アルゴグラフィックスカップ2024~予選リーグ ハ・スンヨン戦
北海道カーリングツアーの3戦目として位置付けられている大会です。昨年は男子の大会だったため、女子の大会は2年ぶりの開催となります。今大会の目玉は先日の韓国選手権で優勝したばかりの「ハ・スンヨン」の参戦と、「アドヴィックスカップ」を欠場した吉田夕梨花選手のシーズン初の大会というところでしょうか。まずはそんな「ロコ・ソラーレ」の今大会の予選リーグの1戦目「ハ・スンヨン」との試合を振り返って行こうと思います。
■第1戦 ハ・スンヨン
チーム世界ランキング17位。「キム・ウンジ」「キム・ウンジョン」に次ぐ、韓国3番手のチームです。カーリングファンの方ならご存じでしょうが、「ウンジ」も「ウンジョン」も最高峰の大会「グランドスラム」の常連で、「スンヨン」も参戦経験があります。ここ10年で、韓国女子のカーリングのレベルが上がっているのが、この3チームが常にしのぎを削っているというところが大きいです。
先日の韓国選手権では、準決勝で「ウンジ」、決勝で「ウンジョン」に勝利して優勝という好調ぶりの中、北海道ツアーに参戦して来てくれたことは非常に嬉しかったです。ちなみに「ロコ・ソラーレ」とはライバルではあるものの、「ウンジ」や「ウンジョン」に比べて対戦は意外に少なく、今大会で久々の顔合わせとなったようです。ただ、試合内容は非常に接戦で面白かったです。
LSDはロコ・ソラーレが制し、第1エンドはスンヨン先行 ロコ後攻。このエンドは序盤からスンヨンがセンター線を制し、ロコが1点。第2エンドはロコが終始優位にセンター線を展開するも、最後はスンヨンがドローを決めて2点。その後は後攻時に1点を取り合ったり、スチールをし合ったりと、センター線の攻防を中心に、非常にレベルの高い試合展開が続きました。
そんな中、試合の流れを決定付けたのがスンヨン先行 ロコ後攻で迎えた第7エンド。序盤からスンヨンがセンター線を固めようとするものの、ロコがハウスを広く使おうとする攻防が続きます。その流れが変わったのがちなみ選手の2投目。下がり過ぎたスンヨンのストーンの前に素晴らしい位置にドローが決まったことで、ロコは後攻ながらセンター線を支配する優位な展開となっていきます。その後のスンヨンのNo.1へのフリーズがうまく決まらず、藤澤選手の1投目のドローでNo.2をしっかり作ったことで、さらに優位な展開となって行きます。最終的にスンヨンがその形を崩すことが出来ず、藤澤選手がラストドローをしっかり決めて3点。最終エンド6-4でロコ先行ではあるものの、かなり優位な展開を作ることが出来ました。
最終エンドは最終的にスンヨンが良い形を作り、2点を取ったのですが、ここでのロコのリスクマネージメントが見事でした。3点を取られて負けるというリスクがあった中で、それをされないように、しっかり2点に留めるためのショットを選択し(スコア6-4。2点までは取られても問題ないという考えで、自分達がNo.1をキープし確実に相手の石を減らすという選択)、それが成功したことで、2点は取られたものの、EE 6-6でスンヨン先行 ロコ後攻というかなり優位な展開を作り出すことが出来ました。
EEはスンヨンが定番通り、センターを固めてくるものの、ロコのドローが開いてNo.1の近くの絶妙な位置に置けたことで、その後のちなみ選手のクリアリングがしっかり決まり、藤澤選手がセンターが開いた状態でラストドローを決めるだけの展開を作ることが出来ました(ちなみ選手の2投目でゆうみ選手が滑って転けてしまったのはご愛敬)。最終的にはそのショットが決まり、ロコが7-6で勝利。実況の畑さんのコメント通り、まさに「ワールドクラス」の素晴らしい試合でした。
■総評
さすが「グランドスラム」経験チームという試合内容でしたが、特に目を見張ったのがドローの制度でした。アイスの曲がりがなかなか読み辛い時間帯があったものの、最終的には両チームがしっかりアジャストしたことで、接戦となりました。
また、局面のショット精度も印象的でした。どのショット選択をすれば相手にとって嫌なショットとなるのか、現時点での目的を達成するためにはどのショットが一番ベストなのかということを両チームがしっかり判断し、ショット選択をしているところが見事な試合でした。もちろん、トップレベルでは当然かもしれませんが、日本国内の大会でそれが見られたことが非常に嬉しかったですし、そのうちの一チームが日本が誇るトップチームであることが誇らしかったです。
今大会からゆりか選手が復帰し、4人に戻ったロコ・ソラーレでしたが、藤澤選手が「ゆりかがいるとショット選択の幅が増える」とコメントしているように、改めてその存在は大きく、安定したセットアップやスイーパーとしての能力が高いのはもちろん、ウェイトジャッジにも優れていて、ロコに欠かせない存在であることをファンとしても再認識致しました。大会は8月31日で予選リーグが終了しますが、その後のプレーオフが非常に楽しみになって来ました。ぜひともワールドクラスのこの両チームでの決勝が見たいという気持ちが強くなりました。