猫背で小声 | 第21話 | ひき こもりの おじちゃま
ぼくは何十年もの間、引きこもっていました。
部屋の中にいても希望はなく、このまま死んでいくんだろうな、と諦めの気持ちが身体と脳みそに侵食していくこともありました。
でもそんなぼくを変えてくれたこと。
当時、半径3メーターの景色しか見えない悲しいぼくでしたが、半径1メーター内で「ぼくを変えてくれたこと」を紹介します。
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まずは姪っ子の存在。
ぼくには姪っ子がいて、高3と中3のかわいいレディーたちがいます。思春期になり、年頃なのか、最近ぼくを避けている節があります。
上の子が産まれた時、<絶賛引きこもり中>のぼくは、時間がありあまっていたので、なぜか姉の旦那よりも先に産まれたての姪っ子を抱きました。『笑福亭鶴瓶』や『六平直政』の顔をしていないことに少し安堵しました。
安堵した余韻からハッと現実に戻ると、「かわいいなぁ」という気持ちと、産まれたこの子に『楽しい叔父(おじ)さん』というものを見せたい気持ちが湧いてきました。
その十数年後、ぼくは『キャッチコピー』というものに出会うのですが、そのキャッチコピーを通して、「おじさんは頑張っているんだぞー」という姿と、少し変なコピーを考えて「楽しそうにしているおじさん」というものを見せたかったのです。
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次に『バス旅』。
『バス旅』という言葉を聞いて何をイメージしますか?
『太川陽介』、『蛭子さん』、『大泉洋』、『ミスター』、上京したての東京に翻弄されている若い『はとバス』のガイドさん。
ぼくのバス旅はどちらかというと大泉洋の『水曜どうでしょう』のバス旅です。長い距離、高速バスを乗っては身体を痛めつける、腰とお尻とメンタルに悪いバス旅をしています。
部屋にこもっていた時、『水曜どうでしょう』の放送がありました。<東京から福岡まで高速バスで向かってみる>という奇天烈な内容でした。これを見た時に「バカらしいけどやってみたいな」という気持ちが生まれました。
ぼくのような引きこもりが高速バスで地方に行き、その土地で右往左往していたことを文章で書いたら、少しくらいおもしいことになるんじゃないかと感じたからです。引きこもりを脱した感のある、リワーク施設(17話参照)に通っていたときにはじめてバス旅をしました。行くか行かないか不安でしたが、NISSAN のコピーをパクったかのような「やっちゃえコンドウ」で行動に移しました。
高速バスで東京駅から徳島駅まで向かい、自分の名前である『学(まなぶ)』という文字が入っている『学(がく)』という駅まで行きました。
その学駅で、地元のおっちゃん、おばちゃんと話をして、NHK の『家族に乾杯』の笑福亭鶴瓶のようなことをして東京に帰ってきました。鶴瓶の本名が『学』なので、学らしいことをして東京に凱旋したわけです。
あの時、バス旅をするかしないかで悩みましたが「やっちゃえ !!」という思い切りが楽しいことを生み出したのだと思います。バス旅を楽しむための秘訣ですが、「サービスエリアではどんなに眠くても『屈伸』をしよう。」これがバス旅で学んだことです。良い子はマネしてください。
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最後に紹介するのは『パークギャラリー』なのですが、この話は、また次週。
近藤 学 | MANABU KONDO
1980年生まれ。会社員。
キャッチコピーコンペ「宣伝会議賞」2次審査通過者。
オトナシクモノシズカ だが頭の中で考えていることは雄弁である。
雄弁、多弁、早弁、こんな人になりたい。
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