オーストラリアのパラ水泳チームはなぜ強い?日本と一番違うところはここ!!
エリーコール。ブレンダンホール。マシューカウドリー。
これら名立たる選手たちはオーストラリア出身の選手である。なぜオーストラリアがパラ水泳強豪であり続けられるのか。今回はそのオーストラリアの強さの秘密に迫る。
結論からいうと、オーストラリアパラ水泳の強さの秘密は『マルチクラス』にある。
マルチクラスとは一言でいうならば、パラ水泳選手の障害の程度(重度か軽度)に関係なく競う試合方式である。つまり、本来のパラリンピック水泳競技は障害の程度で分かれているが、オーストラリアはそのクラスをひとまとめにしてしまい、競争をより促す仕組みをとっている。分かりやすく説明するために柔道を例にすると、本来は体重別で階級がある(60Kg、90Kg、100㎏超など)が、それをなくして無差別で争うということだ。
ちなみにパラ水泳の身体障害、視覚障害、知的障害のクラス(階級)は14にも分かれている。その分メダルがあるので、パラリンピックで金メダルは一つの種目につき男女でなんと28個もある。そうすると競争が生まれにくく競技レベルが低くなってしまうデメリットがある。そこで、オーストラリアはマルチクラスによってオリンピック同様金メダル数を種目で男女一つずつにし、競争を加速させ、金メダルの価値を向上させたのである。
しかし、皆さんそれでは「不公平だ」と思わなかっただろうか?
車いすで脚に障害がある選手と手首から先が欠損している選手では、車いすの選手が不利ではないか?そもそも、それ以前に視覚障害の選手や脳性麻痺の選手が一緒に競うことがそもそもできるのか?と、競技の平等性を疑ってしまうだろう。
しかしそれまたどっこい。オーストラリアはうまくその点においてカバーできる仕組みを考えている。
その不公平をなくすためにポイントシステムというものを導入し、障害の程度によるハンディをなくし平等に競うことができるのだ。
※ポイントシステムについて詳しく知りたい人は、Swimming Australia(オーストラリア水泳連盟)のサイトをチェック!
つまりは、障害の程度に関係なくパラスイマー全員が一緒に競技する方法を採用しているのだ!!これがパラスイマー同士の対抗心や向上心に火をつけ、高い競技レベルを維持し続ける秘密なのである。
※イギリスやドイツも導入している。
しかし、そのマルチクラスだけでなく、もう1つ強さの秘密があった。
ーーー本当の強さの秘密とは?ーーー
さて、真のオーストラリアパラ水泳の強さとは何なのか。
答えは、マルチクラスが普通の一般の大会に組み込まれているということである。なんと、オーストラリアでは国際大会の代表選考会や日本でいうJapanオープンや日本選手権などの全国規模の試合は、オリとパラ合同でおこなっている。1日の大会スケジュールでいうと、一般の部とマルチクラス(パラ水泳の部)が交互に行われる。
したがって、会場にいる観客や選手から注目され、パラスイマーの人気が自然と高まる。そして、実力が上がれば上がるほどより多くの人から応援されるのだ。そして、その応援が選手をどんどんやる気にさせる。一般の大会にマルチクラスの組み込まれている大会が歴史的に長く続いていることによって、選手の競技力アップを支えてきたということだ。
つまり、人々からの支持と選手のモチベーション向上が相まって、オーストラリアは強豪国と呼ばれるようになったのだ。
ーーーーまとめーーーー
オーストラリアの選手遺伝的にすごいとか、コーチの指導スキルが高いとかそういうことではない。その点ではなく、大会の運営の仕方や連盟の制度的なところにパラ水泳が強くなる秘密が隠されていたのだ。
オーストラリアでは、パラリンピック選手の価値や評価が圧倒的に日本より高い。その価値の向上や高い知名度を獲得するためにオリパラ合同大会にマルチクラスが組み込まれていることがかなり関係している。
日本も今後マルチクラスを導入していくことが、強豪国の仲間入りを果たすきっかけになるのではないだろうか。
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編集長
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