コンクリート調査・試験方法(弾性波法)
(1)弾性波法
弾性とは、固体に力を加えると変形するが、力を除くと元に戻る性質のことである。
固体に力を加えたときの変形を弾性範囲内に限る場合に、この固体を弾性体という。すなわち、弾性波は、弾性体に微小な振動を加えたときのその伝わり、ということができる。
また、気体・液体・固体を伝播し、人間や動物の可聴周波数の弾性波を音波というため、音をイメージするとわかりやすい。
弾性波は、異なる物質の境界面でそのエネルギーの一部が反射する性質があるため、コンクリート中にひび割れ、剥離、空洞などがあると、その空気層との境界で反射して存在を知らせる。
また、空洞があると部材を貫通する波は遠回りしないと伝わらないため伝播時間が長くなる。そして、共振する空間が小さくなることで、周波数が高くなるなどの変化が表れる。
(2)分類
「超音波法」、「AE法(アコースティック・エミッション法)」、「衝撃弾性波法」、「打音法」の4つの分類がある。
「超音波法」は、超音波域である20kHz以上の周波数を利用し、発振子(はっしんし:固有の周波数で発振する電子部品)によって弾性波を与える。
「衝撃弾性波法」と「打音法」は、20kHz以下の周波数を利用し、ハンマーなどによる物理的な打撃によって弾性波を与える。
「衝撃弾性波法」は受振子(じゅしんし)を表面に密着させて測定するが、「打音法」は空気中に放射された弾性波を受振子コンデンサマイクロフォンで測定するためコンクリート表面の影響を受けにくいが、代わりに周囲の騒音の影響を受けやすい。
「AE法(アコースティック・エミッション法)」は、超音波法の1つであるが、既存のひび割れは検出不能で、新たに発生するひび割れを検出することができる。
アコースティック・エミッション(Acoustic Emission, AE)とは、材料が変形あるいは破壊する際に、内部に蓄えていた弾性エネルギーを音波(弾性波、AE波)として放出する現象である。
材料に荷重を負荷した後に除荷し、再び荷重を負荷していくと、最初に負荷した荷重まで AE(アコースティック・エミッション)が発生しない。これをカイザー効果といい、この原理を利用し、負荷された荷重が不明な材料に対して荷重を負荷していき、その AE の発生する荷重を求めることにより、逆に負荷された荷重を求めることができる。
(3)電磁波レーダー法との違い
弾性波(音)は、固体・液体・気体を媒体として伝わる振動(疎密波)である。
電磁波は、電場と磁場の波で、真空中でも伝わる。電場は電圧が掛かると発生し、磁場は電流が流れると発生する。
性質は異なるがいずれも波であり、コンクリートと鉄筋や空洞など異なる物質の境界面で反射され、再びコンクリート表面に出て測定される点においては一緒である。
(4)水平ひび割れ位置の推定式
共振とは、振動体に固有振動数と等しい振動が外部から加わると、振動の幅が大きくなる現象。音などの場合は、共鳴ということが多い。
以下の式より、「波長=伝播速度/周波数」であることは理解できたが、欠陥深さと波長は同じではない。おそらく、単に周波数ではなく、共振周波数であることと、「共振周波数の次数/2」が波長を欠陥深さに変換しているのだと思われるが今回は深追いしないこととする。
周波数…単位時間(1秒)に振動(振幅)する回数
伝播速度…単位時間に媒体内を進行する速度
波長(λ)… 1回の振動(振幅)で進行する距離
「速さ=距離/時間」のようにイメージするとわかりやすい。
(5)過去問
【2020年】
【2007年】【2009年】【2012年】