2012年7月22日『情報と人間』
【10年前の2012年7月22日のコラム】
フランソワ・トリュフォーのキャリア中唯一のSF作品「華氏451」(オスカー・ウェルナー主演、1966年英)を見た。タイトルは本が自然発火する温度のことだそうだ。
書物が社会に有害なものとして焼き尽くされてしまう近未来を描いたレイ・ブラッドベリの小説の映画化である。
当時としては、かなりの映像美。トリュフォー自身は失敗作のように言ってたらしいが、なかなか面白かった。柔道の技とか日本語なんかがあれ?みたいなところで出てきます。
口伝えでいろんな知恵が受け継がれていた、グーテンベルクの活版印刷の発明以前を想ってみたり、「読書有害論」みたいなのも確かあったな(ショーペンハウアーだっけか?)と考えたりしながら見たのだった。
何が真実の情報なのか見極めるのは骨が折れるが、規制しても漏れるものは漏れる。より重要なのは何を求めて、何のために生きているかだ。この映画はそれを教えてくれる。
初出:2012年7月22日のウォール