5月交付の「住民税の課税額決定通知書」に書かれる氏名は、いつのどこの名前?
1.性別移行期は「住民税の課税額決定通知書」に気を付けるべき
毎年5月か6月に、会社から従業員に交付される「住民税の課税額決定通知書」。
これは従業員の住所のある市区町村から、従業員の勤める事務所に送られるものです。「特別徴収」というシステムによるものです。よほど給与が低いなどの条件をクリアしない限り、すべての従業員は「特別徴収」となり、従業員が直接納付する「普通徴収」で完結することはできません。
さて、法的・制度的な性別・名前を移行している途中のトランス(性別変更者)にとっては、この通知書は問題になります。
というのも、健康保険や年金や税金などは、原則として名前や性別の変更があった場合、変更届を出すべきものなのです、が、実際は、「納めるものさえ納めていれば」戸籍や住民票に記載された名前と異なっていても、グレーゾーンとして問題なしとされることが多いようです。
しかしながら、この「通知書」が来てしまうと、会社(事業所)が、従業員の制度的な名前を知ることになります。名前が変わっていたら、従業員が会社に対して、「なぜ名前が変わったのか」を多少なりとも、説明・カミングアウトする必要がでてきそうです。(※一方、性別については、税金関係の資料に記載されるケースがほとんどないと思いますので、実は問題になるケースはあまりなさそうです。)
2.「住民税の課税額決定通知書」に記載される名前は?
私の居住する某市の市民税課に電話して、聞いてみました。
回答:1月1日時点の住民票での名前
ということです。
すなわち、1月末までに会社が市区町村に提出する「給与支払報告書」記載の名前ではないということです。あるいは、1月末までに会社が税務署に提出する「源泉徴収票」の名前でもないということです。また、たとえば2月に結婚や名前変更手続きをして、変わった後の戸籍や住民票上の名前でもないということです。もちろん、パスポートや年金手帳や運転免許証の名前でもないということです。確定申告で記載した名前でもないですね。
ただ、自治体によっては、取り扱いが異なるケースもあるかもしれませんので、お住まいの市区町村に、必ず電話などで確認してください。
3.どういうタイミングの人がコレに注意するべきか。
①一番気を付けるべき人。
それは、年の途中、1月~5月くらいの間に名前を変更し、同時に転職をした人です。前の名前をとくに言わずに転職した場合、住民税額の決定通知書によってトランスしたことが会社にバレる可能性があります。
(ただ、私、転職時の手続きについては熟知しておりませんので、バレずに済む可能性もあります。ここでは、「そういうリスクもあるので、よく調べておいてください」という意味で、記載しています。)
②ほかに気を付けるべき人。
向こう1年くらいで会社を辞める予定があって、それゆえ、会社には名前が変わったことを伝えたくない人。前述の通り、健康保険や年金や雇用保険は、名前が変わっても届けなくても大丈夫な場合も多いようですので、伝えずに終わらせる(退職する)ことも可能に思われます。
たとえば、2022年1月~2023年4月に会社を辞める場合、2022年1月~2023年4月に改名したのであれば、その事実を会社に伝えなくてもなんとかなる可能性が高いです。
しかしながら、2021年の12月31日に改名した場合。2022年の1月1日時点の名前は改名後の名前ですので、2022年5月の「住民税の課税額決定通知書」に記載される名前が改名後の名前となり、会社に改名の事実が伝わってしまいます。
ちなみに、会社から税務署や市区町村に提出された書類の名前が、住民票や戸籍上の名前と異なっていても、マイナンバーさえ分かれば、誰であるか判別可能です。よって、税務署等から会社側に「合致してませんよ」という通知が行くことは(調べる限り)あまりないようです。
4.おわりに
制度的なことは、自治体や時期や事業所によって、かなりのバラエティがあると思います。
必ず、自分の住む自治体等に照会し、不要なカミングアウトは防げるよう、おススメいたします。
【後日追記】
2022年時点で、マイナンバーが健康保険・厚生年金に紐づいたことからか、名前・性別を変更すると、自動的にこれらも変更されてしまうようになったようです。
事業者(=雇用主)にも「新しい保険証の送付」という形で伝わってしまいました。読みが外れたというわけですね。しかしこれって、マイナンバー制度によるアウティングのような気もしますが ^^;
グレーゾーンが許されない世の中は、何かと生きづらいものですね。
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