩むことになったのでしょうか。そのきっかけとなったのは、作家として制作を続けていた当時、偶然お酒の席で口にしたチョコレートに衝撃を受けたこと。心地よいお酒の酔いを感じながら舌に溶けていくチョコレート。その瞬間、余韻の中で見えない空間が見えたような、自分が作りたかった形が見えたような体験をされたそうです。
「余韻の世界観を作りたいと思ったことがきっかけです。チョコレートの味で余韻を出すというよりも、チョコレートと人とを結びつける空間みたいなものを作りたいと考えたのが最初の動機でした。」と納谷さんは当時を振り返ります。

AFTERGLOWCHOCOLATEのチョコレート
器も納谷さんの制作
商品に使用するカカオ豆

納谷さんが現在のお店をオープンしたのは3年前。その半年ほど前から独学でチョコレート作りの勉強をされたのだとか。チョコレート作りの経験がない状態でしたが、カカオの加工、焙煎から始まり、分離作業、粉砕、砂糖を入れるタイミング等々、トライアンドエラーを繰り返しながら実践的に学びを深めていきました。
「僕の中で、時間のルールがあるんです。3ヶ月とか、長くて半年ほど集中してやれば比較的なんでもできるようになるんじゃないかと思っていて。僕の場合、ドイツ語が全くできない状態でドイツに行って、半年ほど毎日必死でやり込んで勉強して、日常会話程度は話せるようになったんです。」(納谷さん)


こだわりのシングルオリジンブレンド

AFTERGLOWCHOCOLATE さんのチョコレートには、個性が特徴的で味の違いがわかりやすい4つの産地のカカオ(ガーナ、コロンビア、ドミニカ、ハイチ)が使われています。例えば、ガーナは酸味が少なくコクがあり、カカオの味がしっかりと感じられます。一方、コロンビアは、酸味が強くフルーティーでワインのような味わい。配合は、70%カカオと30%砂糖(甜菜糖)の割合をベースに作られています。カカオのポテンシャルや発酵具合によって味が変わり、コンチング(チョコレートを滑らかにする作業)の時間や温度を調整して、滑らかさや味わいを変えているそうです。また、同じ産地のカカオでも、複数の異なる製法をブレンドしてチョコレートを製造。つまり、使われているのは一種類のカカオなのですが、焙煎時間を変えた複数の状態のカカオをブレンドしているという、なんとも手の込んだ製法で作られているのです。「こんな手間かかるめんどくさい作業をやっている企業さんは他にいないかもしれないですね。」と納谷さんは苦笑します。各工程で異なる味を引き出し、それらを組み合わせることで類まれなシングルオリジンチョコレートを実現しています。

店内のディスプレイ


形から味までをクリエイトする

チョコレートは、オリジナルの型に落とし込んで仕上げられています。一般的に、既製品の型が使われることが多く、オーダーメードの型を外注するととてもコストが高いのですが、AFTERGLOWCHOCOLATE さんでは、自社に専用の機械を入れてオリジナルの型も製造できるようにされたそうです。
「店を始めた当初は、実は型にそこまでこだわっていなかったのですが、食べる前の見た目から世界観を表現したいと思い始めて。最終的には食べた後の余韻が記憶になるものを作り出したいと考えるようになったんです。」
「形から味までをクリエイトする」のがAFTERGLOWCHOCOLATE 。それを「余韻」として体感してもらえるよう、「今の現状が最適だと思わずに、常に問いかけをしながら追求しています。」と納谷さん。まるでアーティストが芸術品を制作するようにチョコレート作りを追求されています。

店舗のショーケースに書かれた納谷さんの想い

AFTERGLOWCHOCOLATE

2024年、「International Chocolate Awards Asia-Pacific 2024」micro batch origin dark chocolate bar 部門にて同店の商品「Colombia」がSILVER を受賞されました。


アウトドアの題材をユーモラスなイラストで表現

AFTERGLOWCHOCOLATE さんのチョコレートを包むコラボパッケージのイラストを手がけたのは、福井在住のハイカー・Chao さん。ユーモラスでどこかシニカルな画風のイラストが特徴的です。

ハイカーでありイラストレーター の Chaoさん

ハイキング・トレイルランニングなどのアウトドアアクティビティ専門店THE GATE Sporting Club を頻繁に訪れる Chaoさんのアトリエには、たくさんのアウトドアギアが。今回、イラストを担当したきっかけもTHE GATE を通した交流からでした。

Chao さんのアトリエ

「カンパネラさん(Park. 、THE GATE各店の運営会社)からチョコレートのパッケージのイラストを描いて欲しいというオーダーをいただいて、40点ほどのラフをまず送ったんです。初めはアウトドアやキャンプなどざっくりしたイメージだったんですが、さらにそこから絞り込んでいきました。ショップのスタッフの方から車やハイカーをモチーフにとか、チョコレートを前面に出して欲しいとか具体的なテーマをいただいて。リクエストが具体的であるほど描きやすくなるのでそこから一気に仕上げていきました。」(Chaoさん)

illustration by Chao @chao__illustration
illustration by Chao @chao__illustration
illustration by Chao @chao__illustration

Instagramでイラストを公開されているChaoさん。デジタルには慣れているのかと思いきや、ご本人によれば「デジタルは少し苦手」なのだとか。
「紙にまず描いてからデジタルで清書してます。(iPadの)ガラス板に描くって、すごく隔たりがある感じがするんですよね。ペンの走り方とか違うでしょう。一つ間にフィルターがかかっている感じがあって、ダイレクト感がなくて。」(Chaoさん)

Chaoさんのラフ画

普段から描いているたくさんのラフ画も見せていただきました。子ども時代から絵を描くことが好きだったChaoさんが、小学校時代のアルバムに書いた将来の夢は「漫画家」。当時は、実際に漫画を制作し、冊子にまでしていたそうです。しかし、その後は、絵の道には進まずに制作からは離れていました。

また、ハイカーであるChaoさんは、10年ほど前から登山を続けられ、特に近年は仕事が休みに入れば頻繁に山歩きをされているそうです。それでも一時は、仕事の忙しさで不健康な生活が続いてしまった期間もありました。何とかしなければと思っていた矢先、THE GATE Sporting Club がオープン。仕事終わりにランニングをしたり、アウトドアイベントにも積極的に参加しながら「おもしろくてどんどんのめり込んでいった」と話す Chaoさん。
同ショップのコミュニティを通して、Chaoさんが再びイラストを描き始めるきっかけが生まれました。あるイベントに参加した時、その場で何気なく描いたイラストにスタッフの一人が目をとめ、「すごくいいですね。もっと絵を描きましょうよ!」と背中を押してくれたのだとか。Chaoさんも、本当に気軽な気持ちで「おっ、そうか。じゃあ、やってみようか。」とInstagramに投稿し始めました。その後、継続的に投稿を続けていたところ、チョコレートのコラボレーションに繋がったそうです。

Chao さんが惹かれるのはJean Jullien、Herve Morvan、Raymond Savignac
いずれもフランス人のアーティスト

「どんな展開になるのか、自分でもワクワクして引き受けさせていただいたんですが、意外に囚われてしまうんだということにも気がつきました。いわゆる無名だと自由なのですよね。好き勝手いろんなものを描けるんだけど、いざ仕事となると相手の希望にそったものが求められる。自由に描いている時の方が楽しいかもしれない(笑)。でも、SC(THE GATE Sporting Club)でのアウトドアを通じた交流は非常に大きかった。あのタイミングがなかったらこういう展開はなかったかもしれないのですし、ありがたい機会をいただきました。」(Chaoさん)

Chaoさんのイラストは、ご本人のInstagramでもご覧いただけます。
@chao__illustration


Park. でご提供する商品が、生産者さん、メーカーさん、アーティストさんなど、さまざまな方との関係で成り立っていることに感謝します。AFTERGLOWCHOCOLATE さんと福井在住のハイカー・Chaoさんとのコラボレーション、お手元に届いた方に楽しみとおいしさを感じていただければ幸いです!


※Park.店舗で販売する商品は季節によって変わります。本記事掲載の商品の販売時期については店舗までお問い合わせください。

※本記事の内容は、取材時(2024年)のものです。



Park. では、季節に合わせたベーグルをご用意しています。店舗で焼きたてベーグルとともにお待ちしております。

Park Coffee&Bagel 販売中のベーグル、日々の情報はInstagramの配信をご覧ください。
公式Instagram
https://www.instagram.com/parkcoffeeandbagel/

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