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51_頭部・顔面・頸部外傷【救急救命士国家試験対策】


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国家試験定期試験出題内容のまとめ

頭部・顔面・頸部外傷


【頭部外傷】

1. 損傷機序

  • 減速機序と角加速度機序: 頭部外傷は通常、外力が加わった際に頭が急激に止まる(減速)か、あるいは回転する力(角加速度)によって発生します。これにより、脳は頭蓋骨内で移動し、直接的な損傷や引っ張り、圧縮によって損傷を受けることがあります。

2. 外傷性てんかんの危険因子

  • 若年者前頭葉の脳挫傷は外傷後のてんかん発作のリスクが高いです。特に、外傷後に脳が回復しても、後遺症として神経回路の異常が残り、これが発作を引き起こす原因となることがあります。

3. 急性硬膜下血腫

  • 急性硬膜下血腫は、硬膜とくも膜の間に血が溜まる状態で、主に硬膜の静脈の損傷によって生じます。このタイプの血腫は、比較的遅く進行し、数時間から数日の経過で症状が悪化します。意識低下や片麻痺、瞳孔不同が見られることがあります。

4. 急性硬膜外血腫

  • 急性硬膜外血腫は、中硬膜動脈の破裂によって硬膜と頭蓋骨の間に血が溜まる状態です。これにより、急激な圧力増加が起こり、意識障害が短時間で進行します。患者は一度意識が回復することがあるものの、その後急激に意識が低下する「ルシッドインターバル」という典型的な症状が見られます。

5. 除脳肢位

  • 除脳肢位は、両腕を内側に曲げるような姿勢で、脳幹や中脳の損傷を示します。これは深刻な脳損傷の徴候で、緊急の治療が必要です。

6. 頭部外傷の症状

  • バトル徴候(耳後部の皮下出血)やパンダの目徴候(両目の周囲にあざができる)は、頭蓋底骨折を示唆する重要な症状です。これらは遅発性の徴候であり、初期には気付かれないこともありますが、脳脊髄液の漏れや感染のリスクを伴うため、注意が必要です。

7. 意識レベルの変化

  • 意識低下、瞳孔不同、片麻痺が見られる場合は、頭蓋内圧の増加や血腫による圧迫が考えられ、緊急手術が必要となる可能性があります。特に、意識の急激な変化は緊急性が高い兆候です。


【顔面・頸部外傷】

1. 気道の評価と確保

  • 気道評価の重要性: 顔面や頸部の外傷では、気道閉塞のリスクが高く、最初に気道の評価と確保を行うことが最優先です。特に顔面骨折や喉頭損傷がある場合、速やかに気道確保を行わないと窒息のリスクが高まります。

2. 頸髄損傷

  • 頸部外傷の場合、頸椎損傷のリスクが高いため、頭部・頸部の動きを最小限に抑えながら評価を行います。特に高位頸髄損傷は、呼吸筋麻痺を引き起こす可能性があり、迅速な気道確保が必要です。

3. 顔面骨折

  • 上顎骨骨折: 上顎骨の骨折では、鼻腔閉塞髄液漏が発生することがあり、感染リスクが高まります。これにより、脳炎や髄膜炎を引き起こす可能性があるため、早急な治療が必要です。

  • 頬骨骨折: 開口障害や咀嚼障害が伴うことが多く、顔面神経や血管の損傷を伴うことがあります。

4. 気道確保の注意点

  • 内頸静脈や総頸動脈の損傷が生じた場合、顔面・頸部の外傷は大量出血を伴うことが多く、気道圧迫や窒息のリスクが高まります。頸部前方の三角地帯は重要な血管や気道が密集しているため、この部分の保護と評価が非常に重要です。

5. 気管・喉頭損傷

  • 気管や喉頭が損傷している場合、空気漏れ皮下気腫血痰が見られることがあります。これらの症状が確認された場合、即座に気道確保が必要で、場合によっては緊急気管切開輪状甲状靭帯切開が必要となります。

6. 特殊な体位の管理

  • 外傷患者の体位変更は慎重に行わないと、嘔吐を誘発し、誤嚥や窒息を引き起こすリスクがあります。特に頭部外傷では、過度な体位変換が脳圧を上昇させるため、できるだけ穏やかな体位管理が必要です。


【骨折と外傷性窒息】

1. 骨折の評価

  • 外力による骨折は外傷で最も一般的な症状の一つで、特に肋骨骨折が多く見られます。肋骨骨折が複数ある場合は、フレイルチェスト(胸壁が不安定になり呼吸が困難になる状態)が発生し、開放性気胸が伴うこともあります。この場合、三辺テーピングや胸壁固定が必要です。

2. 外傷性窒息

  • 外傷性窒息は、上胸部から頸部にかけての外力が原因で起こり、点状出血顔面の腫脹を伴います。頸部の圧迫によって、静脈血の還流が妨げられ、窒息や脳の損傷が生じることがあります。これに対しては、圧迫解除と迅速な気道確保が必要です。



問題

  1. 脳に介達外力が及ぶ機序には__機序と角加速度機序がある。

  2. 外傷性てんかんの危険因子は__、前頭葉の脳挫傷である。

  3. 小児の頭蓋陥没骨折では、特徴的な__骨折を生じる。

  4. 慢性硬膜下血腫は__、常習的な飲酒、抗凝固薬の服用が危険因子となる。

  5. 急性硬膜外血腫は__からの出血によるものが代表的である。

  6. 急性硬膜下血腫は__とくも膜の間に生じる血腫である。

  7. 外傷性脳内血腫は__葉や側頭葉に好発する。

  8. 頭部外傷のうち脳挫傷では__や外傷性くも膜下出血を伴うことが多い。

  9. __肢位は中脳の損傷を示唆する。

  10. ダブルリングサインは__骨折を疑う。

  11. 頭蓋底骨折の症状であるバトル徴候や__徴候は受傷後数時間以上経過してから出現する。

  12. 意識レベル低下、__不同、片麻痺の三徴候があれば手術を必要とする病変が頭蓋内に存在すると判断してよい。

  13. 不用意な体位の変換は、__を誘発する。

  14. 重症の顔面・頸部外傷では、下顎骨折などに伴う__沈下のほか、上気道を構成する軟部組織の腫脹、あるいは異物によって気道が脅かされることが多い。

  15. 顔面には視覚や__、嗅覚などの特殊感覚受容器がある。

  16. 頸部を走行する内頸静脈や__、総頸動脈などの太い血管が損傷されると、大量の外出血や頸部の皮下に巨大な血腫を形成して気道を圧迫することがある。

  17. 顔面・頸部には__、口腔、咽頭および喉頭などの上気道が含まれている。

  18. 上顎骨骨折は__閉塞、眼球運動障害、髄液漏などをきたす。

  19. 頬骨骨折では__障害、咀嚼障害をきたす。

  20. 眼窩吹き抜け骨折の自覚症状としては__、悪心、嘔吐が出現する。

  21. __骨折は顔面骨折のなかでもっとも多い。

  22. 気管や喉頭の損傷では創部からの空気の漏れ、__、血痰などが認められる。

  23. 顔面・頸部外傷において傷病者に接触後、最初に行わなくてはならないのが__と呼吸の評価である。

  24. 顔面外傷によって頸部に介達外力が作用し、__損傷をきたすこともまれではない。

  25. 頸髄損傷が疑われる傷病者で用手的気道確保が必要な場合には__挙上法を用いる。

  26. 顔面・頸部外傷での気道確保の際に頭蓋底骨折が疑われる場合には__エアウェイ挿入は避けたほうがよい。

  27. 頸部前面の正中線と胸鎖乳突筋の前縁および下顎下縁で構成される左右一対の三角形を__と呼ぶ。

  28. 歯牙損傷において脱臼しかけている歯牙は、原則として__ずにそのままで搬送する。

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解答

  1. 脳に介達外力が及ぶ機序には 減速機序 と角加速度機序がある。

  2. 外傷性てんかんの危険因子は 若年者、前頭葉の脳挫傷である。

  3. 小児の頭蓋陥没骨折では、特徴的な ピンポンボール骨折 を生じる。

  4. 慢性硬膜下血腫は 高齢者、常習的な飲酒、抗凝固薬の服用が危険因子となる。

  5. 急性硬膜外血腫は 中硬膜動脈 からの出血によるものが代表的である。

  6. 急性硬膜下血腫は 硬膜 とくも膜の間に生じる血腫である。

  7. 外傷性脳内血腫は 前頭葉 や側頭葉に好発する。

  8. 頭部外傷のうち脳挫傷では 急性硬膜下血腫 や外傷性くも膜下出血を伴うことが多い。

  9. 除脳肢位 は中脳の損傷を示唆する。

  10. ダブルリングサイン は頭蓋底骨折を疑う。

  11. 頭蓋底骨折の症状であるバトル徴候や パンダの目徴候 は受傷後数時間以上経過してから出現する。

  12. 意識レベル低下、 瞳孔不同、片麻痺の三徴候があれば手術を必要とする病変が頭蓋内に存在すると判断してよい。

  13. 不用意な体位の変換は、 嘔吐 を誘発する。

  14. 重症の顔面・頸部外傷では、下顎骨折などに伴う 舌根沈下 のほか、上気道を構成する軟部組織の腫脹、あるいは異物によって気道が脅かされることが多い。

  15. 顔面には視覚や 聴覚、嗅覚などの特殊感覚受容器がある。

  16. 頸部を走行する内頸静脈や 外頸静脈、総頸動脈などの太い血管が損傷されると、大量の外出血や頸部の皮下に巨大な血腫を形成して気道を圧迫することがある。

  17. 顔面・頸部には 鼻腔、口腔、咽頭および喉頭などの上気道が含まれている。

  18. 上顎骨骨折は 鼻腔閉塞、眼球運動障害、髄液漏などをきたす。

  19. 頬骨骨折では 開口障害、咀嚼障害をきたす。

  20. 眼窩吹き抜け骨折の自覚症状としては 複視、悪心、嘔吐が出現する。

  21. 鼻骨骨折 は顔面骨折のなかでもっとも多い。

  22. 気管や喉頭の損傷では創部からの空気の漏れ、 皮下気腫、血痰などが認められる。

  23. 顔面・頸部外傷において傷病者に接触後、最初に行わなくてはならないのが 気道 と呼吸の評価である。

  24. 顔面外傷によって頸部に介達外力が作用し、 頸髄損傷 をきたすこともまれではない。

  25. 頸髄損傷が疑われる傷病者で用手的気道確保が必要な場合には 下顎挙上法 を用いる。

  26. 顔面・頸部外傷での気道確保の際に頭蓋底骨折が疑われる場合には 経鼻エアウェイ 挿入は避けたほうがよい。

  27. 頸部前面の正中線と胸鎖乳突筋の前縁および下顎下縁で構成される左右一対の三角形を 頸部前方三角 と呼ぶ。

  28. 歯牙損傷において脱臼しかけている歯牙は、原則として 抜か ずにそのままで搬送する。



練習問題

問題1

脳に介達外力が及ぶ機序の一つとして適切なのはどれか?
A. 反発機序
B. 直達機序
C. 回旋機序
D. 減速機序
E. 鎮静機序

答え: D
脳に介達外力が及ぶ機序には、減速機序と角加速度機序がある。


問題2

外傷性てんかんの危険因子に該当するものはどれか?
A. 高齢者
B. 若年者
C. 頭頂葉の脳挫傷
D. 大脳皮質の損傷
E. 後頭葉の損傷

答え: B
外傷性てんかんの危険因子には若年者と前頭葉の脳挫傷がある。


問題3

小児の頭蓋陥没骨折に特徴的なものはどれか?
A. クレータ骨折
B. ピンポンボール骨折
C. 卵殻骨折
D. 蜘蛛の巣状骨折
E. 鳥巣骨折

答え: B
小児の頭蓋陥没骨折では、ピンポンボール骨折が特徴的に見られる。


問題4

慢性硬膜下血腫の危険因子に含まれるものはどれか?
A. 若年者
B. 高齢者
C. 女性
D. 喫煙
E. 過度の運動

答え: B
慢性硬膜下血腫の危険因子には高齢者、常習的な飲酒、抗凝固薬の服用がある。


問題5

急性硬膜外血腫の代表的な原因として正しいものはどれか?
A. 小動脈の破裂
B. 中硬膜動脈の出血
C. 硬膜静脈の損傷
D. 静脈洞の破裂
E. くも膜下出血

答え: B
急性硬膜外血腫は中硬膜動脈からの出血が原因となる。


問題6

急性硬膜下血腫はどこに血腫が生じるか?
A. 頭蓋骨と硬膜の間
B. くも膜と軟膜の間
C. 脳室内
D. 硬膜とくも膜の間
E. 中脳と脳幹の間

答え: D
急性硬膜下血腫は硬膜とくも膜の間に血腫が生じる。


問題7

外傷性脳内血腫が好発する部位はどこか?
A. 頭頂葉
B. 後頭葉
C. 前頭葉と側頭葉
D. 側頭葉と小脳
E. 大脳基底核

答え: C
外傷性脳内血腫は前頭葉や側頭葉に好発する。


問題8

脳挫傷で多く伴う合併症はどれか?
A. 硬膜外血腫
B. 急性硬膜下血腫
C. 脳室内出血
D. 頭蓋骨骨折
E. 脳浮腫

答え: B
脳挫傷では急性硬膜下血腫や外傷性くも膜下出血を伴うことが多い。


問題9

中脳の損傷を示唆する肢位はどれか?
A. 除皮質肢位
B. 除脳肢位
C. 屈曲肢位
D. 伸展肢位
E. 弛緩肢位

答え: B
除脳肢位は中脳の損傷を示唆する。


問題10

頭蓋底骨折を疑う際に見られる診断サインはどれか?
A. ピットサイン
B. ダブルリングサイン
C. ヘルペスサイン
D. ハローサイン
E. パラスサイン

答え: B
頭蓋底骨折を疑う際にダブルリングサインが見られる。


問題11

頭蓋底骨折の症状が出現するまでの時間として正しいのはどれか?
A. 即時
B. 30分以内
C. 1時間以内
D. 受傷後数時間以上
E. 24時間以上

答え: D
頭蓋底骨折の症状であるバトル徴候やパンダの目徴候は受傷後数時間以上経過してから出現する。


問題12

手術を必要とする頭蓋内病変を疑う際の三徴候に含まれないものはどれか?
A. 意識レベル低下
B. 瞳孔不同
C. 片麻痺
D. 頭痛
E. 頭蓋底骨折

答え: D
手術を要する頭蓋内病変を疑う三徴候は、意識レベル低下、瞳孔不同、片麻痺である。


問題13

不用意な体位変換により誘発され窒息することがあるのはどれか?
A. 痙攣
B. 血圧低下
C. 呼吸停止
D. 嘔吐
E. 視覚障害

答え: D
不用意な体位の変換は嘔吐を誘発する。


問題14

重症顔面・頸部外傷で、下顎骨折に伴って起こりやすい合併症はどれか?
A. 舌根沈下
B. 軟骨破裂
C. 鼻腔閉塞
D. 咽頭血腫
E. 声門破裂

答え: A
重症の顔面・頸部外傷では、下顎骨折に伴い舌根沈下が生じやすい。


問題15

顔面にはどの感覚受容器が含まれるか?
A. 触覚
B. 痛覚
C. 聴覚
D. 温覚
E. 平衡感覚

答え: C
顔面には視覚や聴覚、嗅覚などの特殊感覚受容器がある。


問題16

頸部を走行する血管で、損傷により大量外出血を引き起こす可能性が高いものはどれか?
A. 甲状腺動脈
B. 椎骨動脈
C. 総頸動脈
D. 気管動脈
E. 上腕動脈

答え: C
頸部を走行する総頸動脈が損傷されると、大量の外出血を引き起こす可能性がある。


問題17

頸部前方三角に含まれる構造として正しいものはどれか?
A. 外頸動脈
B. 胸骨
C. 鎖骨
D. 頚椎
E. 肩甲骨

答え: A
頸部前方三角には、頸部前面の正中線、胸鎖乳突筋の前縁、下顎下縁が含まれる。


問題18

頸髄損傷が疑われる場合に用いられる適切な気道確保法はどれか?
A. 頭部後屈法
B. 下顎挙上法
C. 頸椎牽引法
D. 舌挙上法
E. 頭蓋牽引法

答え: B
頸髄損傷が疑われる場合には下顎挙上法を用いる。


問題19

頭蓋底骨折が疑われる場合に避けるべき気道確保法はどれか?
A. 経鼻エアウェイ挿入
B. 経口エアウェイ挿入
C. 気管挿管
D. マスク換気
E. 非侵襲的人工換気

答え: A
頭蓋底骨折が疑われる場合には経鼻エアウェイ挿入を避ける。


問題20

歯牙損傷で、脱臼しかけている歯牙の処置として適切なのはどれか?
A. 即時抜歯
B. 原則として抜かない
C. 挿入処置
D. 一時的に固定
E. 抜いて搬送する

答え: B
歯牙損傷において脱臼しかけている歯牙は、原則として抜かずにそのままで搬送する。

参考文献:救急救命士標準テキスト


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「聴いて学ぶ」救急救命士標準テキスト

51_頭部・顔面・頸部外傷
 ①音声解説
 ②聞き流し1問1答

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