ヴィンテージのビュスチェまたは長めのブラジャー
まさか自分がこういうたぐいの服(服カテゴリーに含めていいのだろうか?)を欲しいと思う日が来るとは。人の価値観は刻々と変わり、人生は驚きに満ちている。
なにが欲しいのかと言うと、1930-40年代ごろの、ブラジャーが量産可能になる時代の直前の代物である。
当時は1点ずつ仕立てられていたので、デザインはバラバラ。第二次世界大戦前までは既製服のサイズ表示義務が特になく、商業的な規格はないに等しかったので、実にさまざまな体型の女性がいたのだな、と感動する。
胸の立体的なラインを作るために縦方向に何本も骨組みが入っていたり、骨組みの代わりに細かい渦巻き状のステッチが施されていたり、ところどころにプリーツで厚みを持たせていたりと、当時の注文主と仕立て屋の創意工夫が盛り込まれている。
レース飾りなどはないことも多く、たいていはアンティークローズ色かアイボリー色の艶やかなサテン生地。ヴェルヴェットのリボンが控えめにあしらわれていたりするのを見ると、なんとなく心がキュンとする。
一度だけ、友人ディーラーがブロカントで売りに出していたデッドストック品を、試着したことがある。試着しかけた、が正しいか。
1950年代のものだった。パッと見てサイズは合うと思ったのだが、そうだ、現代の下着とちがってストレッチ生地じゃないから、全く伸縮しないんだ...(金具が止まらない)
なぜビュスチェ(または胴長めデザインのブラ)に興味が向いたかというと、これも主にはジャケットの下に着たいから。ジャケットとシャツは相当に深い沼だなと、ずぶずぶハマりながら考えている。