第三代パピーパイオニア王決定戦カバレージ
By Tsutomu Date
実力者揃いのTOP8
第三代パピーパイオニア王決定戦は、10/26(土)に弥富市産業会館にて行われた。
今回のTOP8の面々は、東海圏では知らぬものはいない実力派揃いだ。
晴れる屋現パイオニア東海王のイナバ、前東海王のヒラノ、5,6期東海王の中島、元レガシー東海王の小森、ブリch杯優勝の竹村、パピーパウパー王の鈴木、東海のスタンダードやパイオニア大会での上位常連の山口。
そして…現パピーパイオニア王のみならず、多くのプレミアイベントでマネーフィニッシュを決めているイヌイタカシ。
スイスラウンド5回戦を勝ち抜いたプレイヤー達のプロフィールと使用デッキについてはこちらを御覧いただきたい。
TOP8ブラケット
そして本日の最終戦、第三代パピーパイオニア王に王手をかけるのは…
イヌイタカシ(パルヘリオン)
と
山口 拓郎(ラクドスミッドレンジ)
だ。
そう、現パイオニア王、イヌイが再び決勝戦の席に着いたのだ!
イヌイタカシ
説明は不要かもしれないが、彼の足跡を改めて知りたい方は前回のカバレージを御覧頂きたい。
前回はラクドスミッドレンジで王位に就いたイヌイだが、今回はマルドゥカラーの《パルヘリオンⅡ/Parhelion II》デッキを選択した。
イヌイ「静岡(チャンピオンズカップファイナル)の2週間ぐらい前にまわしてみたら感触がよくて、本戦でも使いました。
デッキの回りにムラがあって、それが静岡では悪い方向に出てしまいましたが、構成自体は強いと思っています。
コンボにならなくてもミッドレンジとしても強いのが魅力ですね」
ー以前は《パルヘリオンⅡ》を使うデッキはアブザンカラーが多かったと思うのですが、マルドゥカラーになっていますね。『ダスクモーン:戦慄の館』の影響が大きいのですか?
イヌイ「《逸失への恐怖/Fear of Missing Out》や《ベイルマークの大主/Overlord of the Balemurk》が入りました。
特に《逸失への恐怖》は《パルヘリオンⅡ》が2回殴ってフィニッシュする選択肢ができたし、全体的に《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》とも相性がいいです。
ルーティングするカードが多いので欲しいカードにたどり着きやすいし、昂揚の達成も容易になりました」
イヌイ「ちなみに静岡では「まれお」*1さんがこのデッキでラストチャンス予選を抜けてましたし「東海あの人」*2も使っていましたね。いいデッキだと思います」
*1 チャンピオンズカップファイナルでは44位、PT出場経験もある愛知の強豪
*2 同じくチャンピオンズカップファイナル42位、競技シーンは勿論、独創的な忍者デッキにも定評がある
ー決勝戦は山口さんのラクドスミッドレンジとの対戦になりますが、どのような対戦になると思っていますか?
イヌイ「極端な相性差はないのですがこちらが若干不利かな?と思っています。
相手の方がアドを取る手段は多く、長期戦になると不利ですね。
こちらが早いターンに決められれば…」
山口 拓郎
一方の山口。
イヌイのプロフィールは前回のカバレージで触れたため省かせてもらったが、山口とマジックについて語らせて欲しい。
マジックとの邂逅は高校生の時という。
山口「『インベイジョン』の頃ですね。当時は「ファイヤーズ」を使っていました。
一度『神河物語』が出る前あたりで一度離れたのですが、『異界月』の頃に当時プレイしていたお店…「後藤商店」*3というんですけど…に遊びに行ったらまだマジックをやっていたことを知りました。
それからスタンダードで復帰して、パイオニアは制定時からやってます」
*3 愛知県津島市の文房具店。カードゲームの取り扱いも充実しており地元プレイヤーから愛されている
「インベイジョン」「ファイヤーズ」というワードにグッとくるプレイヤーも多いのではないだろうか。
現在はモダンにも手を広げているという。
そして本日パイオニア王決定戦に持ち込んだデッキは、ラクドスデーモン。
山口「ラクドスミッドレンジはパイオニアで成立してからずっと使っていて、《傲慢な血王、ソリン/Sorin, Imperious Bloodlord》が入ったラクドス吸血鬼も使いました。
禁止が出てからしばらく後、そのスロットにデーモンが入るようになってこの構成が気に入ってます」
決勝戦、パイオニア王であるイヌイとの対戦を山口どう考えているのだろうか。
山口「メインは若干不利なのかな?と思っています。
こちらは(コンボの成立を阻害するために)除去を構えておかなければならないですからね。
サイドボード後は《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》が取れるので五分でしょうか。
仮にメインを落としてもサイドで巻き返していきたいですね」
意外なことに、互いに好ましいマッチアップとは考えていないようだ。
イヌイがコンボで押し切るのか、中盤以降に持ち込んだ山口がアドバンテージで巻き返すのか。
本日最後、頂上の戦いを見守ろう。
決勝戦
Game1
先手はイヌイ。キープした7枚のハンドは以下。
《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs》
《致命的な一押し/Fatal Push》
《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death's Hunger》
《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》
《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》
《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》
「怒りの《鏡割りの寓話》3枚キープです」
というのはマッチが終わった後のイヌイの言。
対する山口は以下の初手をマリガン。
《血の墓所/Blood Crypt》
《変わり谷/Mutavault》
《変わり谷/Mutavault》
《税血の徴収者/Bloodtithe Collector》
《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》
《不浄な別室+祭儀室/Unholy Annex+Ritual Chamber》
《ドロスの魔神/Archfiend of the Dross》
相手のコンボに対し、除去がないことをリスクが大きいと判断したか。
改めて引いたのは以下の7枚。
《ブレイズマイアの境界/Blazemire Verge》
《荒廃踏みの小道/Blightstep Pathway》
《変わり谷/Mutavault》
《税血の徴収者/Bloodtithe Collector》
《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》
《致命的な一押し/Fatal Push》
《アクロゾズの放血者/Bloodletter of Aclazotz》
今度は除去のあるハンドを引き入れた山口、《アクロゾズの放血者》をボトムに送ってキープ。
緊張の走る序盤、始めに動いたのは後手の山口。
2ターン目に《税血の徴収者》をプレイすると、イヌイは《致命的な一押し》でそれに即応。
ターンの返ったイヌイは《鏡割りの寓話》。
ムーブのない山口に対し、返ったⅡ章で《パルヘリオンⅡ》と《死の飢えのタイタン、クロクサ》をディスカード。
ゴブリン・トークンは《致命的な一押し》されるものの、2枚目の《鏡割りの寓話》が着地。着実に盤面を作り上げていく。
山口は《ドロスの魔神》で対抗するが、イヌイは《鏡割りの寓話》Ⅱ章、Ⅲ章と伝承を進めつつ、紛争を達成すると《致命的な一押し》で《ドロスの魔神》を排除。盤面の優位を崩さない。
続く《思考囲い》で山口の《不浄な別室+祭儀室》を落としていく。
そして初手から温めてきた3枚目の《鏡割りの寓話》。「コンボにならなくても強い」を地で行く展開だ。
盤面で圧倒されつつある山口。起死回生の一手はあるのか。
こちらも、と山口は《鏡割りの寓話》を唱えつつ《致命的な一押し》を構える。
イヌイは《逸失への恐怖》プレイから複数の《キキジキの鏡像/Reflection of Kiki-Jiki》でそれをコピーし始めると…《致命的な一押し》1枚では止められない連鎖が始まった。
都合、ターンをまたいで3体の《逸失への恐怖》がイヌイの軍勢に並ぶと、とどめとばかりに《無情な死牙/Ruthless Deathfang》を召喚する。
イヌイ「これで《パルヘリオンⅡ》が3回…いや4回殴れるのか」
イヌイ 1-0 山口
山口「《鏡割りの寓話》…多く引いたほうが勝ちですね(笑)」
イヌイ「対処しようとすると、構えられなくなるから」
山口「1枚はまあいいかな、って思ったけど2枚目3枚目ときてもう…(笑)」
イヌイ「無理無理無理!ってなりますよね(笑)」
Game2へ向けた互いのアウトとインは以下。
山口
OUT:
《税血の徴収者/Bloodtithe Collector》
《税血の徴収者/Bloodtithe Collector》
《税血の徴収者/Bloodtithe Collector》
《税血の徴収者/Bloodtithe Collector》
IN:
《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》
《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》
《苦痛ある選定/Anoint with Affliction》
《苦痛ある選定/Anoint with Affliction》
《大牙勢団の総長、脂牙/Greasefang, Okiba Boss》への対策を明確にしたサイドボーディング。
イヌイ
OUT:
《税血の徴収者/Bloodtithe Collector》
《税血の徴収者/Bloodtithe Collector》
《税血の徴収者/Bloodtithe Collector》
《逸失への恐怖/Fear of Missing Out》
《悪名高い残虐爪/The Infamous Cruelclaw》
IN:
《強迫/Duress》
《強迫/Duress》
《消失の詩句/Vanishing Verse》
《聖戦士の奇襲兵/Cathar Commando》
《勢団の銀行破り/Reckoner Bankbuster》
イヌイは持ち味をデッキの持ち味を崩すことなくややコントロールにシフトする。
Game2
今度は先手となった山口。
《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs》
《変わり谷/Mutavault》
《思考囲い/Thoughtseize》
《強迫/Duress》
《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》
《黙示録、シェオルドレッド/Sheoldred, the Apocalypse》
《アクロゾズの放血者/Bloodletter of Aclazotz》
土地が2枚と軽量ハンデスが2枚。
相手のハンドに干渉しつつ《鏡割りの寓話》、そしてフィニッシャーに繋いでいける、ほぼ理想的と言っていい初手だろう。
Game1のリベンジを期待できる。
対するイヌイ。
《黒割れの崖/Blackcleave Cliffs》
《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
《戦場の鍛冶場/Battlefield Forge》
《硫黄泉/Sulfurous Springs》
《消失の詩句/Vanishing Verse》
《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》
《ベイルマークの大主/Overlord of the Balemurk》
《鏡割りの寓話》から手札の整理は期待できるが、直接盤面へ影響するカードは実質2枚。
積極的にキープしたいハンドではないが、だからといってマリガンするほどでもない…。
そしてイヌイはキープを決断した。
序盤は互いに手札破壊を打ち合う展開になった。
山口が《思考囲い》で《ベイルマークの大主》を、《強迫》で《鏡割りの寓話》を落とすのに対し、
イヌイもトップした《思考囲い》で《鏡割りの寓話》を落とす。
互いの脅威を排し、長期戦を思わせる展開。
イヌイ「こっからなんだよな」
戦力の削ぎ合いからのアドバンテージ勝負は山口に分があるか。
3ターン目の山口は土地こそ引けなかったものの、墓地対策の《未認可霊柩車》を引き込むことができた。
それをそのままプレイし、イヌイのコンボを阻害しつつもフィニッシュに向けて力を溜めていく。
後は土地さえ引いてくれれば。
イヌイは土地をプレイするのみでターンを返す。
2枚目の《鏡割りの寓話》か、せめて《逸失への恐怖》で手札を整えたいが…。
一方の山口は3枚目の土地が引けずにいる。
序盤の手札破壊の応酬から先んじるのは山口かと思われたが、先に動いたのは5ターン目のイヌイだった。
イヌイ「うーん…じゃあとりあえず置いておくか」
仕方がない、とまっさらな盤面に《領事の旗艦、スカイソブリン/Skysovereign, Consul Flagship》をプレイ。
もちろんダメージを飛ばす先はない。
山口「普通に出てきた…」
噛み合わないイヌイに対し、山口はなおも3枚目の土地が引けない。
《領事の旗艦、スカイソブリン》は搭乗時に《無情な行動/Heartless Act》で落とすが、後続の《税血の徴収者》と《不穏な火道/Restless Vents》を対処することができない。
思わず苦悶の声を漏らしてしまう山口。
だが、まだここから、と逆転の目を模索する。
イヌイのライフと毎ターン起動し続けていた《未認可霊柩車》のパワーを確認し、
山口「2パンでいけるか…?」
とつぶやく。
土地を引いた場合、イヌイの除去を躱した場合、とプランを練っているのだろうか。
だがイヌイの5点クロックは止まらずライフは2まで落ち込む。
ターンを返したイヌイ。
山口がドローをすると、反撃の一手を想定し
イヌイ「さあどうだ…?」
と身構える。
山口「ライフ、2なんですよね」
ゆっくりと3枚目の土地…《血の墓所/Blood Crypt》をタップインすると驚いたのはイヌイの方だった。
山口はほぼベストと言っていい初手から、9ターン目にして初めて土地を引いたが…皮肉なことにそれはショックランドだったのだ。
ターンを返す山口に対し、イヌイは《不穏な火道》の起動、攻撃クリーチャーの指定、と着実に進めつつ…唯一のブロッカーの《未認可霊柩車》を《苦々しい勝利/Bitter Triumph》で仕留めると…
残った山口のライフを奪い、ついにイヌイは勝利をその手にした!
イヌイ 2-0 山口
再臨
かくして、イヌイは再び王座に就いた。
パピー王決定戦はフォーマットを跨いで10回以上開催されているが、連覇は初となる。
強豪揃いのトップ8の中、再び優勝を掴んだイヌイへの祝福が会場に溢れ、イヌイはその威容を示した。
おめでとう、第二代パイオニアパピー王改め、第三代パイオニアパピー王、イヌイタカシ!
最後の戦いを終えて
山口「《致命的な一押し》1枚だけだったら(手札破壊を絡めて)《未認可霊柩車》で2回どつくプランもあったんだけど、2枚持たれてたのが辛かったな」
イヌイ「それはなんともならんね!」
山口「ありがとうございました。パピー王に…負けました」
イヌイ「(王の)覇気で…勝ってしまった…この…この勝ち方は…!?まさか、それにしてもひどいオチだな!」
山口「(初手の)あれでキープしたんですか、流石!」
イヌイ「ちょっと土地多めで(スペルを)抜かれるとまずいかな、って思ったけど、そういうゲームじゃなかった」
山口「こっちは引けども引けども3コス以上という」
イヌイ「ようやく引いたのが…ショックランドって!そんなオチあるかって!よりによってそれかよ!って」
山口「しょうがないっすね、もう(笑)マジックですね、これが」
意外な結末となった第三代パピーパイオニア王決定戦であったが、強豪2人が全力を出しあった結果であることに異論を持つものはいないだろう。
次回、第四代パピーパイオニア王決定戦はどんな強豪が決勝の席に着くのだろう。
イヌイの三連覇はあるのか、はたまた下剋上となるのか。
お読み頂いた方は、ぜひ決勝の当事者となって欲しい。
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