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【板前コラム】「成長する、幸福になる」——スタッフが輝く職場とは
はじめに|「仕事が楽しい」と思えていますか?
料理の世界に飛び込んだとき、おいらは何度も言われました。
「職人の道は厳しいぞ」
確かにその通りでした。朝早くから夜遅くまで仕込みと営業に追われ、気を抜ける仕事なんて一つもない。でも、そんな毎日の中で気づいたことがあります。
「この仕事が楽しい」と思えたとき、人は一番成長する。
厳しいだけの環境では、どんなに腕を磨いても心がすり減る。でも、やりがいや楽しさを感じられる職場なら、人は自ら学び、挑戦し、自然と伸びていく。
だからこそ、おいらは考えます。
「どうすればスタッフが成長しながら、幸福になれるのか?」
成長と幸福はセットで考える
「厳しさ=成長」ではない
昔は「修行なんだから耐えろ」「仕事は見て覚えろ」と言われるのが当たり前でした。もちろん、技術を磨くには努力が必要です。でも、ただ耐えるだけでは、技術は身につかないし、仕事の楽しさもわからない。
だから、おいらの店では、新人にまずこう言います。
「まずは楽しめ」
✔ 料理を作る楽しさ
✔ お客様の喜ぶ顔を見る楽しさ
✔ チームで動く楽しさ
この「楽しさ」を感じられれば、自然と仕事にのめり込む。のめり込めば、もっと上手くなりたいと思う。その結果、成長する。
「厳しく鍛えれば成長する」のではなく、「成長できる環境を作れば、人は勝手に伸びる」のです。
「教えること」が成長の土壌を作る
成長には、環境が必要。その一つが「教える文化」です。
たとえば、新人が初めて魚をさばくとき。いきなり「もっと早く」「もっと正確に」と言っても難しい。おいらはまず、こう教えます。
✔ 包丁の入れ方
✔ 力の入れ具合
✔ どのタイミングで何を意識するか
すると、新人は「なるほど」と理解し、試行錯誤しながら成長していく。自分のペースで上達できれば、自信がつく。自信がつけば、仕事が楽しくなる。
この「理解する→できる→楽しくなる」の循環が、成長と幸福を両立させる秘訣です。
スタッフが幸せに働ける職場とは?
仕事を「苦役」にしない
料理の世界では、「仕事がきついのは当たり前」と思われがち。でも、それが当たり前になった瞬間、人は「やらされている」と感じ、モチベーションを失う。
だから、おいらはこう考えます。
✔ スタッフが「やりがい」を感じる仕組みを作る
✔ 頑張った人が正当に評価される職場にする
✔ 仕事が終わったらしっかり休める環境を整える
たとえば、うちの店では「今日のベストパフォーマンス賞」を決めることがある。誰かのいい仕事を、みんなで称えるだけで、チームの士気はぐっと上がる。
「やりがい」は小さな成功体験から
やりがいは、一つひとつの成功体験の積み重ね。
ある新人が、最初は包丁もまともに握れなかった。でも、毎日少しずつ練習し、ある日、おいらが言いました。
「お、いいね。キレイにさばけるようになったじゃないか」
その瞬間、彼の表情がパッと明るくなった。そこから、どんどん仕事に積極的になり、半年後には頼れる戦力に。
小さな成長を見逃さず、「いい仕事をしたね」と声をかける。それだけで、スタッフのやる気は大きく変わるんです。
まとめ|成長する職場は、幸福な職場
「スタッフを成長させる」と考えると、つい技術指導にばかり目が向きがち。でも、大事なのは**「成長できる環境を作ること」**。
✔ 仕事の楽しさを伝える
✔ 教える文化を根付かせる
✔ やりがいを感じられる仕組みを作る
こうした取り組みを続けていけば、スタッフは自然と成長し、職場全体が活気づく。結果として、お店の雰囲気が良くなり、お客様にもそれが伝わる。
「成長すること」と「幸福になること」は、別々のものじゃない。
むしろ、どちらも大切にしてこそ、最高の職場が生まれるのだと思うのです。