にゅーたいぷぐるめ・いかそうめん
こんなグルメ話があっても面白いかな と思って書いてみました。
その「いかそうめん(アオリ)」はありふれた水色の縞模様のトレーに盛られていた。
なんだ、このみごとな透明感は。トレーの模様がきれいに透けて見える。
表面の艶も照りも見事だ
筋肉の白濁・硬化を抑えるためにすべての加工工程において水温、水素イオン濃度が厳密に調整されていた証拠だ。
塩素臭も薬臭さもない
雑菌の除去にはオゾン殺菌を使ったのだろうか。
数本をまとめて箸でつまみあげる。
確かな弾力と硬さが感じられた。けして肉厚ではないが重力にあがなうようにまっすぐに横に伸びようとしていた。
このすばらしい弾力と張り
硬さも申し分ない
漬けこみ液の浸透圧調整のなせる業だろう。
高すぎれば身は縮こまり、弾力と硬さは増すが黄色く変色しゴムのようになってしまう。
低すぎれば透明度は増すがぶよぶよのくたくた、水風船のようになってしまう。
口に含むと柔らかくさわやかな甘みが感じられた。
ぷるんとした舌ざわり、さくっとしたそれでいてとろけるような食感がおそってくる。
この甘みはなんだ
糖のストレートな甘みではない。
アラニン。
グリシンにわずかのアミン。
どれも魚介類に代表されるアミノ酸だ。
そこに浸透圧の調整もかねて短鎖の糖アルコール。
糖アルコールはつながっている糖鎖の長さによって浸透圧、甘さが変わってくる。
また、糖アルコールを入れることで冷凍での身崩れを防ぐことができる。
切り口が直角のまま丸まっていないのもそのせいだろう
甘みに締りをあたえるためにわずかに酸が使われているな
酢酸やクエン酸といったありきたりの酸ではない。それらは単純な酸味しか与えない。香りのきつくなる。
これは酒石酸か?いやフマル酸かもしれない。
わずかな酸味と、さらにごくごくわずかな苦みを加えることで甘みの暴走を抑えている。
さらにはこの酸で全体の水素イオン濃度の調整もしているのだろう。
2口、3口と箸をすすめる
あとを引かないほどよい甘さ
イカにありがちな表面のぬめりもない。
そうか、
ぬめりが出ないように
切り口から内容液が漏れださないように、あわせて表面が乾燥しないように
漬けこみ液の段階で少糖類が加えられていたのか。
オリゴマルトース?プルラン?
いや、この味と艶はトレハロースだろう
近所のスーパーでみつけた「いかそうめん(アオリ)」
ちょっとしたつまみにするつもりが、見事にやられた。大したもんだ。
この値段で、この技術と英知に触れられるとは。
このレシピを作った開発員はいったいどれだけのいかそうめんを食べたのだろう。
来る日も来る日も数十種類のいかそうめんと格闘してきた。
そいつは今何を作っているのだろうか