(6)手仕事タイム
シュタイナーの親子教室で、なにが一番びっくりしたかって、親の手仕事の時間があること。先生が、毎回、手仕事のアイデア(大抵、子供たちがすぐに遊べる手作りおもちゃ)と材料を準備してくださっていて、親はその手仕事に取り組まなければなりません。そしてその間、若干15-20分くらいかと思いますが、子供のことは基本的に放置です。(笑)
放置っていうと、聞こえが悪いのですが、この親が手仕事に没頭する時間には、きちんと意味があるということも、徐々に学んでいくことができました。
手仕事の意味
私の中でストンと腹落ちしたポイントは、
🌟親が、手仕事を通して、実際の生活の仕事の一部や物づくりに取り組む姿を背中で子供たちに見せることができる。
🌟糸や布から、少しずつ物が形となり、完成していく過程を子供たちに見せることができる。特に、何もかもが買える時代となった今、何かが一から出来る過程を子供たちに見せられる機会は貴重なのかなぁ、と。
🌟子供中心の世界観で、親が子供の遊びにべったり付き添うのではなく、少なくとも、手仕事の時間は、親も自分の思考の中に浸れる良い息抜きの時間になる。
🌟子供は、手仕事をしている親に何かを見せに来たり、側にちょこんと座ってしばらく覗き込んだりしているが、それでも静かに相槌を打ちながら黙々と作業を続けていると、フッと離れていきまた遊び始める。それが、毎回のこととなると、ますます子供たちも慣れてきて、徐々に親の手仕事中は、勝手に遊んでくれるようになる。(作っているものが、おもちゃのことが多いので、完成を楽しみにしている気持ちも垣間見られる。) そういう意味で、強制しない自然な自立の一歩を踏み出すきっかけを子供達に与えるやり方のように思う。
初めての手仕事
ちなみに、私のはじめての手仕事は、それはそれは悲惨なものでした。針や糸を見たのも触ったのも、中学生の家庭科の授業以来。しかも、家庭科はサボる時間と決めていた私の裁縫の腕は、間違いなく幼稚園児レベル以下。笑
いや〜、散々たるものでした。普通のなみ縫いも出来ません。玉留めもできません。女性であり母親であるとは名ばかりの恥さらしの作品をお目汚しを先にお詫びして、記念に載せておきます。
カタツムリ🐌 笑
さすがの先生も、困り果てて、苦笑いしていたのを鮮明に思い出します。周りのお母さんたちにも、手取り足取り、しばらくの間、ご教授頂き、その節は大変お世話になりました。
それでも。
下手くそなのに、何故だか楽しかったんですよ。家庭科の授業中は、一切楽しめなかった裁縫が、子供のおもちゃづくりとなったら、不思議と苦になるどころか、楽しく取り組めたのです。きっと、静けさの中に持つ自分の時間に、愛する子供の喜ぶおもちゃを作る、というコンセプトが、しっくり私のニーズにはまったんだと思います。よく、「お母さんも息抜きをした方が良い」、とアドバイスされて、自分でも息抜きは必要だ、と感じてはいたのですが、どうも、子供を預けて友達とお茶会に行ったり、美容院やヨガに行ったり、という息抜きの仕方は、しっくり来なかったんです。
シュタイナーの手仕事の時間は、子供を片目で見守りながらも、自分の世界にしばし籠ることが出来る。背中で物づくりや仕事に取り組む親の姿を子供達に示すことができる。そういった意味で、ちゃんと意義のある大切な時間なんだな、と今でも大事にしている時間です。
手作りの価値
シュタイナー親子教室の手仕事が私にもたらしてくれたもう一つの大きな気付きは、手作り=ハンドメイドの価値の高さです。完成までのプロセスに、時間や労力だけでなく、様々な想いや愛情を込めて作った世界に一つだけの作品。お金では、決して買えない唯一無二のもの。どれだけ価値があることでしょう。
無謀ながら、手仕事を初めて三ヶ月後に、当時1歳9ヶ月だった娘のために、お人形を作ったんです。
よくよく見ると、裁縫初心者のクオリティの低さが目立ちますが、それでも自分の指を何度も刺しながら作ったこのお人形を、4歳半になった娘は今でも毎日可愛がってくれています。娘は、私が一から作った過程を見ていますし、ママが作ってくれたお人形、という特別な括りで、大事に大事に愛着を持って使ってくれています。
手作りに込める愛の連鎖
シュタイナーの手仕事に出会って以来、子供達の誕生日プレゼントに既製品を買うことはなくなりました。毎年、今年は何を作ってプレゼントしようかな、と考えるところから、ワクワクしています。
木工が得意な主人にも協力してもらって、お人形用のベッドを作ってもらったり、
3歳のお誕生日には、お布団ポシェットを作りました。
また、先日1歳になった下の娘には、布絵本を作ってみたり。
日々の生活にも、気付けば、手作りの習慣が確立され、子供達とも、色々手作りのものを作る機会が増えました。
4歳の娘が作ったポンポンで、ハリネズミを作ったり、
当時三年生だった息子は、バレンタインズデーにクラスメイトに配るキャンディー入れを手縫いしました。
物を創る、という概念が一切無かった私の子供達に、こうして物づくりの楽しさを知る道を開いてくれたこと、それだけでも、シュタイナー教育に出会えて良かったと胸を張れます。
確かに、お金を出せば、何でも買える便利な時代に生きている私たちですが、そんな時代に生まれてしまったからこそ、失ってきたもの、飢え渇いていることがあると感じます。手仕事を通して伝えられる温もり、愛情、達成感や愛着などを大切に、ゆる〜りと子供達と物づくりを楽しんでいけたらな、と願います。