ミスドの思いド ピアミス篇
四半世紀前の話。
連絡ツールは専らポケベルの時代。
他校の彼はポケベルを持たない人だった。
そんな彼とのデートの約束は「前のデートでの約束」が全て。
待ち合わせは「〇月〇日〇時、ピアのミスドで」だった。
いつも遅れてくる彼だから、時間潰しに私は雑誌を買って、ピアミス
(私達が呼んでいた名称)に着いたのが約束時間の10分後。
彼の姿はやはりない。
彼が見つけやすそうな席にバッグを置いて、ホットコーヒーとチョコファッションを注文。
・・・30分待っても来ない。
あれ、すっぽかされた?
日付や時間を間違えた?
ピアミスじゃなかったとか??
いろんな不安が頭をよぎる。
何度かポケベルを確認する。連絡はなし。
いや、彼に何度もポケベルの打ち方を説明したのに、一向に覚えてくれなかった。
あーあ、とうとうすっぽかされたか?
私が間違えたのか。。。
時計を見ると、もう約束(のはず)の時間から2時間近く経っている。
このページを読んで、それでも彼が来なかったら帰ろう。
そんな悲壮感いっぱいの気持ちで眺めていたら、
急に明かりが遮られ、ドスンという音。
パッと顔を上げると、そこにはむくれた顔の彼が足を広げて座っていた。
「やっと、見つけた。どこにいた?ずっとここにいた?」
矢継ぎ早に聞いてくれる彼。
「うん、ここにいたよ?」「オレ、いつもお前が早く来てるから、今日は時間よりも20分くらい早く来て、30分くらい待ったんだよ。でも、いないだろ?場所を間違えたかと思って、パリオとベルのミスドまで行った」
なんだよ、そうだったのか。彼も勘違いしたかと探してくれたのか。
私が雑誌なんか買ってしまったから。
「あー良かった、ホッとしたら喉乾いたわ」
そう言って、彼はアイスコーヒーを注文しに行った。
パリオもベルのミスドも行ったよね。
けど、私達が約束したのはピアミスで合ってた。
今はもうない、ピアミス。
それでも、「ピアミス」という響きに私は今もキュンとする。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?