アドヴィックスカップ2024〜プレーオフ3位決定戦

①3位決定戦

タイトルにもあるように、「ロコ・ソラーレ」のアドヴィックスカップ最終戦は3位決定戦となりました。相手はグランドスラム大会の常連で、現在チーム世界ランキング3位の「キム・ウンジ」。以前の記事に書きましたが、昨シーズンは一昨年の「ロコ・ソラーレ」に続いて、アジアのチームとしては2チーム目のグランドスラム大会の優勝、同年の世界選手権では3位と、大躍進を遂げたチームです。
 「ロコ・ソラーレ」とはグランドスラム大会や世界選手権、PCCC(パンコンチネンタル選手権)などで何度も対戦しており、長年しのぎを削ってきたライバル同士でもあります。特にPCCC2022、2023年の決勝での接戦は記憶に新しい方がいるのではないでしょうか。

今シーズンは国内選手権の準決勝で格下のチームに敗れるなど、本調子ではないように見受けられますが、今大会の予選リーグは3連勝、DSCも含めて全体の1位でプレーオフに勝ち上がって来ていますし、今のロコの立ち位置(チーム世界ランキング12位)を考えれば、現状でどこまで通用するのかというマインドで臨む相手ではあると思います。体力的にも非常にハードだとは思いますが、しっかりと見守って行きたい気持ちで観戦致しました。


②昨年取り組んだことの成果

吉田知那美選手が自身のInstagramで触れていますが、昨年取り組んできた成果が感じられた大会だったと思います。特に一昨年辺りから指摘されていたリリース時のフォームの乱れが改善されていたり(非常にバランスの良いフォームになっている印象です)、体力面についても、通常とは異なる布陣で3人で1日に3試合こなしてもしっかり最後までやり切れていたりと、過去の成果に邁進せず、自分達の課題と向き合い、しっかりと準備して来たからこそ、今回の成果に繋がっていると感じました。次大会の「アルゴグラフィックスカップ」は4人で出場されるようですし、成果を見るのがより楽しみになりました。


③試合の振り返り

第1エンド ウンジ先行、ロコ後攻。
序盤からセンター線の攻防が熾烈なエンドとなりました。両チームともセンター線の展開に長けているため、フリーズなど、ハイレベルなショットが続き、見どころ満載でした。主導権は先にNo.1を確保したウンジが握っている印象でしたが、藤澤選手の1投目で決めた「アングルレイズ」はとても素晴らしかったです。ここでロコが1点を獲得。終始センターを固められた中で、スチールを覚悟した上での素晴らしいショットが決まったエンドでした。

第2エンド スコア:ロコ1-0ウンジ ロコ先行 ウンジ後攻
ロコのセットアップが完璧に決まり、得意のセンター線で主導権を握る展開。第1エンドでは思ったより滑るアイスに苦労していた様子でしたが、ここで調整して来たのはさすがでした。エンド序盤から自分達のガードストーンの裏にNo.1,2を持った状態で進めていき、ウンジにプレッシャーを掛けていたと思います。ウンジが最後までハウス内のストーンを動かすことが出来ず、ロコが2点スチールに成功します。序盤の少し嫌な流れをここで払拭したようなエンドになりました。

第3エンド スコア:ロコ3-0ウンジ ロコ先行 ウンジ後攻
ロコが奇数エンドで使用するハウスの滑りに少し苦労する一方で、ウンジはサイドを支配し、ハウスを広く使う優位な展開。しかし、ロコも負けじとセンター付近にストーンを溜める形を作り、最終的にはセンター線を固める流れになって行ったエンドでした。藤澤選手の1投目でヒットアンドロールをしっかり決めると、2投目でもダブルテイクアウトをしっかり決めて、複数得点を回避。最後はウンジがピールを決めて、ブランクエンドとなりました。

第4エンド スコア:ロコ3-0 ロコ先行 ウンジ後攻
序盤からロコがセンター線を中心に優位に展開。ハウス中央付近にストーンを溜め続ける一方で、ウンジはそれを最後まで崩すことが出来ず、ラストロック、No.1-6まで持たれた状態でドローを決めて1点。ここで決めてくるのはさすが世界のキム・ウンジだと感じました。ここで少し試合の流れが変って行きました。

第5エンド スコア:ロコ3-1ウンジ ウンジ先行 ロコ後攻
ウンジがセンターを固めようとするも、ロコがそれをしっかり崩す展開。ハウス付近を広く使い、複数点のチャンスもありましたが、ウンジのストーンの配置が絶妙で、藤澤選手がラストロックのダブルテイクアウトを決め切ることが出来ず、ウンジの1点スチール。自分達に不利な状態でも相手にとって嫌なところにストーンを配置するというウンジの見事な展開でした。

第6エンド スコア:ロコ3-2ウンジ ウンジ先行 ロコ後攻
ウンジにセンターを固められ、ロコにとっては難しい展開が続いていきます。3点スチールもあった中で、藤澤選手がラストロックでテイクアウトショットをしっかり決めて1失点に留めました。このショットは非常に大きかったと思います。ロコにとっての嫌な流れを少し払拭したようなショットになったのではないかと思いました。

第7エンド スコア:ロコ3-3ウンジ ウンジ先行 ロコ後攻
このエンドでもハイレベルなセンター線の攻防が続きました。ロコはセンターを固められながらも最後まで自分達のNo.1ストーンを守り抜き、最終的には藤澤選手の1投目で中央を崩すことに成功。ただ、その後はウンジ選手のショットがしっかり決まりここも1点スチールされてしまいました。ただ、最終エンド後攻は確保したので決して悪くはない流れでした。正直、1点を取って4-3、最終エンド先行よりは、3-4で後攻の方が勝利の期待値は高いと思うので。

第8エンド スコア:ロコ3-4ウンジ ウンジ先行 ロコ後攻
この試合初めてコーナーガードを置いて複数点を狙うことを示したロコ。ウンジは前のエンドと同様に、セットアップをしっかり決めて、センターを固めることを狙っていくエンドになりました。ロコはこのエンドでもクリアリングとランバックがなかなか決まらず、苦しい展開が続きました。藤澤選手の1投目でランバックを成功するも、ウンジ選手のガードの間を通すラストロックが決まってしまい、ほぼ投了。藤澤選手が同じラインを通って1点を取りに行くドローがガードにチップしてしまい、試合終了。最終スコアは3-5でした。

④総評

ロコ・ソラーレとしては序盤は非常に良い展開でしたが、徐々にウンジの方がセンター線で優位に試合を進めていき、最終的には4連続スチールでの勝利となりました。ロコもショット精度は決して悪くなかったのですが、アイスの曲がりを読むのに少し苦しんでいたかなという試合でした。ただ、世界レベルのチームを相手に互角にやれたことは素晴らしい成果だと思いますし、自信にもなったのではないでしょうか。キム・ウンジ選手、日本に来て下さり本当にありがとうございましたという気持ちです。
 3人かつ厳しい日程での試合で、ロコの実力からすると、4位という少し残念な結果に終わってしまいましたが、新シーズンに向けて、さまざまな成果が見られた大会になったのではないでしょうか。次戦の「アルゴグラフィックスカップ」含めて、新シーズンの試合が本当に楽しみです。

⑤大会の日程について

大いに不満だったのが、大会の日程がフェアではなかったこと。全体の上位1.2位を通過したチームが優位なレギュレーションになること自体に不満はないのですが、準決勝のフォルティウス戦のように、予選含めて1日3試合をこなしたチームと、ほぼ1日休んで夜の試合だけを戦うチームとの対戦では、あまりにフェアではないなと感じてしまいました。限られた日程の中でスムーズに試合をこなしたい大会の事情は分かりますが、連戦を戦ったチームの準決勝を最終日に回すなど、工夫は出来たのではないでしょうか。あまりに選手ファーストではない日程だと感じてしまいました。

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