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【ほぼ完全版】ソ・ラ・ノ・ヲ・ト舞台探訪マニュアル

超名作アニメ「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」について、今更ではありますが舞台探訪のマニュアルを作成したのでここに記しておきます。
「このシーンのモデルの場所はここにある!」ということを詳細に書いたマニュアルではなく、どちらかといえば舞台探訪をするための行動指針なんかについて書いた、半分は旅行記のようなものです。



今年でTV放送から14年。
いまさら新規に「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の舞台探訪をしようと思う方がいるのかは怪しいところではありますが、この作品の面白さは確かなものですし、未だに根強いファン活動が続いているのもまた事実。
なにかのきっかけで「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」を見て、「舞台となった場所に行ってみたい!」と思う方が出てこないとも限りません。
ですが、カナタたちが暮らすセーズの街のモデルとなったのは、日本から遠く離れたスペインのクエンカとアラルコン。軽い気持ちで向かうにはなかなかハードルが高い場所でしょう。

そこで、このマニュアルの出番です。
このマニュアルには、「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の舞台探訪を一通りこなせるだけの情報をまとめているつもりです。
これを読めば、舞台探訪をするにあたりどこから手を付けたら良いか、現地ではどう振る舞うべきか、諸々参考にしていただけると思います。
初めて舞台探訪に行こうとしている方も、二度目、三度目の舞台探訪を考えている方も、このマニュアルを役立てていただければ幸いです。

これからさきの未来でも活用できるよう意識して作成したつもりではありますが、2016年と2023年に舞台探訪した経験をベースに書いているため、あくまで情報はその時点までのものになります。
また、「この情報足りてないよ!」「ここ間違っているよ!」などの指摘があれば(@ktym_333)までご連絡いただけますと非常に助かります。より良いマニュアルにしていきたいところです。




■旅立チ

「旅立チ」と章立てしましたが、飛行機に乗ってスペインへ行きましょう!というだけのことなので、取り立てて書き記すことはありません。
スペインまでのフライト中に「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」を見返すなどしてテンションを高めておきましょう。
サブスク利用だと海外からの視聴が出来ないこともあるため、舞台となった場所で「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」を心ゆくまで見たいんだ!という方は作品を視聴できる環境を整えてからいきましょう。
舞台探訪ということで、本編と同じカットの写真が撮りたいんだ!という方は画像をしっかり用意しておくことも重要です。

日本からスペインに行くとなると、最初にバルセロナかマドリードに降り立つことになるかと思います。
そこから高速鉄道(新幹線みたいなやつ)に乗ってクエンカまで行く、というのが一般的でしょう。
クエンカまでの交通手段については、最後にまとめて書き記しています。
最終目的地はクエンカの「CUENCA FERNANDO ZÓBEL(クエンカ・フェルナンド・ゾベル駅)」です。



■舞台探訪・クエンカ編

高速鉄道でクエンカに向かった場合、「CUENCA FERNANDO ZÓBEL(クエンカ・フェルナンド・ゾベル駅)」に到着することになります。

https://maps.app.goo.gl/Vzg58NKr1ep9wAtS6(GoogleMap)

2023年撮影

駅名にクエンカと含まれていますが、市街地からは結構離れた場所にありますので、ここからはバスで旧市街中心部である「Plaza Mayor(マヨール広場)」に向かいましょう。
バスは駅舎内から見える位置、横断歩道を渡ったところに停まっているので迷うことは無いと思います。行き先が「Plaza Mayor」になっていれば間違いありません。片道2.15ユーロです(2023年9月時点)。
平日は30分に1本、土日は1時間に1本くらいのペースで運行しているようです。下の写真はマヨール広場で撮ったものですが、こんな感じのバスが走っています。
GoogleMapで経路検索するとこのバスの路線がちゃんと出てきます。「L1」となっている路線がそうです。

2023年撮影

普段はマヨール広場まで行くバスですが、サン・マテオと呼ばれるお祭りの期間中はマヨール広場まで入ることが出来ないため、途中の「Plaza Trinidad」あたりで折り返すことになります。
サン・マテオについては最後で触れることにします。

https://maps.app.goo.gl/zcoHH8NYTY4umYby8(GoogleMap)

そこからは歩くしか無いのですが、サン・マテオの最中は本当に人が多いうえ、時間帯によっては街中を牛が走っているので注意が必要です。
2023年の探訪時は、サン・マテオの日程に被せる形でクエンカのパラドールを予約したのですが、旅行直前になって「あなたの滞在期間は祭りの最中なので夕方以降は牛が街中走ってるから気をつけてね」という旨のメールがパラドールから届いて思わず笑ってしまいました。なにをどう気をつけたらいいというのでしょうか。


他の都市からバスでクエンカに向かう場合、「Estación de Autobuses CUENCA(クエンカバス停)」に到着することになるかと思います。
アラルコンへの中継地点である「Motilla del Palancar(モティリャ・デル・パランカル)」へ行き来するためのバスに乗る際にもここを利用することになります。

https://maps.app.goo.gl/U4XZ3MidEFG7TdGs6(GoogleMap)

2023年撮影

このクエンカバス停からマヨール広場までは歩いて30~40分ほどですので、散歩がてら歩いて向かうのもよいかと思います。
ただし、途中から坂道続きになっているので荷物が多い方は素直にバスに乗りましょう。フェルナンド・ゾベル駅から出ているのと同じバス(L1)がクエンカバス停の近くを通っているので、そこから乗ればマヨール広場までたどり着けます。


・マヨール広場

フェルナンド・ゾベル駅からバスに揺られること約30分、クエンカ旧市街の中心地であるマヨール広場に到着です。

https://maps.app.goo.gl/gWaQz9vSjSfWojou8(GoogleMap)

2023年撮影

作中でも、この場所はセーズの中心地として度々登場してきました。

第1話「響ク音・払暁ノ街」より
第6話「彼方ノ休日・髪結イ」より
第13話「空の音・夢ノ彼方」より

作中ではお祭りや市など、人が集まる行事の際にはこの広場が使われています。これはモデルとなったクエンカの街でも同じようで、サン・マテオの祭りの際には、このマヨール広場が人で埋め尽くされるほどです。

2023年撮影

作中ではこの広場の真ん中あたりに噴水があることが確認できますが、マヨール広場には隅の方に噴水(水飲み場?)があります。

2016年撮影

ただ、形は似ても似つかないのでモデルになっているかはかなり怪しいところです。もしかしたらどこかにモデルとなった噴水があるのかもしれませんが、見つけることは出来ませんでした。
この噴水の左手にはカナタがユミナの相談を受けていた場所があるのですが、なぜか写真を撮っていませんでした。

第6話「彼方ノ休日・髪結イ」より

絶対に撮ったと思っていたのですが、写真を見返すと噴水の写真しかありませんでした。たった90度身体を左に向けるだけで撮れたはずなのに…。
舞台探訪ではこの「撮ったつもりだったのに写真がない」という現象がちょくちょく起こります。気をつけなければ。

また、マヨール広場にはクエンカの名所の一つでもある「クエンカ大聖堂」が鎮座しています。

2023年撮影

聖堂ということで最初はユミナたちが暮らす教会のモデルになっているのでは?と思ったりもしましたが、比べてみるとファサードの造りから屋根の形まで全然違っています。

第3話「隊ノ一日・梨旺走ル」より

そこで、マヨール広場から少し歩いてみると似た形状の建物がありました。

https://maps.app.goo.gl/j6EVRAFQFmCcpSYEA(GoogleMap)

2016年撮影

大聖堂より似てるっちゃ似てるが、モデルと言うには弱すぎる、といったところでしょうか。
そもそもユミナたちの教会のモデルになった建物が存在しているかどうかすら不明なところではありますが、自分の足でモデルはどこかとあちこち探し回るのもなかなか楽しいものです。
勝手な思い込みで終わってしまうかもしれませんが、「このへんから着想を得たのかもしれないな~」と想像を巡らせるのも悪くありません。
ちなみにこの建物は「Museo de las Ciencias de Castilla La Mancha」といって、どうやら科学博物館のようです。
ううむ、やっぱり関係ないのかな。


・宙吊りの家、サン・パブロ橋

マヨール広場から5分ほど歩くとクエンカを象徴する名所であり、「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」という作品を印象付ける一要素でもある「Casas Colgadas(宙吊りの家)」が見えてきます。

https://maps.app.goo.gl/Ud3ciXq7vFgzhRM29(GoogleMap)

2023年撮影
エンドカードより

作中ではナオミさんが営むアンティークショップ「ウィンドミル」のモデルとして登場していますが、現実のクエンカではスペイン抽象芸術美術館として中に入れるようになっています。
さすがにベランダ部分に出られるようにはなっていませんが、館内から外を眺められるようになっているため、第1話のカナタが如何に危険なことをしていたのか体感できることでしょう。リオが怒るのも当然です。

2016年撮影
2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

舞台探訪ということで、ついつい景色にばかり言及してしまいますが、美術館内に展示されている作品もなかなかに良いものが多く、芸術の素養などまったくない僕でもつい作品鑑賞にのめり込んでしまった覚えがあります。
アニメ作品を通じて普段触れない領域に触れるようになるというのも舞台探訪の魅力かもしれませんね。

美術館前は駐車場となっており、これは作中にも同じように登場しています。
1121小隊の車両やクラウスのバイクが停めてあるところですね。タイルの模様まで同じです。

https://maps.app.goo.gl/LiAhSn4e4vocpE5V8(GoogleMap)

2023年撮影
第3話「隊ノ一日・梨旺走ル」より
第5話「山踏ミ・世界ノ果テ」より

あとはDVD・BD3巻のジャケットもここが舞台になっています。

2023年撮影
ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 3巻ジャケットより

第5話でクレハがクラウスにカルヴァドスを差し入れに来たシーンと3巻ジャケットは同じ舞台のはずですがタイルの模様や地面の傾斜が微妙に異なっていますね。
まあでも場所は同じはずです。

宙吊りの家から見た景色にも少し映っていましたが、ここを抜けた先にはセーズの街と時告げ砦を結ぶあの橋が、クエンカでいうところのサン・パブロ橋が架かっています。

https://maps.app.goo.gl/NvoDM7zHD4415GRg8(GoogleMap)

2023年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

作中でも数え切れないほど登場するこの橋は、舞台探訪の目玉と言っても過言ではないでしょう。
実際、僕が舞台探訪をした際に一番テンションがあがったのはこのサン・パブロ橋を渡るときです。

僕が初めてクエンカを訪れたのが放送から6年経った2016年。
放送終了からの6年間、ずっと温め続けてきた思いが成就されたのがこの橋を渡りきった瞬間でした。
特に第13話が好きということもあり、最後のリオのセリフ、「いこう、夢のその先に。たとえ、いつか世界が終わるのだとしても。その瞬間までは、私達の未来だ」を思い起こしながら渡ったのをよく覚えています。

2023年撮影
第12話「蒼穹ニ響ケ」より

作中では橋の下に雄大な川が流れていますが、現実のクエンカの方はというと、ほとんど目立たない小さな川が流れているだけであり、どちらかといえば道路の存在感のほうが強いです。
セーズの街は川に囲まれている地形になっていますが、このあたりの設定はどうもアラルコンを参考にしているようです。
ダムもアラルコンの方にあります。

2016年撮影
第13話「空の音・夢ノ彼方」より

クエンカは歴史ある街なので、そうそう景観が変わるということもないと思いますが、2023年の探訪時に変わってしまっている点が一つありました。
それが上記画像左上にある二本の大きな木です。
2016年には作中と同じ位置に木があることが確認できますが、これが2023年になると伐採されています。
放送から時間が空いてしまうとこういうこともあります。


・パラドール・デ・クエンカ

サン・パブロ橋を渡りきってすぐのところに「Parador de Cuenca(パラドール)」があります。パラドールとは宮殿などを改装したスペインの国営ホテルのことで、クエンカやアラルコンだけでなく、スペイン各所にあります。
もはや説明不要かと思いますが、ここクエンカのパラドールは、1121小隊の面々が寝起きする時告げ砦のモデルとなった建物です。
「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の原作者名である「Paradores(パラドーレス)」は、パラドールからたくさんのアイディアが生まれ、この場所が物語の中心舞台となることにちなんで名付けられています。

https://maps.app.goo.gl/c4XUs9Y3U6r96Yov9(GoogleMap)

2023年撮影

作中では中庭までぶち抜かれた通路や朽ち果てた学校施設などがくっついており、かなりの大きさになっていた時告げ砦ですが、実際のパラドールは隣に修道院を改装して作られた美術館があるくらいで、作中の形状とは少し異なっています。
2023年の探訪時には美術館部分の工事が行われていました。

モデルとなった建物だけあって、入口からしてもうそっくりです。

2023年撮影
第8話「電話番・緊急事態ヲ宣言ス」より

作中では広々としていた時告げ砦前の広場ですが、パラドール前の広場は植え込みがあったり、車が縦横無尽に停まっていたりとかなり騒がしい印象です。
ちなみに2023年の探訪時に「レンタカー借りてくるから駐車場に停めたいんだけどどこに停めたらいい?」とフロントに尋ねると、「好きに停めていいよ!」と返ってきました。
このあたりはお国柄ですかね。

2016年撮影
第2話「初陣・椅子ノ話」より

作中には国旗と隊旗を掲揚するためと思わしきポールが3本立っていますが、これと似たようなものがクエンカのパラドールにもあったりします。

2023年撮影

色合い的に右から欧州旗、スペイン国旗、カスティーリャ=ラ・マンチャ州旗ではないかなと思いますが、自信はありません。
ちゃんと見ておけばよかった…。
2016年の探訪時には看板に日本語の表記はなかったのですが、2023年には追加されていました。日本人観光客が増えているんでしょうか。
「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」がその一因となっていたら嬉しいですね。

周辺の景色が魅力的すぎて、なかなかパラドール内に入れませんが、ここはカルヴァドス密造の舞台でもあります。
同じ場所に扉があれば妄想が膨らんだでしょうが、残念ながら扉はありませんでした。

2023年撮影
第5話「山踏ミ・世界ノ果テ」より

周辺の景色をたっぷり堪能したところで、パラドール内に入っていきましょう。
食事やカフェの利用のみでも中に入ることは出来ますので、宿泊の予約をしていなくても一度は中に入っておくことをオススメします。

中に入るとそこはもう時告げ砦。
知らない街のはずなのに、知っている場所があるというのも変な感じです。だけど、確かに僕はここを知っています。
廊下を歩いているだけでなんだか楽しくなってきました。
いま僕は、セーズの街の、時告げ砦の空気を吸っているんだ。

2023年撮影
第2話「初陣・椅子ノ話」より

そんなパラドールの廊下には大きな置き時計が置かれています。
この形状、食堂に置かれている置き時計と近しいものを感じるのですがどうでしょうか。
振り子部分のデザインや文字盤の形状なんかは違っていますが、全体的なフォルムはかなり似ているような気がします。

2023年撮影
第2話「初陣・椅子ノ話」より

作中の中庭と全く同じというわけではありませんが、パラドールの中庭は時告げ砦の中庭のモデルになっています。
一部見切れてしまっていますが、一階と二階の窓の形状が作中と同じです。

2023年撮影
第2話「初陣・椅子ノ話」より

真ん中の噴水は合致していませんが、これは隊舎の更に奥、崩れかけた崖と朽ちた校舎に面した広場の方に持っていったようです。

2023年撮影
第5話「山踏ミ・世界ノ果テ」より

時告げ砦の中庭は大きいものと小さいもの、二つあることが確認できます。これはクエンカのパラドールも同じで、中庭が二つあります。
ただし、大きい方の中庭はモデルになっているのに比べ、クエンカのパラドールにある小さい方の中庭はかなり質素な作りとなっており、モデルになっているとは到底思えません。
ほとんど荷物置き場といった様相です。

2023年撮影

小さい方の中庭のモデルがどこかにあるのか、はたまた完全な創作なのか。
難しい問いかけではありますが、これを考えるのも舞台探訪の楽しいところです。

作中でカナタは時計塔の上から時告げ砦を一望していますが、パラドールにはそんなものありませんので、別のところから見る必要があります。
パラドールを上から眺められる場所はいくつかありますが、一番簡単なのはパラドールを出て目の前の道路を更にあがっていき、展望台のようになっているところから眺めることです。
第2話冒頭でカナタが眺めた方向とは逆からになってしまいますが、上から眺めると建物の形状や屋根の造りが実に似通っていることに気付くことでしょう。

2016年撮影

宿泊されている場合は、部屋の中でも作中との類似点を見つけることができます。
それは部屋の床です。
パラドール客室の床の模様は、食堂など1121小隊の居住スペースの床と同じ模様になっているのです(実は二階より上の廊下もこの模様、なんなら階段もこの模様)。

家具や調度品なんかも同じものがあれば嬉しかったのですが、これらは割と最近のものが使用されているので期待するほうが間違いだったのかもしれません。
この楽しみは、後で出てくるセルバンテスの家までとっておきましょう。

2023年撮影
2016年撮影
第2話「初陣・椅子ノ話」より
第3話「隊ノ一日・梨旺走ル」より
第9話「台風一過・虚像ト実像」より
第9話「台風一過・虚像ト実像」より

個人的なことですが、2016年の探訪時にはクエンカ到着前にカルヴァドスを買っていき、パラドールで飲むという非常に贅沢な時間を過ごしました。
カナタたちが過ごした場所で、カナタたちと同じものを楽しむ。
これも舞台探訪の醍醐味の一つでしょう。

ただし、カナタたちと同じ調子で飲んでいると確実に死にます。
作中ではカルヴァドスをコップになみなみと注ぎ、ボトルを何本も開けている描写がありましたが、カルヴァドスって度数40%くらいありますからね。
あんな調子で飲むと死神に命を持っていかれます。見えている死神です。

2016年撮影
第7.5話「饗宴・砦ノ戦争」より

ここからは完全に余談なのですが、パラドールは良いホテルなだけあって、諸々の設備も整っています。
ジムにプール、さらにはサウナまで利用可能と、至れり尽くせりです。
観光に夢中になってしまったのでまだ利用したことはありませんが、いつかはクエンカの雄大な景色を楽しみながら優雅に水遊び、なんて楽しみ方もしてみたいものです。


・クエンカ旧市街あれこれ

ここからは、クエンカ旧市街エリアの紹介に入ります。
作中でも頻繁に登場するセーズの街並みの多くは、クエンカの街並みがそのままモデルになっています。
旧市街はそんなに広くはないため、少し歩いてみるだけで、モデルになった多くの場所を見つけることが出来ると思います。
そして歩いているうちに、モデルになった場所かどうかに関係なく、だんだんとセーズの空気を感じられるようになってくる。それくらい、クエンカ旧市街とセーズの街はリンクしているのです。

出歩く際は、「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト オリジナル・サウンドトラック」を聴きながら街歩きをすることを強くオススメします。
段違いの没入感を得ることが出来るでしょう。


全部を紹介することはしませんが、水かけ祭りの様子が描かれた一連のシーンのモデルになった場所が街のあちこちにありますので、散歩がてら街を巡りながら、カナタがどういうルートを歩んでいたのか想像してみるのも楽しいかと思います。

https://maps.app.goo.gl/w5cnayQc2onWpaJY8(GoogleMap)

2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

ここの第1話冒頭の構図はクエンカまで舞台探訪に行かれた方がよく撮っているような気がします。

https://maps.app.goo.gl/EM85FuCDq5hyz4nQ8(GoogleMap)

2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

ヘルベチアの12代大公アキラ=アルカディア二世もちゃんといます。
たしかこのときは扉が閉まっている構図が撮りたくて夜に撮影をしたのですが、夜に見ると妖怪じみた怖さがありますね。

https://maps.app.goo.gl/b2ZhzM3qA4VNoh4p8(GoogleMap)

2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

昼間に撮った一枚も載せておきます。
こうして細部を見ると、組み合わされた岩の形まで再現されていて驚きです。こういう細かいところが、作中から漂う生活感の源になっているように思います。

2023年撮影

「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」のシンボルといっても過言ではない時計塔は、作中とは異なり、クエンカ旧市街にあります。
この時計塔は「マンガナ塔」と呼ばれており、周囲は広場兼展望台となっています。住人たちの憩いの場としてだけでなく、クエンカの街を一望出来る場としても活用されている、素敵な場所です。

僕が訪れた際には、地元住民らしき方たちが子供連れで遊んでいる傍らで、観光客がクエンカの街を眺めている、というような光景が広がっていました。
なんとも心地の良い空間でした。

https://maps.app.goo.gl/6iJgLwpnodmjiiMXA(GoogleMap)

2023年撮影
第10話「旅立チ・初雪ノ頃」より

叶うことならば、時計塔にのぼって「ごつごつ、ざらざら。今日からよろしくね」ごっこがしたかったのですが、残念ながらのぼることはできません。
それでも、時計塔から漂う雰囲気は実に素敵で、僕はなかなか広場から離れることが出来なかったのでした。

2016年撮影
第10話「旅立チ・初雪ノ頃」より

第4話でカナタとノエルが買い出しに出かけた場所もモデルが存在します。

「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」は作中から漂う生活感というか、日常の解像度が高い作品だと思っているのですが、この第4話あたりの描写はそれが顕著に現れています。
物資が不足しており、補給も滞っていることを第3話で明かしたうえで、この第4話はナオミから代金の受取り→受け取った代金で物品購入の流れがさらっと描かれており、代金の出所はカナタのお給料の話にもつながっていく。
舞台背景がしっかりと描かれていることで、その後の展開に説得力が生まれて来るのだと思います。地続き感というやつです。

https://maps.app.goo.gl/P93Zh6UPeuSUmJg28(GoogleMap)

2023年撮影
第4話「梅雨ノ空・玻璃ノ虹」より

「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」は1クールで作中の一年を描いた作品です。
1クールという短い制約のなか、当然、カナタたちの日常については、その多くが描かれていないままになっています。ですが、作中に描かれていない間も、キャラクターたちはそれぞれ交流を深めているはずです。
この第4話から始まるセーズの街の人たちとの交流もその一つです。
第12話において、街ぐるみで1121小隊の味方をしてくれるセーズの人たちですが、彼らとの交流を描いたシーンはそう多くはありません。

しかし、話数が進むにつれ作中の人間関係が変化していても、違和感なくそれを受け入れることが出来ます。
これもやはり、舞台背景がしっかりと描かれているからだとおもいます。
カナタならこうするだろうな、こうしたんだろうな、という想像がしやすくなり、それに沿った物語を自然に受け入れることが出来る。
そして、さらには、カナタたちのこれからをも想像することが出来る。
この解像度の高さも、間違いなく「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の魅力の一つです。

https://maps.app.goo.gl/aZoSRvYgQCaWpGbQ9(GoogleMap)

2016年撮影
第4話「梅雨ノ空・玻璃ノ虹」より

第10話でリオと散歩した道もクエンカに多く登場します。
まだ全部を見つけることは出来ていないのですが、いつかはすべて見つけたいものです。

https://maps.app.goo.gl/W39o194vbCBN3w8K6(GoogleMap)

2016年撮影
第10話「旅立チ・初雪ノ頃」より

EDに登場するシーンはクエンカとアラルコン両方に存在しています。
クエンカの旧市街は本当にあちこちがモデルになっているので、散歩していて飽きることがありません。

https://maps.app.goo.gl/9f9wkyDn1sabPPp3A(GoogleMap)

2016年撮影
ED「Girls, Be Ambitious.」より

https://maps.app.goo.gl/brPR1J1c3p9qRyjU7(GoogleMap)

2016年撮影
ED「Girls, Be Ambitious.」より

https://maps.app.goo.gl/R7uY3Mq5tSY5atCf7(GoogleMap)

2016年撮影
ED「Girls, Be Ambitious.」より

あとは炎の乙女関連のものをいくつか。
作中では炎の乙女像があった場所には、キリスト像?が置かれていました。
夜に行くと神秘的な雰囲気があって素敵です。

https://maps.app.goo.gl/qVJftwAC85NWB6pR7(GoogleMap)

2016年撮影
第10話「旅立チ・初雪ノ頃」より

第1話でリオが炎の乙女となって水かけ祭りに参加していた場所は少し形を変えて存在しています。
こちらも夜に行くと神秘的な雰囲気が味わえます。

https://maps.app.goo.gl/1YbQ47MSdq2NnXa4A(GoogleMap)

2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

我ながらなにをトチ狂ったのか、トランペットを担いでクエンカまで行ってきたので作中のリオと同じ構図で一枚撮ってきました。
トランペットを持っていくのはけっこうな負担ではありますが、カナタやリオと同じ場所で同じ音を響かせるというのは、これ以上ない満足感を得られるものとなります。
舞台探訪の極北といっても過言ではないでしょう。

2023年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

シュコに盗られた鈴の音を追ってカナタがたどり着いたのは、街の外れにある岩場でした。
クエンカも街の外れに特徴的な形をした岩が集まる岩場があります。

https://maps.app.goo.gl/BmuF2NyaRDpPwR6j7(GoogleMap)

2023年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

特に柵などないため近寄りたいだけ近寄ることが出来ますが、下は普通に断崖絶壁になっているので落ちないよう気をつけなければなりません。
作中と違い、下がダム湖になっているということもないので、落ちたら確実に死んでしまいます。

2016年撮影

この岩場からはパラドールとクエンカの街が一望でき、とても景色が良いので、この場所でもトランペットを構えてみました。気分はもうカナタです。

EDのラストで、隊舎とセーズの街が一望できる広場に1121小隊の面々が揃っているシーンがありますが、この場所が一番それに近いのではないかと思います。
地理的に、完全にモデルになった場所は存在しないはずです。(そもそもダムの場所からして違いますしね)

2023年撮影
ED「Girls, Be Ambitious.」より

この岩場とクエンカの街の間は、とある門で隔てられており、その門の上は小さな展望台になっています。

https://maps.app.goo.gl/QJb7AdgZ9nBAPQweA(GoogleMap)

2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

この門の上から見える景色は、「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト オリジナル・サウンドトラック」のジャケットに使われています。
角度的にはもう少し上から撮ったような構図になっていますが、このあたりに、この門以上に高い場所はありません。機材を伸ばすかなにかして、高さを稼いで撮影したのでしょうか。

2023年撮影
「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト オリジナル・サウンドトラック」より


以上で、舞台探訪・クエンカ編は終了です。
クエンカはほんとうにセーズそのままで、角を曲がればその先にカナタたちがいそうな予感を感じさせてくれるような街です。
まだまだモデルになった場所は残っているので、いずれはその全てをまとめあげたいところです。



■舞台探訪・アラルコン編

お次はアラルコンに向かうことになりますが、高速鉄道に乗れば良いだけのクエンカに比べ、アラルコンへ向かうのは少し難易度が高くなっています。

クエンカからアラルコンに向かうためには、大別して2つの方法があります。
バス&タクシーで向かう方法と、自らレンタカーで向かう方法です。
僕の場合、2016年の探訪時にはバス&タクシーで、2023年の探訪時はレンタカーを利用してアラルコンに向かいました。

アラルコンまでの交通手段については、最後にまとめて書き記しているので、アラルコン行きを考えている方には参考になるかと思います。


セーズの街の外観は、アラルコンがモデルになっています。
アラルコンは三方を川にぐるっと囲まれた特徴的な形をしており、街に入るための道路が一本しかありません。
その道路から見た街の景色が、セーズの外観になっています。
この場所は、第1話でカナタとクラウスが通ってきた道でもあります。

https://maps.app.goo.gl/ds7wfYdG8Xvw25sy5(GoogleMap)

2023年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

ここでカナタが時計を確認するシーンが入り、時刻が13:26であることが判明します。
僕が撮影した写真は、13時半ごろに撮ったものですが、影の伸びる方向が真逆になっています。

僕が行ったのは2023年の9月、ロケハンスタッフが行ったのは2009年3月、もっというならカナタが着任したのは恐らく春頃、という時期の違いはありますが、影の方向が真逆になるほどの違いはないでしょう。
おそらく、作中のセーズと実際のアラルコンでは街の向きが異なっているのでしょう。

2023年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より


・パラドール・デ・アラルコンとアラルコン市街

クエンカのパラドールと異なり、アラルコンのパラドールは作中のモデルとなったような場所は見受けられません。
食事やカフェのみの利用も可能ですが、「舞台探訪」という観点からは訪れる意味は薄いように感じられます。
ですが、それでも機会があれば泊まってみることをオススメします。

https://maps.app.goo.gl/1pLCn1zRMSuYeShUA(GoogleMap)

2016年撮影

古城を改装して建てられたアラルコンのパラドールは、単なるホテルと割り切れないほど魅力に溢れており、これでもかというほど、非日常感を味わえる空間になっているからです。

中庭は簡素な作りとなっており、井戸があるくらいですが、それがまた、なんともいえない落ち着いた空間を作り上げてくれています。
そんな空間の中、塔へと続く階段を上っていった先にパラドールのフロントがあります。

2016年撮影

2016年の探訪時には、ちょっと奮発して「DOBLE SUPERIOR」の部屋に宿泊したのですが、これが大正解。
塔側の部屋が割り当てられ、部屋の内部はいかにも古城といった様相。
すこし手狭な感じはありましたが、それがまた良い方に作用し、古城の雰囲気をダイレクトに感じられる、そんな素敵な空間で過ごすことが出来たのでした。

2016年撮影

こんな天蓋付きのベッドで寝るのは初めてで、そわそわして寝れなかったらどうしよう?とか思いましたが、舞台探訪のために日中動き回っていた僕は、ベッドに入るとすぐに眠ってしまったのでした。

2016年撮影

また、アラルコンのパラドールでは、宿泊者向けに屋上に出られるサービスが提供されており、アラルコン周辺の景色を一望出来るようになっています。これが本当に素晴らしい。

フロントでお願いすれば鍵を貸してくれますので、もし宿泊されるようなら、ぜひとも屋上に出てみましょう。
起床ラッパを響かせるために、時告げ砦を上っていたカナタの気分が少し味わえます。

2016年撮影
2016年撮影

クエンカもそうでしたが、アラルコン周囲には高い建物がまったくないため、気持ちよく朝日を浴びることが出来ます。
日の出の時刻に合わせて屋上に上れば、これまでにないような清々しい朝を迎えることが出来るでしょう。

一方で、夜に屋上に上れば、そこには神秘的な世界が広がっています。
「古城の夜」という、文面だけでワクワクするような景色が目の前に広がっているのですから、これはもう堪ったものじゃありません。

2016年撮影

そんな素敵なパラドールを離れ、アラルコン市街に出かけてみましょう。
アラルコン市街は、適当に歩いているだけで「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」を感じられるクエンカと異なり、舞台と呼べるような場所はほとんどありません。
強いて言えば、EDでカナタが飛び跳ねている階段があるくらいです。
アラルコンの舞台の多くは、市街から少し外れた場所にあります。

https://maps.app.goo.gl/XK3WhbkBpniHLF6u9(GoogleMap)

2023年撮影
ED「Girls, Be Ambitious.」より

アラルコンの街中には、あちこちにDon Juan Manuel(ドン・ファン・マヌエル)という、カスティーリャ王国の摂政で作家でもあった人が残したフレーズが記されています。
これを見た時、僕は第13話で唐突に出てきたテキストっぽいなと思ったのですが、どうでしょうか?今見るとそんなに似ていないですね。

2016年撮影
第13話「空の音・夢ノ彼方」より

ドン・ファン・マヌエルは700年近く前の人物なのですが、そんな昔の人の言葉が今にも伝わっていて、それを知ることが出来るというのは、よく考えてみるとすごいことだとおもいます。

作中でも、カナタが教科書を読もうとしたり、フィリシアが兵隊さんが遺した文章を読み解こうとしているシーンがありました。
何かを伝えようとしたり、それをなんとか受け取ろうと思うのは、どんな時代であっても変わらないのかもしれません。


・カナタが迷子になった小屋

アラルコン市街から出て、しばらく下っていった先にそれは見えてきます。

もうこの景色の時点でワクワクが止まらないのですが、奥に見える小屋こそが、幼いカナタが迷子になっていた場所であり、つまりは「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」という作品の始まりの地なのです。

https://maps.app.goo.gl/4tpBnGNAaVci5eGW7(GoogleMap)

2023年撮影

内部は完全に朽ち果てており、人がいた形跡は何も残されていません。
壁のタイルの剥がれ落ちていますが、その模様は作中のものと酷似していることがわかります。

2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

幼いカナタがうずくまっていた場所も同じように存在しています。
タイルの剥がれ具合なんかも全く同じです。
一部写真のほうが剥がれている範囲が大きくなってしまっていますが、これはスタッフさんたちのロケハン時から、さらに老朽化が進んだことが原因かと思われます。

2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

小屋の中は、朽ちた空間が広がっているばかりでなにもない、というかむしろ地面に穴が空いていたりして危ないだけなのですが、ここで過ごしていると、なんだか心が穏やかになってくるような気がします。
なんでもないところが魅力的に感じられるようになるというのも、舞台探訪の面白いところです。
作中のキャラクターと同じ景色が見られるのですから、どんな場所であろうと楽しくないはずがありません。

2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

イリア皇女殿下の隣にある謎のモニュメントも実在しています。
これの正体が何なのかは不明ですが、連なるように配置されていることから、この溝に何かを渡して水かなにかを流したりしていたのではないかと推測します。
クエンカにも水路や水道橋の仕組みがありましたので、それに関係する何かのような気がしています。

2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

せっかくトランペットを持ってきていたので、イリア皇女殿下と同じ場所で写真を一枚。
日本に帰ってから気が付きましたが、これトランペットの上下が逆になってしまっていますね。
いつか撮り直しに行かないと…。

2023年撮影

2016年時点では小屋に入る方法がまだ存在していましたが、2023年時点では小屋周辺は完全に塞がれており、内部に入ることが出来ないようになっていました。
朽ちた屋根の範囲も広がっていたので、老朽化が原因でしょう。
恐らくですが、もう二度と入れるようにはならないのだと思います。
まあ、もともと入れていたのがおかしいのですが…。


・小屋周辺

小屋の周辺にもモデルとなった場所がいくつか存在しています。

まず目につくのはダムでしょうか。
第1話でシュコが初登場したシーンに出てきている場所です。

https://maps.app.goo.gl/faDVgxsHtru6Fq4m9(GoogleMap)

2016年撮影
第1話「響ク音・払暁ノ街」より

小屋からダムの撮影をするために渡った橋はEDに登場しているものであり、第7話で精霊流シが行われていた場所でもあります。

https://maps.app.goo.gl/H14Mf5479CqKG7JdA(GoogleMap)

2023年撮影
ED「Girls, Be Ambitious.」より

カナタが手をついていた出っ張りもちゃんとあります。
同じように手をついて、カナタ気分を味わうのも悪くないものです。

2016年撮影
ED「Girls, Be Ambitious.」より

2016年時には作中の姿そのままで存在していた橋でしたが、2023年の探訪時には、橋の一部が崩れてしまっていました。
修復されることを祈るのみです。

2023年撮影

僕にとって第7話は、何度も見返すうちに一番評価が変わった印象深いエピソードです。正直にいってしまうと、初めて見たときは、「なんか暗い話だな…」くらいにしか感じられなかったのですが、今ではかなり好きなエピソードに位置づけられています。

誰にも触れられたくない部分はある。
仲間たちだからこそ、優しさが裏目に出ることもある。それでも伝えようとするカナタ。
終わってしまったかもしれない世界で、生きる意味を自分で見つけるというフィリシア。
リオ、クレハ、ノエルにもそれぞれ抱えている思いはある。
そんな彼女たちの思いを乗せて、精霊流シが行われる。

弱さと強さを感じる、屈指の名エピソードだと思います。

2023年撮影
第7話「蝉時雨・精霊流シ」より
2023年撮影
第7話「蝉時雨・精霊流シ」より

ここも夜に来るとまた違った雰囲気を味わえたのでしょうが、このあたりは夜になると真っ暗になってしまうため、あまりオススメ出来ません。
昼間のうちに探訪しておくのがよいでしょう。


この橋を渡った先の斜面をのぼっていくと、見張り台のような塔があらわれます。
この斜面はロクに道が整備されておらず、ごろごろとした砂利道をのぼっていく必要があるため、転ばないように注意が必要です。

この塔は第13話の冒頭にチラッと出てきています。
上までのぼれたら面白かったのですが、内部に入ってみたところ、足場になりそうな場所はすべて取っ払われており、のぼれないようになっていました。残念。

https://maps.app.goo.gl/YJd4TPnnmku111is7(GoogleMap)

2016年撮影
第13話「空の音・夢ノ彼方」より


・第13話に出てくる塔

アラルコン市街に戻り、街から出る方向に歩を進めると、大きな塔が見えてきます。
この塔の周辺には、第13話で登場する場所が集中しています。
「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」という作品は第13話をもって完結となっていますが、この第13話は最終話でありながら、新たな始まりを、これからを予感させてくれるエピソードになっています。

そんな素敵な第13話の舞台はやはり素敵な場所であり、まるでそこにカナタやリオがいるのではないかと錯覚するほどの再現度を誇っています。
この場所で過ごす時間はきっと素晴らしいものになることでしょう。

https://maps.app.goo.gl/L4GcKqCD5yWufML26(GoogleMap)

2016年撮影
第13話「空の音・夢ノ彼方」より

作中でカナタが運転していた道は、アラルコンから街の外へと出ていく道となっています。
ここを車で通り抜けるのは実に気持ちが良いものです。
もちろん、歩いてここまで向かうことも出来ます。

2016年撮影
第13話「空の音・夢ノ彼方」より

この門は、塔をぐるりと囲む城壁とそのまま繋がって建てられています。
門を通り抜ける際にちらりと見上げてみると、作中と同じ景色を見ることが出来ます。その再現度には驚くばかりです。

2016年撮影
第13話「空の音・夢ノ彼方」より

「リオ先輩、みーつけた」

初めてこの場所に来た時、思わずカナタの声が脳内に響き渡りました。
それくらい、何もかもが作中のままでした。
広がる光景はもちろんのこと、漂う空気感や流れる時間まで、アニメの中だけで感じていたはずのあれこれが、圧倒的なリアリティを伴って目の前に現れたのです。

このあと、興奮しまくった僕が、カナタと同じように階段をのぼり、リオと同じように佇んだのは言うまでもありません。

2023年撮影
第13話「空の音・夢ノ彼方」より

世界の形やリオの目標が明かされたこの場所は、モデルとなったアラルコンの景色のほうが贅沢な感じがします。
写真に写っている範囲だけでもパラドールを含むアラルコン市街の全景が拝めますし、覗き込むように下を見れば、フカル川の美しい水をたたえたダムを楽しむことが出来ます。
作中のリオと同じポーズで落ち着いた時間を過ごすのもよいでしょう。

2016年撮影
第13話「空の音・夢ノ彼方」より

EDにもこの場所が出てきていましたね。
カナタとリオが城壁の上を歩いていますが、この向こう側は急斜面になっており、かなり危険な場所です。なかなか肝が座っています。
さすがにこれは真似できなかった。

ED「Girls, Be Ambitious.」より

制作陣はこの場所に思い入れでもあるのか、こんな場所までキッチリと作中で描かれています。

過去にはここになにがあったのでしょう。
今となってはもう想像することしか出来ませんが、ハッキリとは分からずとも、ここに何かがあった証は今でもちゃんと残されているのです。

2016年撮影
第13話「空の音・夢ノ彼方」より

アラルコンを出て、この塔に向かうまでを動画に収めておいたので共有しておきます。
雄大なアラルコンの景色が伝わるかと思います。

第13話でリオが夢を語った場所もこの塔の近くです。
実際のアラルコンでも、同じ場所がだだっ広い原っぱになっています。
作中と同じ構図で眺めようと思ったら、パラドールの屋上から眺めるのが良いでしょう。

朝日を浴びながら、夕日を眺めながら、月明かりを感じながら、刻々と変化していく景色を味わえるのはアラルコンまでたどり着いた者の特権です。
そんな穏やかに流れる時間の中で、自分の夢について考えてみるのもまた一興。
舞台探訪は、己を見つめ直す絶好の機会にもなり得るのです。

2016年撮影
第13話「空の音・夢ノ彼方」より


以上で、舞台探訪・アラルコン編は終了です。
クエンカに比べると、到達するまでの難易度が高い街ではありますが、苦労してでも訪れる価値のある素敵な街です。
非常に静かで落ち着いた街でありながら、街中に猫のグラフィティを描く洒落っ気もある、そんな楽しい街でした。

2023年撮影

残念ながら、カナタが迷子になっていた小屋にはもう入ることが出来ませんが、それを差し引いてでも魅力的なスポットが多い場所です。
舞台探訪を考えているならば、ぜひともアラルコンまで足を伸ばしてみることをオススメします。



■舞台探訪・番外編

「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の舞台として有名なのはクエンカとアラルコンですが、それ以外にも舞台と呼べる場所があります。
クエンカやアラルコンに比べると地味かもしれませんが、ここで紹介する場所でも、きっと「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」を感じることが出来るでしょう。


・セルバンテスの家

ロケハンスタッフたちも訪れたという、アルカラ・デ・エナーレスにある「セルバンテス生家博物館」には行っておきたいところです。(ロケハンレポートVol.2参照)

ロケハンレポートVol.1

ロケハンレポートVol.2

「セルバンテスの家」で検索するとバジャドリードにある「セルバンテス邸宅博物館」が引っかかったりしますが、スタッフさんたちが訪れたのは「セルバンテス生家博物館」の方です。注意してください。

https://museocasanataldecervantes.org/(公式サイト)

https://maps.app.goo.gl/j9UkQcvhCUL2TRT1A(GoogleMap)

ユミナたちが暮らす修道院の内部は、ここがモデルになっています。

なぜか2016年当時の僕の頭からは「同じ画角で撮る」ということがすっぽ抜けていたらしく、一目でモデルになっているかどうか判断するには迷うかもしれませんが、井戸の形状や床の模様が同じなのでモデルになっていると断言できます。

2016年撮影
第6話「彼方ノ休日・髪結イ」より

上の写真では見切れてしまった2階部分もちゃんとあります。

2016年撮影

この「セルバンテス生家博物館」は単に修道院内部のモデルと言うだけでなく、「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」という作品の土台を担っている場所の一つです。
監督のインタビュー(前編)でも触れられているドアノブが真ん中に付いている扉もここで見ることが出来ます。

アニメでも箱庭は作らない 「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」監督に聞く【前編】

つながる世界、アニメで描く 「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」監督に聞く【後編】

その他、調度品も作中に登場したものに雰囲気が似ているものが数多く置かれています。
そのまま同じ形状のものを見つけることは出来ませんでしたが、ここに置かれている家具類が参考にされたであろうことは想像できます。

2016年撮影

こうやって真ん中だけ開く窓は、フィリシアの部屋と同じですね。
このあたりの文化を下敷きに、「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」という作品の土台が構築されていったのでしょう。

2016年撮影

アルカラ・デ・エナーレスまでは、マドリードから電車で1時間ちょっとくらいで行けますので、帰国前に余裕があれば訪れてみるのも良いかと思います。


・シウダエンカンターダ

もしレンタカーを手配したなら、シウダエンカンターダに行くことを選択肢に入れても良いかもしれません。
ここはおそらく、第5話「山踏ミ・世界ノ果テ」でカナタたちが"遠足"をおこなった場所のモデルになっています。

https://www.ciudadencantada.es/es(公式サイト)

https://maps.app.goo.gl/dG9eLSqnLa5UXyQG7(GoogleMap)

公式サイトを確認してもらえば一発で分かるかと思いますが、岩の形が特徴的で、カナタたちが歩いた場所にあったものとそっくりです。


公式サイトより
第5話「山踏ミ・世界ノ果テ」より
第5話「山踏ミ・世界ノ果テ」より

自身の目でどんな場所か確認してみたかったのですが、アラルコンでゆっくりしすぎてしまったばかりに、ここまで行く時間を確保できず、泣く泣く見送ってしまいました。
クエンカからは車で30分程度ですが、アラルコンとは真逆の方向にあるため、一日で両方回ろうと思うなら、スケジュール管理が重要になります。

この場所はただの公園というわけではなく、チケットを購入して定められたコース(約3km)をまわる形式をとっているため、明確に入場時間が決められています。
季節によって変わるのですが、だいたい夏は19:30まで、冬は16:30まで、にいなっているようです。かなりバラつきが大きいので、探訪を考えているなら事前に時間確認が必須です。
ちなみにチケット売り場は終了時刻の1時間30分前に閉まるようです。
入場料は6ユーロです。(2024/04現在)


・グスタフ・クリムトの作品たち

これは舞台探訪に分類していいものか迷いましたが、やはりOP映像もひっくるめて「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」という作品であることは間違いないため、しれっと入れておくことにします。

あの印象的で美しいOP映像は、オーストリアの画家であるグスタフ・クリムトの作品をオマージュしたものです。
モデルとされている作品は下記の5作品です。(カッコ内は所蔵場所)
・ベートーヴェン・フリーズ(オーストリア、セセッション館
・水蛇Ⅰ(オーストリア、ベルヴェデーレ宮殿
・医学(焼失、習作がオーストリア、アルベルティーナ美術館に現存)
・悲劇(オーストリア、ウィーンミュージアム
・金魚(スイス、ゾロトゥルン美術館
オーストリアの画家だけあって、そのほとんどをオーストリア・ウィーンで見ることが出来ます。

2023年のスペイン探訪計画時に、「せっかくヨーロッパまで行くんだから、ついでにクリムト作品も見に行ってみるか」と急遽思い立ち、実際にオーストリア・ウィーンまで行ってきたので、ここではその時の写真を紹介します。
ウィーンからバルセロナまでは飛行機で片道2時間半程度なので、旅程に余裕があれば組み込んでみるのもアリだと思います。

別作品ではありますが、ウィーンの街並みは「GOSICK -ゴシック-」の舞台の一部となっているので、作品を知っているようであれば、さらなる舞台探訪にのめり込むこともできることでしょう。
僕の場合は、さらに「ARIA」の舞台が見てみたいと、ヴェネツィア探訪を組み込んだため、ウィーン→ヴェネツィア→スペイン、と大変欲張りな舞台探訪の旅となりました。
せっかく遠出するなら他の作品の舞台も楽しんでやろう!の精神を持っていると、行動の幅が広がって、新しい楽しみ方が見えてくることもあるかと思います。

ウィーン・シェーンブルン宮殿(2023年撮影)
ヴェネツィア・サンマルコ広場(2023年撮影)

ちなみに、日本では2019年に東京と名古屋でクリムト展が開催され、モデルとなった作品を見ることが出来ました。
最大の見どころは「ベートーヴェン・フリーズ」の複製画で、これはオリジナルの作品を原寸大で複製したものとなっており、会場でも圧倒的な存在感を誇っていたのを覚えています。
「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」ファンからすれば、見ているだけで頭の中で「光の旋律」が流れ出す、そんな特別な作品でもあると思います。
また日本でも展示会をやってもらいたいものです。


そんな「ベートーヴェン・フリーズ」は、ウィーンにあるセセッション館の地下に壁画として展示されています。
セセッション館はウィーンの中心部にあり、アクセスも良いのでウィーン観光に組み込みやすいです。

https://maps.app.goo.gl/E26dLKURqioxFGW77(GoogleMap)

2023年撮影

地下に降りると、まるまる一部屋つかって展示されている「ベートーヴェン・フリーズ」がお出迎え。
部屋を囲むように展示されている「ベートーヴェン・フリーズ」は、あわせて34mにもなる3枚の壁画で構成されており、それぞれ、「幸福への憧れ」(左)、「敵対する勢力」(中央)、「歓喜の歌」(右)が描かれています。

2023年撮影

OPでリオとフィリシアが取っているポーズは、左の壁「幸福への憧れ」に描かれている騎士の上にいる女性がモデルになっています。
背景の装飾の一部には、このあと紹介する「水蛇Ⅰ」が使われています。

2023年撮影
OP「光の旋律」より

カナタ、クレハ、ノエルのポーズは、中央の壁「敵対する勢力」に描かれている怪物テューポーンの左側の女性たちがモデルです。

右側の女性たちは、それぞれ赤毛が「淫蕩」、金髪が「肉欲」、太っちょが「不摂生」の擬人像となっています。
少し離れたところにいる頭を抱えた女性は、そのまま「心を責めさいなむ苦悩」が表現されています。
壁画の方では裸で描かれている女性たちですが、さすがにTV放送もあるOP映像の方はそのままというわけにはいかなかったのか、みんな服を着ていますね。

2023年撮影
2023年撮影
OP「光の旋律」より

右の壁「歓喜の歌」の左側がモデルになっているのは分かりやすいです。
壁画の構図そのまま、カナタたちが描かれています。
この「歓喜の歌」は歌や音楽が人々を救済する、というストーリーになっています。なんとも示唆的ではありませんか。

2023年撮影
OP「光の旋律」より

OP映像の最後と壁画の最後はリンクしています。
抱擁する男女の絵はありませんが、これはOP映像には不要でしょう。
それがなくとも、十分以上に美しい映像に仕上がっています。

2023年撮影
OP「光の旋律」より

動画も撮影しておいたので載せておきます。
一枚一枚の画像で見るのもよいですが、やはりこの作品の魅力は一連の壁画として鑑賞するところにあると思うので、少しでも雰囲気が伝われば嬉しいものです。

ウィーンまで行ったにも関わらず、実際に見た作品は「ベートーヴェン・フリーズ」だけなので、他のシーンについてはインターネット上で公開されていた画像を引っ張ってきています。
ウィーン観光が楽しすぎて美術館を巡る時間が全く足りませんでした。
他の作品は、いつかウィーン再訪して見てやろうと思います。
何が何でも全部やり切る、というのではなく、ちょっと楽しみを残しておくというのもきっと大事なことです。


凛々しい表情のリオが印象的なシーンは、「悲劇」がモチーフとなっています。

悲劇(グスタフ・クリムト、Google Arts & Culture
OP「光の旋律」より

煽情的な1121小隊の皆が流れるように現れるシーンは「金魚」がモチーフ。
本編とは異なり、誘うような表情を魅せるカナタがなんとも艶めかしいですね。

金魚(グスタフ・クリムト、Google Arts & Culture
OP「光の旋律」より
OP「光の旋律」より

こちらは少し分かりづらいですが、OP映像にちょくちょく登場する草模様は「水蛇Ⅰ」から取られています。
OP映像の冒頭にもこの模様が出てきます。

水蛇Ⅰ(グスタフ・クリムト、Google Arts & Culture
OP「光の旋律」より

「医学」は焼失してしまった作品ですが、白黒写真と習作が残されており、それをもとにAIによって着色修復されたものが公開されていましたので、これを参考にします。
左上に描かれている女性とカナタのポーズが同じです。
背景は「ベートーヴェン・フリーズ」から。

医学(AIによる着色修復)(グスタフ・クリムト、Google Arts & Culture
OP「光の旋律」より

いつかはこれらの絵も拝んでみたいものです。
「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」を通じて、自分の世界がどんどんと広がっていくのを感じます。


余談ですが、「ベートーヴェン・フリーズ」が展示されているセセッション館の近くにはクリムトも通ったと言われているカフェ「Cafe Sperl(カフェ シュペール)」があります。
店内は落ち着いた雰囲気で、食事も美味しかったので、余韻に浸りながら過ごすにはちょうど良い場所かと思います。

2023年撮影
2023年撮影


舞台探訪については以上となります。
僕が知っている範囲で、モデルになった場所を一通り書き出してみましたが、他にも知っている方がいらっしゃるようでしたら、ぜひ(@ktym_333)までご連絡いただければと思います。
実際にその場所まで行って確認してきますので。



■舞台探訪を考えている方へ

ここでは、実際に舞台探訪を考えている方に向けた情報をまとめています。
あくまで僕はこうしました、程度の情報ではありますが、なんらかの参考にはなるかと思います。

当然の話ではありますが、舞台探訪へ行くと決めたならホテルや交通手段の予約は早めに済ませておいたほうが良いです。直前になればなるほど選択肢は少なくなってしまったり、費用が高くついたりするため、どうしてもここは外せない!ってところがある場合は特に早めに済ませておきましょう。


・パラドールの予約

せっかく「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の舞台に行くのですから、1121小隊が駐屯する時告げ砦のモデルとなったクエンカのパラドールや、美しいアラルコンのパラドールに泊まりたい!という方は多いのではないかと思います。
ちなみにアラルコンのパラドールは部屋数が少なく、なんと14部屋しかありません。早めに予約を済ませておいたほうが良いでしょう。
パラドールの予約自体はBooking.comやExpediaなどからも行えるようですが、僕はパラドールの公式サイトから予約していきました。
なぜならその方がなんとなく気分が良いからです!

Parador de Cuenca(クエンカのパラドール)https://paradores.es/es/parador-de-cuenca

Parador de Alarcon(アラルコンのパラドール)https://paradores.es/es/parador-de-alarcon

残念ながら日本語表記はありませんが、英語表記には出来ますし、サイトのデザインもシンプルなので予約はそう難しいものではありません。
細かい流れは省略しますが、最初に日程と人数を選び、部屋のグレードとプランを決めたら、宿泊者情報を入力するだけです(途中、パラドールのメンバーか聞かれますがスキップで良い)。
最後の宿泊者情報ページにはコメント欄が設けられており、ここに希望を書いておくと聞いてもらえたりします。
2023年にクエンカのパラドールを予約した際にコメント欄に以下の文章を記載していたところ、

Si es posible, quiero una habitación con vistas a la ciudad.
(できれば、街の景色が見える部屋がいい。)

街の景色が見える部屋に案内してもらうことが出来ました。希望を聞き入れてくれたのか、たまたま街の景色が見える部屋が割り振られたのか、定かではありませんが…。
街の反対側の部屋だったりすると街の外に広がる崖しか見えない、なんてこともあるので(それはそれで絶景なのですが…)、街の雰囲気を味わいたいならコメント欄に希望を書いておいてもよいかと思います。


・クエンカまでの交通手段

クエンカに行くために、一般的にはRenfe(スペイン国鉄)の高速鉄道AVEを利用することになると思います。
他の鉄道会社を使う場合は、自身でチケットの内容をよく確認しておく必要があります。

各種チケットの予約は日本からでも出来るため、旅程が決まったら早めにチケットを確保しておきましょう。
早期に予約したほうがチケットが安くなるというメリットがあったりもします。
それぞれの街からクエンカへ鉄道で向かう場合のルートを記しておきます。


・バルセロナからのルート

バルセロナから向かう場合、「Barcelona-Sants(バルセロナ・サンツ駅)」が出発点となります。サンツ駅にはバスも含め複数の路線が乗り入れているため、アクセスは比較的容易かと思います。
空港から直接向かうのであれば空港鉄道で向かうことも出来ますが、バルセロナ観光をしてからクエンカに向かうことを考えているのなら、バスか地下鉄でサンツ駅に向かうことになるでしょう。
地下鉄の場合は「Sants Estació(サンツ駅)」から少し歩いて「Barcelona-Sants(バルセロナ・サンツ駅)」に向かいます。

2023年撮影

サンツ駅からクエンカに向かう場合、マドリード経由かバレンシア経由で向かうことになります。
Renfe(スペイン国鉄)のサイトでチケットを探すとマドリード経由ばかり出てくるのでほとんどの場合でマドリード経由になるはずですが、2016年にサンツ駅現地でチケットを購入した際には、なぜかバレンシア経由のチケットを案内されました。

当時は違いがよくわかっていなかったのですが、いまではマドリード経由のほうが良いと断言できます。
なぜなら、バレンシア経由のほうが時間がかかる挙げ句(乗り換え待ち時間にも寄るが、バレンシア経由は5時間程度、マドリード経由は4時間程度)、乗り換えが死ぬほど分かりづらいからです。初見ノーヒントだと絶対に乗り換え出来ないだろってレベルで分かりづらい。
当時の乗り換え手順を振り返ってみましょうか。

1.バルセロナから列車に乗りバレンシアを目指す。
2.バレンシア(北駅)に着いたら一度改札を出る。
3.近くのバス乗り場からバスに乗る(無料)。
4.2,3分ほどで別の駅舎(ホアキン・ソロージャ駅)へ到着。
5.バレンシアから高速鉄道AVEに乗ってクエンカを目指す。

こんなん分かるはずがない。
普通の列車から高速鉄道に乗り換える関係でこんな手順になっていのだと思いますが、それにしたって乗り換えでバスが登場するのはハードだと言わざるを得ません。
2016年当時は、ありがたいことに明らかに旅行者の僕を気遣ってくれた車掌さんの粋な計らいで、他の乗客の方に連れて行って貰う形でなんとか乗り換えをクリアすることが出来ましたが、この気遣いがなければ乗り換えに失敗した僕はバレンシアで途方に暮れていたことでしょう。
バレンシア経由は海が見たいとか、のんびり旅をしたいとかそういった上級者向けのルートになると思います。

とはいえ、マドリード経由は乗り換えが楽かと言うとそうでもありません。
さすがにバレンシアほど複雑ではないのですが、単純に距離が遠く、フロアが違っている上に案内も不十分なので、同じ駅舎内のはずなのに結構時間がかかるからです。
2023年の探訪時には15分の乗り換え時間でチケットを取っていたのですが、移動は小走りで、駅員に乗り換え先はどこか聞きながら進んだにも関わらず、列車に乗り込めたのは時間ギリギリという有り様でした。
余裕を持って30分ほど乗り換え時間を確保したほうが良いでしょう。

マドリードに行くまでは、サンツ駅で案内される乗り場から電車に乗るだけです。高速鉄道は専用のホームがあり、場所も分かりやすいので迷うことはないと思います。
Renfeでチケットを予約している場合、購入時に登録したメールアドレス宛にチケットのpdfが送られてきているはずですので、それを印刷しておくと手続きがスムーズです。
改札ではチケットに記載されているQRコードを見せる必要があります。また、高速鉄道利用時には乗車前にセキュリティチェックがありますので、時間には余裕をもって駅に着くようにしましょう。
新幹線と異なり、ギリギリに行ってそのまま乗れるということはありません。


・マドリードからのルート

マドリードから向かう場合、「Madrid Chamartín(マドリード・チャマルティン駅)」が基本的な出発点となります。
基本的、と書いたのはバルセロナからの乗り換えの場合は「Madrid Atocha(マドリード・アトーチャ駅)」が出発点となる場合もあるからです。

このあたりは少し複雑なのですが、ヨーロッパ各国で鉄道のオープンアクセス化が進められた関係で、これまでRenfe(スペイン国鉄)のAVEだけだったスペインの高速列車市場に、新たにRenfe以外の鉄道会社が参入してきましたという背景があります。
2021年にはフランス国鉄のOUIGOがサービスを始め、2022年にはイタリアの鉄道会社とスペインの航空会社が立ち上げたiryoが走り始めました。どちらも鉄道版のLCCみたいなものです。
また、これに対抗しRenfeもAVEより低価格帯のAvloというブランドを設定しています(Renfeのページでチケット検索するとAVEよりも安いAvloも表示される)。
各鉄道会社のチケットは下記のホームページから購入することが可能です。

Renfe
https://www.renfe.com/es/es

OUIGO
https://www.ouigo.com/es/

iryo
https://iryo.eu/es/home

※どの鉄道会社も「マドリード→クエンカ」の路線検索は出来たが、「バルセロナ→クエンカ」の路線検索ができたのはRenfeだけで、OUIGOとiryoは「バルセロナ→クエンカ」の路線検索は出来なかった。
ただし、OUIGOとiryoも「バルセロナ→マドリード」の路線検索は出来たので、「バルセロナ→マドリード」「マドリード→クエンカ」の2枚に分けてならチケットを取れそう。(2024/04現在)

鉄道の運行会社が増えた関係で、もともと使われていたアトーチャ駅はキャパオーバー。
これまでアトーチャ駅発着となっていたバレンシアーマドリード間(クエンカもここに含まれる)の高速列車は、チャマルティン駅発着に変更となりました。

そのため、現在はRenfe、OUIGO、iryoの各サイトで「マドリード↔クエンカ」の路線検索を行うと、いずれもチャマルティン駅発着のチケットばかりが表示されます。
ただし、Renfeのサイトで「バルセロナ→クエンカ」の路線検索を行った場合には、アトーチャ駅で乗り換えるチケットが表示されることもあるので、まだ一部ではアトーチャ駅を利用しているようです。2023年の探訪時に購入したチケットはこのアトーチャ駅で乗り換えを行うものでした。

一点注意点があるとすれば、バルセロナからアトーチャ駅に着いてから、チャマルティン駅に移動してチャマルティン駅からクエンカに向かうルートも表示されることがある点です。
チャマルティンーアトーチャ間の移動は簡単らしいのですが(Renfeで13分らしい)、乗り換えのために別の駅に移動するのも面倒なので、同じ駅内で乗り換えられるチケットを選んだほうが良いかと思います。

マドリードからクエンカに向かうことだけを考えれば、どの鉄道会社を選んでも乗り換えなく一時間程度で到着するので、値段や運行時間を考慮してチケットを取ればよいかと思います。
ただし、OUIGOやiryoを利用した場合、通れるルートやホームが違ったという話も聞きますので、迷っているならRenfeでチケットを取るのが無難でしょう。

余談ですが、2016年にバレンシアで乗り換えのために乗ったバスはどうやらRenfeのサービスだったらしく、OUIGOやiryoを利用した場合は乗車出来ないようです。


・バスでクエンカに向かう場合

一応バスでクエンカに向かうことも可能ではありますが、利便性や所要時間を考えると鉄道で向かうほうが都合が良いことが多いです。それに「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の始まりを考えるとやはり舞台には鉄道で向かうべきだろうという気持ちもあります。(AVEは作中に出てきた鉄道と似ても似つきませんが…)

もしバスで移動するとすればマドリードからクエンカに向かうルートを選ぶことになるでしょうか。一応ほかの都市からクエンカ行きのバスも出ているようですが、本数が少なかったり使い勝手が悪いようなのでここでは省略します。
マドリードからクエンカに向かうバスに乗る場合は以下のサイトからバスについて調べることが出来ます。だいたい片道2時間半、料金は15ユーロ前後のようです。

https://www.avanzabus.com/



・アラルコンまでの交通手段

クエンカからアラルコンに向かうためには、バス&タクシーで向かう方法と、レンタカーを借りて向かう方法があります。

バス&タクシーを利用する場合は、クエンカバス停からバスに乗り、まずはMotilla del Palancar(モティリャ・デル・パランカール)を目指すことになります。
なぜならアラルコンまで直通の交通手段は存在せず、このモティリャ・デル・パランカールが、公共交通機関で行ける、アラルコンに一番近い街だからです。
そこからはタクシーに乗り換えることになりますが、流しのタクシーなんてものは基本的にいないため、タクシー会社に電話するなりして自分でタクシーを確保する必要があります。
そこが唯一の鬼門ではありますが、タクシー確保さえなんとか出来れば、他は特に負担になるようなこともないため、気楽にアラルコンへ向かえるかと思います。レンタカーに比べて費用も抑えられます。

レンタカーを借りて自ら運転していく場合は、ある意味でシンプルです。
クエンカ・フェルナンド・ゾベル駅やクエンカの街中にレンタカー屋があるので、そこでレンタカーを借りて運転していくだけです。
ただし、当然ではありますがレンタカーの手配から車の運転、返却前のガソリン補給まで自分でやる必要があるため、バス&タクシーに比べると負担はかなり大きいです。
ですが、それを差し引いてもバスの時間的制約から開放されるメリットはかなり大きいと感じました。
あと何よりも、アラルコンのあの道を、カナタやクラウスが運転していたのと同じあの道を、自身でも運転できるというのは地味に嬉しいポイントではないかと思います。
少なくとも僕は、すさまじい充足感に包まれながらあの道を運転してきました。

それぞれの方法について詳細を記しておきますので、自分に合った方法を選んでいただければと思います。


・バス&タクシーで向かう場合

クエンカからバス&タクシーで向かう場合、出発点となるのはクエンカバス停です。
バス停とは言ってますが、実態はバスターミナルのようなもので、建物内には複数のバス会社のカウンターが設置されています。

2016年撮影

ここで、まずはMotilla del Palancar(モティリャ・デル・パランカール)行きのバスを確保する必要があります。
ただし、ここで一つ注意点があります。
1日2本程度とバスの本数がかなり少ないことに加え、なんと、土曜日はそもそもバスが運行していないのです。

インターネットとは大変便利なもので、そんな田舎のバス路線のチケットも購入出来るようになっています。
下記サイトからクエンカ↔モティリャ・デル・パランカールの路線が検索できるようになっていますので、事前に目当ての日程にバスが運行しているか確認しておきましょう。

https://www.rubiocar.com/es/comprar-billete-bus

ちなみに2016年時の僕は、「まあ田舎の路線やし現地で当日チケット購入でも大丈夫やろ」と高をくくっていたところ、当日がまさかの土曜日で、そもそもクエンカからモティリャ・デル・パランカールに向かうバスが一本も存在せず、泣く泣くクエンカからアラルコンまでタクシーで向かうハメになりました。
ほんと事前に調べておくというのは大事なことですね。

クエンカを出たバスは、一時間ほどでモティリャ・デル・パランカールのバスターミナルに着くはずですが、僕は乗ったことがないのでなんともいえません。

https://maps.app.goo.gl/Ab7KtT1YpEqEgcnq8(GoogleMap)

2016年撮影

そして、ここで最難関であるタクシーの確保を行う必要があります。
モティリャ・デル・パランカールのタクシー会社の情報があったので載せておきます。

https://motilladelpalancar.net/transportes/6

とはいえ、ほとんどの方にとって自分でタクシーを呼び出すなんてのは、高難易度ミッションでしょうから、現実的なところでは、「バスターミナルにいる人にお願いして代わりに呼び出してもらう」というところに落ち着くかと思います。
そういったことも難しいという場合は、いっそ僕のようにクエンカからアラルコンまで直接タクシーで向かってもよいでしょう。

クエンカでタクシーを確保する必要がある点は変わりませんが、クエンカで宿泊していたようなら、ホテルの人にタクシーを呼び出してもらえますし、難易度はかなり下がるかと思います。
僕の場合は、すでにチェックアウトを済ませた後だったので、そのへんの通行人にタクシー乗り場はどこかと聞いて(実際は「taxi!taxi!」と連呼しただけ)、案内してもらった場所からタクシーに乗ってアラルコンへと向かいました。そういう強引なやり方もあります。


アラルコンからクエンカに戻る場合は、この逆をすることになります。
もしパラドールに宿泊しているなら、お願いすればタクシーを呼んでくれます。
日帰りの場合は、連れてきてくれたタクシーの運転手さんに「xx時に戻ってきてくれ」とお願いすることになると思います。
いずれにせよ、タクシーでモティリャ・デル・パランカールまで戻りましょう。

そこから先は、バスでクエンカに帰るだけです。

2016年撮影

モティリャ・デル・パランカールからアラルコンまでのタクシーさえ確保できれば、そう難しいルートではないと思います。
タクシーの確保が難しいと思うなら、いっそクエンカからアラルコンまでタクシーで向かうのもアリですしね。
バスの時刻に制約を受ける以上、日帰り観光が難しいところはありますが、宿泊する予定ならそこもあまり気にしなくてよさそうです。


・レンタカーで向かう場合

レンタカーで向かう場合は、国外運転免許証の準備が必須です。
また、日本の免許証とパスポートも必要になるため、これらは忘れないようにしましょう。

レンタカーの予約自体はネット上で行えるので簡単なものです。
僕は下記のサイトからレンタカーを予約していきました。日本語表記ができて分かりやすいです。

https://www.rentalcars.com/ja/

受け取り場所をクエンカにして検索すると、クエンカ近辺のレンタカー屋が複数表示されます。クエンカ市街に近いものから少し離れたものまで検索結果に出てくるかと思いますが、オススメは「CUENCA FERNANDO ZÓBEL(クエンカ・フェルナンド・ゾベル駅)」で受け取れるレンタカーです。
このあたりは旅程と相談になりますが、クエンカ→アラルコンの順に舞台探訪を済ませ他の都市へ向かう場合、駅で車を返してそのまま鉄道に乗ると動きに無駄がないからです。また、フェルナンド・ゾベル駅とクエンカ旧市街は直通のバスが出ているため、旧市街から離れている割にアクセスしやすいのも利点です。
実際、僕もクエンカとアラルコンを満喫した後は、クエンカ旧市街には戻らず、そのまま駅で車を返して帰国のためにマドリードへと向かいました。

フェルナンド・ゾベル駅でレンタカーを借りる場合、店舗は駅舎内の分かりやすいところにあるので、迷うことはありません。
写真の左側、「enterprise」と書かれた看板のある場所がカウンターです。

2023年撮影

ネットで予約を済ませているのだから、後は受け取るだけだと思っていたのですが、カウンターでの手続きの際にちょっとしたトラブルが2つありました。同じ目に会う方がいないとも限らないので、共有しておきます。

1つ目は、完全に僕が悪いのですが、予約の時間から遅れてカウンターに行ったら誰もいなかった、というトラブルです。
忘れ物を取りに戻ったために、予約の時間から30分ほど遅れて到着してしまったところ、店舗の扉は固く閉ざされている状態で、ノックをしても誰も出てきてくれませんでした。
どうしたものかと途方に暮れていると、一枚のプレートが目に入りました。

2023年撮影

どうやら、フェルナンド・ゾベル駅の店舗は、常に人がいるわけではないらしく、用事がある際は電話で店員さんを呼び出して対応してもらう必要があるようです。

ですが、ここで一つ困ったことがあります。
電話で呼び出すって、どうやって呼び出せばいいの…?
舞台探訪に向け、少しはスペイン語の勉強をしてきましたが、電話口で意思疎通を図るレベルには到底達していません。
翻訳アプリを使えばこちらの意思を伝えることが出来るかもしれませんが、それでも相手から質問を返されたりすると途端に困ってしまうことでしょう。かといって、電話をしないまま店員さんが来るのを待ち続けるというのも現実的ではありません。どうしたものか…。

結局、僕が取った解決策は、「隣の売店にいたおばちゃんにお願いして代わりに電話をかけてもらう」というものでした。
おばちゃんは非常に気さくな方で、僕がお願いをするとすぐにレンタカー屋に電話をして、「xx時に帰ってくるって」と店員さんが来る時間を教えてくれました。
僕は覚えたてのスペイン語で「Muchas gracias!ムーチャス グラシアス(どうもありがとう!)」と連呼し、お礼代わりにあれこれおやつなんかを購入して、売店を去ったのでした。
改めてありがとう!売店のおばちゃん!


もう一つのトラブルは、無事に店員さんがやってきて、レンタカーの手続きに入ってから起こりました。

ネットで予約済みの旨を伝え、日本の免許証、国外運転免許証、パスポートを提出したところ、店員さんが手続きに入ってくれたのですが、どうにも雰囲気がおかしい。
僕の提出書類をまじまじと見つめ、なんだか難しい顔をしているのです。
そしてとうとう、手が止まったかと思うと、

「この書類では車を貸すことは出来ない。スペインで有効な免許証が必要だ」

とか言い出すのですから、たまったものではありません。
とはいえ、このときの僕はまだ冷静でした。
国外運転免許証があればジュネーブ条約加盟国(スペインも含まれる)で運転出来ることは知っていたからです。
「この書類がそれに相当します」
と、改めて国外運転免許証を差し出し、店員さんに確認を促します。
ですが、

「こんな書類は見たことがない。これは使えない」

とまさかの返答。
僕としても、見たことがないから使えないなんて理屈を認めるわけにはいかないため、「書類をよく読んでくれ。有効なはずだ」と返しますが、

「私は英語が読めない。なんと書いてあるか判断できない」

こんな絶望的な返答があるでしょうか。
国外運転免許証にはスペイン語で記載されたページもあるため、そこを読むようにも促しましたが、結局、「このページには有効期限に関する記載がない」と言われ、認めてくれない始末。(有効期限に関する記載は英語表記のみで、確かにスペイン語では表記されていなかった)

なんということでしょう。
ここでは国際ルールよりも店員さんのルールが優先されてしまうのです。
必要書類を揃えたからといって車を借りられると思ったら大間違いなのです。

このトラブルについては結局、マドリードにいるという上司に確認してもらい、書類が有効であると認めてもらえたのですが、まさか国際的に有効なはずの書類が認めてもらえないなんてことがあるとは思いもしませんでした。
おそらくですが、クエンカでレンタカーを借りようとする日本人、なんて存在が相当少ないんでしょうね。

今回の件で、日本の国外運転免許証はもう店員さんが”見たことがある書類”になったはずなので、今後レンタカーを借りる方がいても大丈夫かと思いますが、もしまた「見たことがない」とか言われたら、とっとと上司に確認してもらいましょう。
それが一番スムーズです。


余談ですが、レンタカー予約時にCitroenの電気自動車を選択していたところ、

レンタカー予約内容

なぜか日産のガソリン車が出てきました。

実際に借りたレンタカー

何一つあってなくてもはや笑うしか出来なかったのですが、日産の車は乗り慣れていたので、結果的に良かったのかもしれません。
手続き時に「もっと良い車にしておいたよ!」と言われたので、何が出てくるんだろうかとワクワクしていましたが、まさかメーカーどころか燃料まで変わっているとは…。
これもまた、お国柄というものなんでしょうか。

このようなトラブルがありはしましたが、店員さんは常に感じが良く、遅刻した僕が悪いのに「貸すのが遅くなっちゃったから返却時間を1時間延ばしておくね」とサービスしてくれるなど、旅行者に優しい店舗だったと感じました。
僕自身、またレンタカーを手配することがあれば、またこの店を選ぶと思います。


・日程選定について(サン・マテオのお祭り)

せっかくクエンカに行くのですから、賑わっている時に行ってみたいとは思いませんか?
普段の落ち着いたクエンカも素敵ではありますが、第1話でカナタがセーズの街にやってきたときのような賑わいっぷりを味わうのも悪くないものです。

賑わっているクエンカを味わいたい方にオススメなのが、クエンカのお祭りである「サン・マテオ」に合わせた日程でのクエンカ探訪です。
2016年に初めて訪れたクエンカで、僕はたまたまこのサン・マテオに遭遇したのですが、あまりの楽しさから「次にまたクエンカに来るときは絶対サン・マテオの日程に合わせよう」と決意したほど、このお祭りは魅力的なものでした。
そして実際、2023年には強引に休みの日程をずらしこみ、サン・マテオの日程に合わせた旅程を組んだのです。

サン・マテオは牛追いの祭りなのですが、この日は街中に人が溢れかえり、あちらこちらで音楽や踊りなどをお酒を交えながら楽しんでいる様子が見られます。
あまりの楽しさから我を忘れてお祭りに没頭してしまったものです。サン・マテオがどれほどまでに楽しかったかは下記にまとめています。

※この2016年のクエンカ探訪時に知り合った誰かがいないものかと、2023年の探訪時に聞き込み調査を行ったところ、奇跡的に2016年時の僕と写真を撮った人と友達だ、という人に出会うことが出来ました。
残念ながら一緒に写真を撮った当人と連絡を取ることは出来ませんでしたが、異国の、それも7年前に一瞬交わっただけの人との繋がりを再認識できたことがなんとも嬉しく、改めて、サン・マテオの日程に合わせて来てよかったなと実感したものです。


そんな素晴らしいサン・マテオの様子を撮影してきたので共有します。ちゃんと牛も登場していますよ。
クエンカの人たちはとても温かく、街中を撮影しているときに「俺達と写真を撮らないか?」と誘ってくれたり(一緒に撮りました)、「これも撮っておきなよ」と声をかけてくれたり(動画の最後でもこの牛の模型撮っておきなよと声をかけてくれています)、とても楽しい時間を過ごすことが出来ました。

仕事の都合などもあるため、理想の日程で舞台探訪を行うというのはなかなか難しいかもしれませんが、チャンスがあれば狙ってみる価値はあるかと思います。
クエンカでは他にも聖週間と呼ばれる行事があるようなので、いつか参加してみたいものです。
聖週間は3月、サン・マテオは9月に行われています。

お祭りで賑わっているクエンカと、普段のおちついた日常のクエンカ、両方を味わうことで、第4話でのカナタの「お祭りのときとはぜんぜん違うね。すごく落ち着いた、静かな街」というセリフが、より深く胸に染み渡るようになることでしょう。



■持ち物について

舞台探訪だからといって特別なものが必要になることはないので、本項では実際に準備しておいて便利だったものを紹介しておきます。
おまけ的に書いたものなので、持ち物くらい自分で決めるぜ!って方は読まなくて大丈夫です。

基本的には海外旅行に行く持ち物で十分に事足ります。舞台探訪のアイテムとしてトランペットを持っていく!とかでもなければ荷物周りで困ることはそうないでしょう。
ぶっちゃけネットに繋がるスマホと財布とパスポートがあればたいていは現地でなんとかなります。


・VISAタッチ決済を設定したスマートフォン

2023年にスペインを訪れた際に必須級に感じたのがスマートフォンでのタッチ決済です。
このときは、バルセロナ、マドリード、クエンカ、アラルコン、セゴビアの5都市を訪れたのですが、会計の8割ほどはこのスマートフォンによるタッチ決済で済ませることが出来ました。
会計スピードが早くて楽というのが最大のメリットですが、財布を出さなくても良いという防犯的な意味でもメリットが大きいと感じました。

会計時に「tarjetaタルヘタ(カードで)」と言ってスマホを見せれば、店員さんが決済端末を示してくれるのでやりとりがスムーズです。
たまに「No」と言われることもありますが、そんなときは「física?フィジカ(物理カード?)」と聞けば、物理的なクレジットカードは受け入れてくれる場合もあります。
それもだめなら大人しく現金で払いましょう。


・海外ローミング可能なsimカード

海外旅行の最中にネット環境を確保するために海外用のポケットwifiを契約する方もいるようですが、僕個人としては下記のような海外ローミング可能なsimカードを契約していけば十分だと思っています。実際、僕は2023年に楽天モバイルを契約していきました。
2016年には現地sim(ボーダフォン)を契約する方法を取りましたが、今の時代にそんなことをする必要性はかなり薄いと感じています。(極限まで安くしたい!とかあればアリかもなのかもしれませんが、楽天モバイルで十分安い)
ahamoは月額2970円で海外ローミング込みで20GBまで使えますし、楽天モバイルに至っては月額1078円で海外ローミングが2GBまで使えるようになっています。追加の申し込み等行う必要もなく、設定も簡単です。

僕はスペイン以外も含めて約10日間海外にいましたが、ホテルやレストランでは施設のwifiが利用可能だったこともあり、2GBでも余裕で足りる通信量に収まりました。このあたりはスタイルにもよるかと思いますが、短期の旅行であれば楽天モバイルの海外ローミングで十分だと思います。
アラルコンまで行ったときには繋がりにくい場所もありましたが、これは2016年にボーダフォンのsimを使っていたときからそうだったので、単にアラルコン周りの回線事情が貧弱だという話だと思います。(そもそも海外ローミングも現地の回線使ってますしね…)

ahamo

楽天モバイル


・国外運転免許証

これは完全にその人によるとしか言えないのですが、もし「俺は海外でも運転出来るぜ!困ったことがあっても自分でなんとかしてみせるぜ!」という自信があるようなら、国外運転免許証を取って舞台探訪に望むことをお勧めします。
本文中でも述べましたが、アラルコンがあまりに田舎にあるため、直接向かうための公共交通機関が存在せず、クエンカからバスとタクシーを乗り継いでいくしか方法がないからです。
当然ですが、そのバスも数が少なく、旅程はバスの時刻に大きく制約されることになります。また、バスを降りた先でタクシーを確保せねばならないという手間もあります。ちなみにバスを降りた先もそこそこ田舎なので流しのタクシーなんかは期待できません。
クエンカからアラルコンまですべてタクシーで移動するという手もありますが、これはこれで費用が結構かかってしまいます。2016年にやんごとなき事情(土日はバスがすべて運休だった)でクエンカ-アラルコン間をタクシー移動した際は片道100ユーロほどかかりました。

それらを回避するために、いっそ自分で運転してアラルコンに行けばいいだろと思える方はぜひとも国外運転免許証を取っていきましょう。
各都道府県によって申請場所は異なりますが、いずれも試験等はなく2000円ちょっとの費用を払うだけでアラルコンまでレンタカーで移動するという手段を取れるようになるのですからありがたいものです。
2023年にクエンカで一日レンタカーを借りた際の費用が100ユーロほど、ガソリン代が50ユーロほどだったので合わせて150ユーロと、タクシー移動に比べて圧倒的に安いというほどではありませんが、自分のペースで移動出来る圧倒的な自由度の高さと、クエンカの街を、アラルコンの大地を自ら運転して駆けていく気持ちよさは何事にも代えがたい喜びを与えてくれることでしょう。
特に、アラルコンには第13話でカナタがリオを探すために運転していたあの道があります。同じ道を、カナタと同じようにゆっくりと運転してみるというのも、舞台探訪の楽しみ方の一つとして良いのではないでしょうか。



■終わりに

マニュアルと言うかほとんど旅行記のノリになってしまいましたが、参考になるところはあったでしょうか。
僕自身が行った舞台探訪、ひいては本マニュアルの作成には、これまでに「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」舞台探訪を行った方々の記録が大変参考になりました。
みなさまの思いが響いて、そして伝わり、また誰かに伝えようと思う原動力となっています。
このマニュアルが、これから舞台探訪を行う方にわずかでも響いてくれれば幸いです。

軽い気持ちで舞台探訪についてまとめ始めたところ、思っていた以上のボリュームとなってしまいました。
これでもまだ全部はまとめきれていないというのですから、驚くばかりです。

「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」は見返すたびに新たな魅力を発見できる素晴らしい作品です。
この魅力に取りつかれ、未だに何度も見直してしまう、そんな根強いファンも多いことでしょう。一度や二度見ただけでは味わい尽くせない、深みのある面白さを持つ作品だと思います。
そんな素敵な作品ですから、きっと今後も、数は少ないにしろ「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の舞台探訪をする人は出てくるはずです。
このマニュアルがそんな誰かの助けになれば、これ以上の素敵はありません。


いこう、夢のその先に。

たとえ、いつか世界が終わるのだとしても。

その瞬間までは、私達の未来だ。

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