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藤の湯に行ってきた話

私の大親友に林君という、のっぽで韓国人顔の、テレビにテロップを入れてる人間がいる。
彼のいいところは軽いところで、悪いところは頭だ。

この日私は銭湯に行く約束をしていた。
それも前日から。
イチバンニバンのまっしーと決めていたのだ。
どうやらまっしーはネタ合わせがあるから夕方かそれ以降になるということで、私も家でつらつらネタを考えていた。気分はすでに湯だってきてる。


夕方ごろにLINEを送ると

「とかちゃん、ねたあわせ難航なう」

という返事。
うわ。
誤字もしてるしたぶん風呂行けないし最悪だ。
挙句の果て

「でもあれだ!今日9時からえっちな女の子とのみいくんだ!」

のっぽな男の子と銭湯行くより全然いいか。
いいよなそりゃ。


と発覚したのが18時。
友達思いなのと、親の「焼肉行くけどどうする?」を断って引っ込みがつかなくなった私は露頭に迷う。はぁ~ごはんもねぇ、お風呂もねぇ。


そこで登場するのが林君だ。
言っただろう、林君のいいところは軽いところだ。


私「風呂は?風呂」

林「え?今から?」

私「そうだよ」

林「遅いなあ言うのが」


お?渋いか?


林「用賀まで来て」


勝った。
聞いたら飯は家にあるしリバプールの試合が見たいらしい。
引っ込みがつかない私は心を決める。


私「まだネタ時間かかるからもうちょい出るの」

林「二子玉川で飯食べるから。行きたい候補二つある」

私「お前飯食うんかい」

林「定食か餃子。今親に飯いらないって言っちゃった。」


林ママ、本当にすまない。


ご覧の通り林君のキャッチに見事成功した。なんやかんやで泊まることになり、気分は回復だ。


そして、かねてから行きたかった用賀駅の大御所、藤の湯へ。

まずネットでも確認していたその見た目。
大通りからマンションの駐車場に入るような路地をふと曲がるとドカアアアンと出てくるきれいで趣のある宮づくり。二段破風。黒は濃く、黄色がはげてない、中の灯りがぼぅっとする感じなんかはたまらなく落ち着く。

引き戸状の入り口を入ると珍しいフロント式。目の前に玄関が続き、左手に椅子。右側にフロントと男湯女湯の入り口が構えてある。
番台のおばあちゃんは気のよさそうな方。
内部はほとんどが木のテイストになっており、最近改装したのか比較的きれい。
形は一般的な銭湯の脱衣場で、洗い場があり奥に湯舟がある。


ただ、それだけではない。
藤の湯の目玉はもう一つの宮づくりだ。

通常風呂場は手前に洗い場があり、奥の壁に沿うように湯舟があり、中央の女湯との境に生活空間やボイラー室へつながる扉がある。
藤の湯はなんとその扉の上、男湯と女湯をまたぐように木造の宮づくりの屋根がついているのだ。わかるだろうか。屋内の風呂の中に屋根がある衝撃。いや、確か船堀のあけぼの湯も屋内に屋根があるんだが、それとはまた別の、かなりしっかりとしている破風なのだ。また、奥の壁に沿った湯舟とは別にその屋根の下に浴槽があり、二人程度だがぬるめで、木の香りを楽しみながら入れるのである。
これは驚いた。
いやぁよい。
こんな癒し方があるなんて。
湿気とかで管理も大変だろうに。
いつからあるんだろうあれ。
いやぁや素晴らしい。

他にも壁画がない代わりに木造の雰囲気を増すため、格子状に木の絵がかかれていたり
湯舟と壁画の間のタイル画は藤の絵だったりと
確固たるオリジナリティに魅力を感じずにはいられない。

お湯は銭湯レベルの熱さより少し熱めなので長居はできないが、十分にリフレッシュできる工夫だ。




大満足。
えっちな女にうつつを抜かしていたまっしーなんて頭の中から蒸発したさ。


気持ちよく風呂を後にし、林家へ。
久しぶりに林君の部屋に入り、ママと林君が布団を用意してくれてる間に乃木坂の写真集を総読み。カメラマンや企画、衣装さんは同じ人がやってたりするんだな。いや、あと昔のかずみんはひどいぞ。I love youのやつ。
リビングでテレビをつけ、蒙古タンメン中本とベビースターのコラボお菓子をまずいと言う林君に、朝ごはんはゆうちゃんがパンだしたり、ウィンナー焼いてあげたりしなさいよと3回確認する林ママ。
どこの家も親子ってこうだよな。

そういえば風呂の前に食った「たぬき」という定食屋も抜群にうまかった。
林君いわくいつも並んでいて入れないらしい。
値段は定食屋値段の780円とかそこいらで、閉店も近かったからか売り切れメニューが半分くらい。
私が頼んだから揚げ定食はなんとでかいから揚げ8個。こんなうれしいことがあるかね。林君の頼んだ豚キムチも皿めいっぱいに盛り付け。味もその量飽きない味付けで完璧。
大学の横に会ったら通ってたな。


気づけば時間は23時をすぎ、リヴァプールvsマンチェスターUの試合。ビッグマッチよこれがまた。ゲームスピードも速いしシュートも強いし。
松木安太郎だったら興奮しすぎて試合出ちゃうな。


ハーフタイムは乃木中。
終わってサッカー。
結果はスコアレスドロー。くうう。
見てて一番悔しい結果。


大人しく就寝準備をして床に臥す。
初めて林君の家に来たとき以来の構図で寝る。
あのときはカラオケとか行ったなぁ。



すっかりいい気持ちで寝れた日になった。
焼肉行かなくてよかった。
藤の湯行けてよかった。

ただ、また林君にお金返すのが先延ばしになっちゃったな。
よし、黙っててみよう。

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