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【板前コラム】手が空いたとき、あなたは何してる?

おいらが働く店には、毎年、調理師の専門学校を卒業したばかりの若い衆がやってきます。ここ数年は新卒の採用が続いていて、厨房の平均年齢も随分と若返りました。

彼らはみんな素直で、一生懸命働いています。しかし、当然ながら性格も違えば、料理のセンスや技量にも差があります。その中に一人、料理の才能がピカッと光る若いのがいます。

要領が良く、手が早い。賄いを作らせれば、味の当たりもいい。経験の浅さを考えれば、なかなかの腕前です。正直、将来が楽しみな存在です。

でも、彼にはひとつ気になるところがあります。

それは「自分のこと以外には無関心」なところです。仕事が早いのはいいのですが、自分の作業が終わると、さっさと自分の世界に戻ります。後輩が困っていても手を貸さないし、先輩の仕事すら手伝わない。仲間の作業量の偏りにも気づこうとしません。


料理の世界は、一人では成り立ちません。厨房では、それぞれのポジションごとに仕事が割り振られますが、来客数やメニューの内容によって負担は変わります。経験や能力によっても、かかる時間は違ってきます。そうなると、当然、自分の仕事が早く終わって手が空く瞬間もあります。


「手が空いたとき、あなたはどうしますか?」


おいらは、板前として生きる以上、「美味しいものを作る」「店に利益を残す」「人を育てる」 という三つのことを常に意識しています。


料理人にとって大切なのは、技術だけではありません。向上心、協調性、気配り、そういった「人としての器」も問われる仕事です。


だからこそ、手が空いた時の行動には、その人の本質が表れます。


  • 仕事を終えてダラダラするのか?

  • 周りの流れを見て、次の段取りを考えるのか?

  • 仲間の仕事を手伝い、自分をアピールするのか?

  • 新しい技術を学ぶために、先輩に教えを請うのか?

  • 誰もやりたがらない雑用を黙ってやるのか?


選択肢はいくつもあります。しかし、どの道を選ぶかは、その人自身にかかっています。


おいらが若い頃、ある先輩に言われたことがあります。


「仕事が終わった後の時間の使い方で、お前の未来が決まる」


その時はピンとこなかったですが、今になってよく分かります。手が空いた時の行動が、数年後の自分を作るのです。


手が空いたら、次の仕事を考える。できることを探す。誰かの力になる。そういった姿勢を持つ人間が、最終的には周りからも信頼され、一流の料理人になっていきます。


料理の世界は厳しいですが、面白い世界でもあります。自分を磨き続けた者だけが、本当に「うまい飯」を作れるのだと思います。


「俺は料理人だ」と胸を張るために、今日も厨房で鍛えていきます。




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