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障害者枠で入社した際の定着率と離職率

就業は障害者の自立や社会参加のために、とても大切なことです。一人一人の適性に応じた仕事に取り組み能力を十分に発揮し、働くことが当たり前にできる社会になればと思います。

障害を持つ方は「一般枠」と「障害者枠」から、就職方法を選択することができます。
障害者枠を選んで、抱えている障害をオープンにすることで、障害の種類や特性が就業先の人に伝えることができます。個人に配慮した適切な環境や業務が用意されれば、長く働き続けることもできます。

1.障害者枠の一般企業における定着率と離職率

厚生労働省の障害者雇用実態調査によると、障害者の職場定着状況は、知的障害や発達障害の場合は比較的安定しているのに対し、精神障害者については定着が困難な状況にあるようです。

障害者別の1年後の 定着率
■身体障害者60.8% ■知的障害者68.0% 
■精神障害者49.3% ■発達障害者71.5% 

平成25年の調査では、身体障害者の平均勤続年数は10年、知的障害者は7年9カ月、精神障害者は4年3カ月でした。また、一般枠の求人に障害を開示せずに就職した場合、職場への定着率は低くなる傾向が見られます。

障害者の職場定着の課題として、仕事内容や賃金、評価といった労働条件に関する事柄のほか、職場の雰囲気や人間関係、体力の問題、通勤など勤務先との距離に関することが挙がっています。

障害者枠での就職によって、課題とされていることが注視され、配慮が欲しい事項への理解、労働時間や勤務形態のカスタマイズなど、適切な対応を期待できます。

いずれの企業も障害者雇用を進めていますが、大企業と比較して中小企業の場合は、経営トップに直接働きかけることが比較的容易であるという点、上司や同僚の面倒見が良いというメリットもあるようです。

中小企業が考える障害者の雇用定着ができている理由として「作業を遂行する能力を認める」「仕事に対する意欲を持たせる」など、本人の業務状況に関することが挙げられています。
一方、大企業が考える雇用定着理由では「現場の作業員の理解」といった周囲からの気遣いを挙げるケースが総体的に多いようです。

2.障害者の公務員採用における離職率と定着

平成30年秋に中央省庁で障害者採用された約2500人のうち約130人が、半年ほどで退職しています。いわゆる中途採用なのですが、実に採用された人の5%強がわずか半年で離職してしまいました。

中央省庁をはじめ、全国の自治体で発覚した「障害者水増し雇用問題」は記憶に新しいかと思います。問題発覚後、再発防止策が法制化され、法定雇用率達成に向け大量採用が急がれましたが、その離職率の高さも話題にとなりました。
みなさん高倍率の試験を突破し、国家公務員になるチャンスをつかみ、希望を持って新しい仕事に向き合おうとしたはずです。

離職者が多いという結果から、受け入れ機関がどのような仕事を担当してもらうのかなど、準備が整っていなかった様子が垣間見られます。数字合わせの発想で障害者雇用を進めたのでは、ミスマッチが起きるのは必至です。

退職理由は「職場や仕事が合わない」「家庭の事情」など、さまざまだったようですが、「仕事に関する指示を数日間与えられなかった」「業務は特になくインターネットを見ながら過ごした」という離職者の話もありました。

これを受け担当者は「職員向けの研修を重ね、障害者に長く働きたいと思ってもらえる雰囲気を作りたい」と回答しました。

すでに環境省では「協働推進室」を設置し、障害者の備品購入や文書校閲などの仕事をサポートしています。防衛省では社会福祉士2人を新規採用し、障害を抱える職員やその上司、同僚からの相談にも対応するとしています。

障害者の定着率を上げるには、経費をかけたハード面の整備ではなく、職場の配慮を広げ受け入れ態勢を整えることだと感じます。障害者の退職理由を障害の種類や業務の内容ごとに分析し、各省庁で課題を見直し、採用する側の意識を高める必要があるのかも知れません。

3.障害者枠の定着率を上げるためには?

身体障害者、知的障害者に加え、平成25年の法改正により精神障害者の雇用義務が課せられるようになりました。

民間企業の障害者雇用率は平成30年4月より2.2%となり、3年を経過する前に2.3%に引き上げられることになっています。
国および地方公共団体、ならびに特殊法人については2.5%で、3年を経過する前に2.6%とする見通しです。

また雇用率の見直しに伴い、障害者を1人以上雇用しなければいけない民間企業の範囲が、従業員50人以上から、45.5人以上となりました。

障害者が働く上で大切なのは「できる限り障害を受容した環境」が整っていることで、障害があっても仕事が進められるさまざまな工夫があります。障害のある方それぞれの特性を受け入れる側がどこまで理解しているか、必要なケアやアドバイスをくれるかどうかがとても重要です。

例えば自己紹介状の作成です。「障害の特性や性格」「声かけしてほしいこと」「接し方に関するお願い事項」「みなさまへのメッセージ」などをスタッフルームや休憩室に張り出しているところもあります。単に障害があるというだけではなく、必要なサポートや得意とすること、苦手なことなどについて、自然と理解してもらえるよう働きかけているのです。

ある大手IT企業の社内調査で「社員の心理的安定性の高い組織は、労働生産性が高い」という結果が出ています。障害者だけではなく、健常者も含めた一人一人に合わせた働きやすさを考えることが、誰もが働きやすい環境づくりにつながるのだと思います。

4.興味のある方へのご案内

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