パリのアパルトマン。白熱のミーティング。
先日、私の住むパリのアパルトマンでオーナーミーティングなるものがあった。
先ずはこのアパルトマンについて。
共用玄関がある表通り側に1棟5階建ての建物、その建物を進むと中庭があり、中庭に面した奥側に1棟5階建ての建物の、計2棟が一緒の番地になっている謂わゆるオスマン建築。各階2世帯のみなので2棟合わせて20世帯が共有の郵便受けやゴミ置場や駐輪場などを使い、合算された共益費をそれらの管理や月に2度の掃除業者への支払いや修繕積立などに充てている。
なんせ築150年を超えている建物だから修理箇所もやたらと多い。
やれ今年は屋根を修そうとか、そろそろドアのデジコードの番号を変えようとか、色々なことをリーダー発案の元、オーナー全員の多数決によって決めていく。
キング オブ オーナーであるリーダーを選出する1年で最も熱いイベントがこのオーナーミーティング。賃貸にしていて自身は遠方に住んでいる所有者も含め、オーナーの中からその年のリーダーを立候補者に対して投票すなわち選挙で決まるのだが、毎年立候補者が多すぎる。
権利のない賃貸の人でさえ立候補して来るから驚きだ。
建物を管理している不動産屋さんのオフィスで行われた前のめり過ぎる住人たちのミーティングは、喧嘩から始まった。
口火を切ったのは、賃貸の身分でミーティングに潜入したマダム。見た目は可愛らしいおばあちゃんなのだが性根が悪く日頃からトラブル多目。現リーダーへの差別要素を含む痛烈な悪口をつらつらと吐き始めた。
すると至近距離から挨拶をしても絶対に目を合わせてくれない、いつも壁や床のヒビを心配しているムッシュが「リーダーにふさわしいのは俺だ!」とカットイン。
一応進行表があるのだがみんなお構いなしだ。
このムッシュ、ヒビ割れを見つけては不動産屋さんに文句をつけに来ているようで、不動産屋さんからかなり煙たがれている事がはじめて分かった。
結局ヒビには興味のない全員から総スカンを食らって、怒って帰宅してしまった。
まだ始まって10分経ってない。
あれ待って?これ去年のデジャブじゃない?
去年は上の階のムッシュが、何かに怒って資料をぶちまけて帰ったんだった。
帰ったって言っても、帰る場所はみんな同じアパルトマンなんだけどね。
最近引っ越して来た赤ちゃんのいる若いマダム。「共用玄関のドアが重すぎてベビーカーを押しながら開けるのが大変だからなんとかして欲しい。」と。大人しそうなのにこの珍獣、いやご近所さん相手にしっかりと自己主張。
う〜ん流石フランス人。
我が家の真向かいの独身マダムは「手前の棟は去年壁と螺旋階段を塗り替えて綺麗になったのに、こちらの棟は何もやってもらってない。」と発言。これ私が常々思ってた事。心の中でガッツポーーーズ!
が、すぐさま手前の棟の住人が「今年じゃ無くてもまだ良くね?」と否定。
これには思わず思いっきり舌打ち。
我が家の真下の部屋のムッシュ。最近は介護付きでないと外出できなくなってしまった大好きな優しいおじいちゃん。大好きなんだけど、このムッシュに限らず年寄り勢は、お金のかかる事は全部ノン。またまた舌打ち、ちっ!
その後も、1個の議題に対し、意見の相違、悪口、喧嘩は続き、2時間を予定していたリーダーミーティングは全員がクタクタに疲弊した5時間経ってフェードアウト気味に閉幕した。
そして肝心のリーダー選挙は、投票結果が出たとて異論反論オブジェクションが止まず、結果今年はリーダー4名という事で。って多いでしょ。
翌朝、あれだけぶちまけてやりあった住人たちがケロッと立ち話などしている。
ね。そうだね。そうだよね。
これぞ愛しのフランス人。
☆今日のめっちゃ簡単フランス語 ☆
réunion / レウニオン・ ミーティング
déjà-vu /デジャ ヴュ・既に見た、前に見た