『もっと強く頭叩いて!』パラ水泳のタッピングについて
「もっともっと!弱いのでもっと強くたたいてください!」
水泳のコーチをやり始めたころ、過去にこんな言葉をかけられてびっくりした経験がある。
パラ水泳のコーチをしていると選手からこのような不思議な言葉をいただくことがある。
パラ水泳をしらない関係ない人からすれば、頭を叩く??
どういうことだ?と思うことだろう。
選手がこのようにいう理由、、、、、、それは?
視覚障害者が泳ぐための“タッピング”
理由は、視覚障害の選手が泳ぎのタッチやターンの時に、コーチに棒で頭を叩いてもらいタイミングを計っているからである。つまり、タッピングという、叩くことで壁が近づいたことを合図するために、コーチは全盲のパラ選手の頭を叩いているのだ。
しかし、コーチの私にとって人の頭を叩くというのはなんだか難しい気持ちになるのが正直なところである。そして、優しさをもって「ポンッ」と全盲のパラスイマーの頭をたたいてみたら、
「もっと強くたたいてもらってもいいですか?」ということを指摘されるのである。
選手にとって弱い力だと叩かれた感覚がないようだ。その理由に、タッピング棒の先は柔らかいスポンジ(ビート板素材)であることと、水の中でタッピングの勢いが伝わりにくいことがあげられる。優しさも大事だが、全盲のパラ選手が壁にぶつからないようにしっかりと叩くほうがベストである。コーチの方々、もしくはタッパーの方はぜひとも想像しているよりも強い力でタッピングをしてもらいたい。
どのくらいの強さか?叩く距離は?
結論から言うと、距離に関しては選手それぞれで違う。選手が壁から2mぐらいの距離で叩いてという場合やもっと距離が短いタッピングを好む選手もいる。長距離か短距離でも変わってくる。泳法によってはおでこを叩くことや背中を叩くこともある。
しかし、タッパー強さは私の経験上ある程度決まっているといえる。
強さはどの選手も「強め」が好みである。タッピング棒の先の素材にもよるが、一般的なビート板のような素材であればかなりの強さで叩くべきである。これは選手の気持ちを考えるとよくわかる。
というのも、選手は壁にぶつかるのが一番怖い。それより強くタッピングしてもらって壁が近いことを分かるほうが安心して練習できる。具体的な強さでいうと「パンッ」と音が出るくらい私は叩く。それでも選手は痛くないようで評価も高い。
大事なことは、選手とタッピングする人が経験を積み重ねて最適な距離を見つけていくことである。タッパーは、選手とよく議論しながらあなただけのタッピングの距離を見つけてほしい。
今後は「強くたたいて!」と言われないようにしていきましょう。
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編集長
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