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オリジナルストロベルボード「スジオカボード-ブルー-」パフォーマンスレビュー

【物理で見るバスケ】エントレのぱらとです。
これまでいくつかレビューを書いてきた代用ストロベルボード「スジオカボード」。
今回はスジオカボードの派生モデルであるスジオカボード「ブルー」のレビューをしていきます。

メッシュ形状に加工された樹脂繊維にPPを浸漬させて平板状に加工した所謂「化繊ボード」であるノーマルのスジオカボードに対して、スジオカボードブルーでは樹脂シートに不織繊維が貼り付けられており、それをストロベルボード状に加工したものです。

作製元はいつも通りフットプロンプター(https://footprompter.com/)の関さん。

Xのバッシュ好き界隈を中心に盛り上がりを見せているとはいえ、インソール交換やシューレース交換のようなフィッティング調整方法と比べると一般的でない代用ストロベルボードの利用。

スジオカボードがどんな部材でどんな原理によって効果を発揮するのか?についてはこちら↓↓↓の記事で詳細にまとめているので、まずスジオカボードとはどんなものか知りたい!という人は読んだうえでこのレビューを読んでみてください。

スジオカボードがどんなものか分かったうえで、スジオカボード選びの参考としてこのレビューが役立てば幸いです。
これまでレビューした他のスジオカボードについてはこちらの記事でまとめています。

今回のレビューでは以下モデルで評価を進めました。

・AJ38 PF
・G.T. Cut3 EP
・Luka3 PF
・Harden vol.7,vol.8

レビュー内容はスジオカボード使用による機能特性の変化に関する記述が中心です。
そのため、モデル自体の機能特性や特徴に関する内容は少なめ。
YouTube等でレビューアップしていないモデルも含まれますがご了承ください。


1.ディテール、使用方法

スジオカボードブルーの仕様としては通常のスジオカボードと異なり、不織繊維に熱可塑性樹脂がラミネート加工された裏表のあるシートを2枚貼り合わせてストロベルボード状に加工されたものです。

不織繊維層同士を貼り合わせているので横からみると樹脂ラミネート層-不織繊維層-樹脂ラミネート層と3層になっていることが確認できます。
厳密には2枚を貼り合わせているので不織繊維層の間に接着層があります。
(↓↓↓画像だと分かりづらいですが、、、)

2枚のシートを張り合わせて作るという点ではスジオカーボンに近い作りです。
元々2層のシートを貼り合わせている点が他のスジオカボードと異なる点であり、特徴ともいえます。

【仕様】
厚み:1.5mm(0.75㎜厚の張り合わせ、実測値平均1.53mm±0.03mm)
足型:ストレート(スジャオカ、JA1型)
※足型の違いについては冒頭の比較レビューを参照。

【使用方法】
シューズのインソールを外しストロベルボードの上に設置したうえでインソールを入れて使用します。
特に裏表はありませんが、使うたびに裏表が入れ替わるのはよろしくないので最初に裏表を決めて目印をつけておくと良いでしょう。

3.効果確認、使用感

ここからはいつも通り、物性的評価と着用時の感性的評価の2つの面からスジオカボードの特性を見ていきます。

物性評価①荷重に対するミッドソール圧縮量の変化

物性的評価としてスジオカボードブルーを入れる事で荷重に対して沈み込みがどの程度低減されるのかをまずは評価しました。
評価方法はノーマルのスジオカボードの時と同様に荷重に対してどれくらいミッドソールが圧縮されるか(変形するか)を機械的に測定する方法。

・評価結果
スジオカボードでは通常時と比べてミッドソールの圧縮量が約5%低減するという結果に。
(モデルによってバラつきはあるので、入れるモデルによって圧縮低減率は前後する点にはご注意ください。)
ノーマルのスジオカボードでは7~9%圧縮量が低減することが確認されていたので、低減率としてはスジオカボードに劣るということが分かりました。

・結果から分かること(考察)
樹脂ラミネート+不織繊維という構造の特性上、スジオカボードよりも荷重を受ける樹脂層が薄くなるため、荷重に対して局所的な沈みを抑制できずこのような結果が得られたと言えそうです。
とはいえ、ノーマルインソールのみに比べれば浮力はしっかり発生するので沈み込みが小さくなっていることは体感で十分得られるレベルです。

物性評価②屈曲性(ソール剛性)の変化

反発力の評価に続いてソール剛性がどの程度向上するのか評価しました。

・評価結果
こちらの結果は通常のスジオカボード同様、ほとんど変化なし。
シューズ自体のソール剛性に影響はほとんど与えられない結果に。

・結果から分かること(考察)
ソール剛性への影響がほとんどないことはノーマルスジオカボードの測定時に分かっていたことなので特に驚きはなし。
ボード自体の剛性がより低いスジオカボードブルーではその傾向は顕著になったと言えると思います。

なぜ剛性には影響がないのか?という原理については冒頭で紹介した解説記事に詳しく書いてありますので、気になる人は読んでみてください。

物性値としての変化は確かにないんですが、実際に使用してみるとソール剛性の変化は体感できます。
詳しくはこの後の完成評価で述べていきます。

感性評価:実使用感

ここからは実際に着用した際の感触について、フィッティング・ソールの反応(反発性、ソール剛性)・グリップの3点でまとめていきます。

【フィッティング】
ブルーに限らずスジオカボードは一定の厚みによって通常時に比べてシューズ内空間を高さ方向で埋めてくれます。
しかも、単純に板状に高さをかさ増しわけではなく荷重によって若干足の形に合わせて変形してくれる特性を持っているのでスペースの埋め方が通常インソールのように自然です。
特にブルーはノーマルスジオカボードよりも樹脂層が薄く柔らかいためよりスペースの埋め方が自然かつ優秀(適度に埋めてくれる)です。
これによってソックスの厚みやレースアップによって埋めきれないシューズ内空間を減らし、よりシューズとの一体感を増すことが期待できます。
シューズ内空間を埋めることでフィッティングに変化が起きてソール剛性や反発性の部分で体感上の変化が起きている、と見るのが客観的な評価と言えそうだなと感じています。

スジオカボードの空間の埋め方で嬉しいのはフォア部分の空間を埋める微調整がしやすいこと。
インソール交換などで単純に厚いフォーム材を使うと圧迫感がでたり、荷重時の力の遅れなどを感じやすいですが、スジオカボードではそれが抑制されフォアの空間を綺麗に埋めてくれます。
この特性はブルーももちろん発揮してくれておりフィッティングが「あと一歩」というモデルでは効果てきめんです。

個人的な感触としては厚みの選択肢が複数あるノーマルスジオカボードで頑張って調整するよりも、フィッティングの振り幅を作れるブルーの方が適用できる場面が多く扱いやすいのでフィッティング面の調整としてとりあえずいれるのにこのブルーは最適解に近いのではと感じました。

これにインソール交換の調整も合わせれば基本的に適合しきれないモデルというのはないのでは、と感じるぐらいなのでフィッティング面の効果だけで個人的には一番好きなスジオカボードになりそうです。

補足としてインソール調整時の注意点として、社外インソールでプロネーション(回内・回外)を矯正していたり、踵骨のホールドを補正していたりする場合、スタビライザーのないフォーム系インソール(純正インソールなど)に戻すことで矯正効果が失われてしまうのでスジオカボード使用によって別の問題が発生する可能性もあるということです。
このあたりは個別に足の状態を見てシューズのサイズ変更含めて総合的に見ていく必要があります。

【ソールの反応(反発性、剛性)】
剛性の向上を体感はできるんですがその感触はノーマルスジオカボードに比べるとマイルドかつナチュラル、インソール下にあるボードが何か役割を果たしているというよりもミッドソール全体が硬くなったような感触に感じられる思います。
荷重を主に受け取るめる樹脂層がノーマルスジオカボードに比べると薄いことでボードの屈曲とミッドソールの屈曲のシンクロ率が高いためにそのように感じるのだと思われます。

ガチガチに剛性が上がってほしいと感じる人には物足りないと思いますが、剛性特性が全く合わないようなモデルにいれるタイプのボードではないと思うのでこれぐらいの特性でちょうどよいなというのが個人的な感想です。

・反発性の変化
スジオカボードを入れることで体感的な反発力の向上を感じるわけですが、モデル(ミッドソールの種類)によって少しずつ体感反発の変わり方に違いがあったノーマルスジオカボードと違ってブルーの場合は元々のモデルをほどよく反発特性を高めた感じでした。
モデルの本来持つ特性を歪めるようなテコ入れは感じず、元々の特性を少し高反発高反応にしてくれるという感じ。
なので、モデル自体の反発特性が元々合わないのをスジオカボードによって無理やり特性を変化させる、といったことは難しいと言えます。

・剛性の変化
ブルーの場合、ノーマルスジオカボードと比べて圧力に対する変形がしやすくナチュラルにフィッティングや反発面の特性を変化させてくれるわけですが、剛性に関してもその変化はかなりナチュラルです。
ノーマルスジオカボードを入れると少なからずボードの感触が主張しつつフィーリングが変わっていく感じですが、ブルーの場合はボードの主張がほとんどなくほんとに入っているのか?と心配になるぐらいです。
ですが、実際に着用してみると剛性の高まりを確実に感じるのでその効果は間違いなく体感できます。

違和感がほとんどなく特性にテコ入れできるので元々のモデルの感触を活かしたいという場合に非常に有用だなと感じました。

【グリップ】
スジオカボードを入れるとグリップ力まで変化するの?と思われる方もいるかもしれませんが、物性的評価の部分で説明したようにボードによって圧力分散が起きるのでその結果ミッドソールを荷重する力がより面に広がります。
バッシュのグリップは荷重によってアウトソールが押し広げられることで発揮されるので圧力分散が起きるとアウトソールが押し広げられる力も分散しやすくなり、モデルによっては滑りやすくなると感じる場合があります。

ノーマルスジオカボード同様、私自身が検証するなかでは滑りやすくなったということは感じませんでしたが、個別に相談いただいた方で滑りやすくなったという人もいたので留意点としてレビューには記載しておきたいと思います。

反発性やソール剛性の体感変化が大きいのでグリップ力としての変化を感じにくいとは思いますが、ボードを入れることで滑りやすくなったと感じたなら「荷重が足りなくなったのかも」と頭の片隅で情報があるだけで対応の仕方も変わってくると思います。

4.耐久性

スジオカボード作製を検討している人で耐久性を気にされている人も多いと思います。

今回の検証で5回以上の使用を経てレビューしています。
ノーマルスジオカボードのレビュー時に比べると使用回数が少ない状態でレビューをしていますが、ノーマルスジオカボード使用時の基準ができているのでブルーも耐久性に心配がないことは十分に確認できたと思います。

割れたり欠けたりといった不具合はなし。
使用に伴うシワなどは発生していますが、使用に差し支える現象は発生していません。

100㎏近い体重かつMP関節を強く屈曲させる動きが多い私が使用しての耐久なのでそれ以下の体格の人は安心して使用できると思います。
多少亀裂が入ったりしても使用自体は可能ですし、もし使用中に破断したとしてもインソールでしっかり抑えられているのでシューズ内で滑るといった不具合が起きる危険性も低いと思います。

とはいえ、樹脂材料である以上バッシュ同様消耗品なので屈曲部の折り目が強調されてペコペコに折れてしまったり破断した場合に買い替えが必要になるかと思います。
また、シューズフィッティングやサイジングが元々怪しい人の場合、屈曲部が適切でなかったり予測できない摩擦等の負荷が発生しボードの寿命が短い場合があるのでご注意ください。

5.お問い合せ、作製依頼に関して

ということでスジオカボードの派生タイプである「ブルー」のレビューをしてきました。
ここまでのレビューを読んでスジオカボードを作ってみたい!と思った方はフットプロンプター関さんまでご連絡ください。

使用にあたっての相談やモデルとの相性、着用者自信との機能適合に関する相談があればお気軽に私までご連絡ください。
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または各種SNSのDMで受け付けています。
それでは、今回のレビューが皆さんのバスケライフに役立つことを祈って〆たいと思います。

今回はこのあたりで。

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