サンローランのサファリ
正確には、Yves Saint Laurentが1968年に発表した「サハリエンヌ」。
このモノクロ写真を見た覚えのある人は多いと思う。
多くの人は「サファリ・ジャケット」と呼んでいるし、ネットで英語で検索してもこの呼び名が一般的ではあるけれど、実際には被って着るタイプのチュニック型。ハイサイブーツと合わせたら、マイクロミニワンピースである。
一度だけ、パリのブロカントでこのサファリ・ジャケットを見かけたことがある。
ごく淡いパステルイエローで、「へえ、こんな色のもあったんだ」と驚いた。自分には似合わない色だけれど、つい好奇心から価格を訊いてびっくり!パリ中心部アパルトマンの家賃かと思った。カードリーダーを持っている気配もなかったし、現金で売るつもりだったんだろうか。
紐をクロスさせるデザインのシャツを欲しがるのは、実は初めてではない。海賊モノのドラマの見過ぎで、フリルひらひらで紐クロスの17世紀チックな白ブラウスを探しまくった時期があった。もう10年ほど前か。
そういうブラウスは子供の仮装用衣装の店にしかないことがわかり、ハマっていた海賊ドラマも全シーズン見終わって、いつしか紐クロス海賊ブラウス欲は蒸発した。
それから数年。
アメリカ軍のジャングル・ファティーグを見るたび着るたび、冒頭で述べたモノクロ写真が脳裏に浮かぶ。まったく別物なのに、なぜか私の脳内では同じフォルダにしまわれているのだ。
乾いた大地のヴィジュアルにぴったりの衣服。そして、ウエストをギューッとベルトで絞って着ると恐ろしくカッコいい服。そう、私はベルトでウエストを絞る服が好物なのだ。そこそこ肩幅があって胸囲は控えめすぎで胴が鯛の薄づくりなので、ウエストを絞るくらいしか正面からの見た目にメリハリを得る手段がないし。
これに何を合わせて着れば意外かつ最高にカッコいいかを、想像するのが楽しい。持っていない服のコーディネートに想いを巡らせるという、お金のかからない遊び。ショートパンツやバミューダのコーディネートは出尽くしているので、もっと違う何か、決定的に違うスタイルを思いつきたい。肝心のサハリエンヌは持っていないんだけどさ。