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Explanation2:スジオカボードが引き起こす物理的原理と効果

0:はじめに

Explanationの記事では、EN-TRAIN バッシュラボのコンテンツである、バッシュレビューやサポートウェビナーと並んでメインコンテンツとしてバッシュに関わる解説・検証に関する内容をお届けしていきます。

バッシュ選びに役立つ実践的解説の回もあれば、知的好奇心を満たすためだけの回もある。
コミュニティの名前の通り、バッシュを探求していくlabにふさわしい、そんな内容をまとめていきます。

今回の記事はインソール直下、ストロベルボードの位置に配置してシューズパフォーマンスにテコ入れを行うアイテム「スジオカボード」の原理とその効果について考察していこうと思います。

スジオカボードとは?という部分については無料で公開しているパフォーマンスレビューに役割を譲ります。
もし、EN-TRAIN labに参加していながらスジオカボードを知らない!という方がいたら下記記事を先にご参照ください。

(この記事では参加している方の属性的にスジオカボードは知っているものとして話を進めます。)

スジオカボードを作製している関さんとはスジオカボードのレビュー協力や知見(主に材料面)の提供などをさせていただいている間柄で、私自身バッシュを通して足・脚、ひいては身体全体を扱う立場であることから、シューズを専門に扱う職人である関さんから聞くことのできるお話は非常に貴重で有用です。

関さんがスジオカボードやカスタムインソールを提供していアスリートのお話や私自身の体感の情報をすりあわせるなどして、バッシュ相談の知識のバックボーンとして役立てさせてもらっています。
スジオカボード自体の効果を言語化する中で関さんとのやりとりが非常に大きな役割を果たしていることは間違いありません。

そのおかげで今回このような記事を書くことができていると言えるでしょう。

とはいえ、この記事の解説はパフォーマンスを改善するためのもの、というよりはEN-TRAIN lab本来の姿である知的好奇心を満たすための要素が強い内容となっています。

是非、この解説を通してスジオカボードについての理解を深めていってもらえればと思います。

【この記事で学べる事】
・スジオカボード(代用ストローボトルボード)とは何か?
・スジオカボードが引き起こす物理的現象の原理
・スジオカボードの本質的効果
・スジオカボードの選び方

それでは、はじめていきましょう。


1:スジオカボードとは?

スジオカボードとは、端的に素材として表すと織物状の化学繊維に熱可塑性樹脂を流し込んで作ったシート状のボードをシューズのストロベルの形状に合わせて加工したものです。
使い方としてはストロベルボードの真上(インソールの直下)に配置して後は通常通りバッシュを履いて使用します。

しれっと出てきたバッシュ構造のワードであるストロベルボードとは?インソールとは?となる人は、バッシュの構造について別記事の「バッシュ選び大全」で詳しく解説しているので振り返りたい人は下記ご参照ください。
(フルコンテンツプランでこの記事を読んでいる方は無料で読めます。)
↓↓↓

スジオカボードの主な狙いとしては、昨今の荷重に対する圧縮率が高いクッションばかりが採用されるバッシュに対して、荷重による沈み込みを抑制してソールフィーリングを変化させてやろうという代物です。

スジオカボードは化学繊維にポリプロピレンなどの熱によって柔らかくなる樹脂(熱可塑性樹脂)を流し込んで作られたものがはしりですが、ある程度ボードとしてのノウハウが蓄積された現在では、化繊ボードで作られたもの以外にも熱可塑性樹脂シートに不織布繊維を重ねたものやカーボンシートで作られたスジオカボードも存在します。

熱可塑性樹脂というのは柔軟かつ軽量という特性を持ちながら引張に対する強度が高かったり、折り曲げに対する耐久性(割れにくい)が高かったりする材料です。
そのため、バッシュのソールのように何度も荷重を受けながら曲げられるような部材に使用するにはうってつけの材料です。
スジオカボードを見て、こんな薄っぺらいものが本当に効果あるの?と疑問に思う人もいたと思いますが、むしろフラットかつ薄いことでこの後解説する現象を引き起こし、その効果を享受することができています。
現在は様々な材料で作製されているのも、こうした材料としての特性・部材としての特性の理解が進んできたということが大きく影響しています。

スジオカボードの狙いである沈み込みの抑制などにも効果を発揮しやすい材料でもあるのでうまく活用することでバッシュと身体の相性を最大限引き上げてくれる可能性のある一品と言えます。

もちろん私自身も適宜使用しており、その効果は体感済みです。
スポーツシューフィッターの資格を持つ私ですが、スポーツシューフィッターの目線で見てもバッシュの機能適合に関して理解の進んだプレイヤーに対してはスジオカボードの使用は積極的にオススメできると思っています。

スジオカボードの主な体感効果としては、

・反発レスポンスの向上
・ソール剛性(ねじれ剛性含む)の向上
・シューズフィッティング向上

などがあり、これは他のスジオカボード使用者とも一致しています。
これらの体感効果によって、疲労感低減・パフォーマンス向上などの副次的効果も得られる場合が多いようです。
バッシュに対して、というか足に対する感度の良い人ほどこの効果を感じられているのではないかと思います。
使ってみたらとりあえずよかったから継続して使っているという人もいるでしょう。

では、どのような原理でそれらの体感が得られているのか?
これを理解しないまま使っている人がほとんどだと思います。
あるいは、使ってみたいけどなぜこのような効果があるのか理解できていないことで購入をためらっている人もいると思います。

では、スジオカボードが引き起こす変化の原理を理解しないで使っていても良いものなのかということなんですが、これの回答は人によるとしか言えません。

なんとなく良いから、で使っていて実はバッシュの劣化やスジオカボードの損耗などによってその効果がなくなってきていたとしてもプラシーボ効果によって快適に使用し続けられる人もいるでしょうし、逆にすぐに変化が気になり調整沼に嵌るという人もいるでしょう。

実際のところ、バッシュが劣化した時や身体の状態が変化した時にスジオカボードを抜いたほうが良いとか、別のスジオカボードを使用したほうが良いという判断ができなくなるリスクがつきまとう以上、スジオカボードによる体感変化の具体的原理については理解しておいて損はありません。

そんなマニアックにならなくても、、、
と思ってしまったそこのあなた。

そもそも、スジオカボードという一般的にはキワモノアイテムに興味がありつつ、このEN-TRAIN labの記事を読んでいるという時点で自分自身がかなりマニアックであることに自覚を持たなくてはいけません(笑

せっかくのマニアック領域ですので、きっちりかっちり理解を深めてより楽しいバッシュ沼に沈んでいきましょう。

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