胸腺腫 うさぎへの投薬と食事のこと
ステロイドの投薬がはじまった
少し甘い味がつけられているらしいが、そもそも美味しくはないとの前情報通りイヤイヤ飲んでいるのが分かる
この時点では胸腺腫だと仮定して投薬を開始したが、もしそうでないならこの薬は効かないし胸腺腫であったとしてもステロイドが殆ど効かない子もいると言われていた
病院から帰宅後、改めてウサギの胸腺腫について調べたがネットに残る情報だと10年ほど前から根本的な治療方法は変わっていないらしい
猫なども胸腺腫になることがあるらしいが、こちらは外科的治療が有効とのこと
いつかウサギもそうなればいいな
胸腺腫と診断された際に病院での処置として食欲増進薬と、前述のステロイドとを注射してもらった
実はその1ヶ月ほど前から食欲が落ちていることも気になっていた
換毛期における食欲不振はいつものことではあったが、今回いつまでもダラダラと続いて終わらないのである
しかも、数年変化のなかった体重が減っていたことも私の不安に拍車をかけていた
先生に聞いてはみたが、ハッキリとした回答は得られずステロイドと一緒に食欲増進の薬も処方されたのでそちらも合わせて飲ませていくことになった
薬の効果
薬の効果はすぐに現れた
どちらが効いていて、若しくは両方の作用でそうなったのかは分からないが、病院へ行った翌日から食欲が凄まじいことになった
我が家では朝と夜がご飯を与える時間で、その時刻の1〜2時間前に食べ切るのが常。しかし投薬後には朝ごはんを昼に既に完食しており、それどころかさらに食べたいとずっと餌入れの前でスタンバイしてアピールしている
驚きと嬉しさで胸がいっぱいになった
効かないこともあると言われていた薬が効いて、鼻を目いっぱい開きながら苦しそうにしていた呼吸も幾分落ち着いている。
一時のことだったとしても一緒にいられる時間が伸びたような気がしてウサギを撫でながら少し泣いた
病院の方針
最初に病院で告知を受けてから2週間後、通院の日がきた
先生に家での状況を伝え、軽い健診を受けると薬の効果が出ているようなので徐々に通院の間隔をあけていきましょうと言われる
私としては今回もレントゲンを撮って腫瘍を確認し、病気の確定を行うのかと想像していたが、容態が落ち着いていたとしてもレントゲンをとることはこの子の身体にとって負担が大きいのでその都度ごとには撮りませんとのこと
通院のたびにレントゲンを撮られていた子をネットで事前に見ていたこともあってなんだか拍子抜けしたが、今の薬が効いているという事実が第一で危険を孕むことは極力しない方針の病院なのだなと納得した
安定期
胸腺腫と診断された秋から数ヶ月の間、状況は落ち着いたものだった
呼吸の速さはあまり変化が無かったように思うが、当初のように鼻を目いっぱい開きながらの呼吸をすることはなくなっていた
ご飯をきちんと食べ、適度に運動し、よく寝る
ただ、どれだけご飯を食べようと減ってしまった体重が戻ることはなく、かと言ってそれ以上減ることもなくの維持が続いていた
先生に尋ねても、獣医からすれば気にしなければならない危険性のある体重変化ではない、増加しないことも気にしなくて良いと言われたのだが知識のないこちらとしては気になるところ
ずっと診ていただいていたわけではないので、この先生が言うならば。と思える信頼関係のない中で、そういうものだからという説明にならない説明は、治療に直接関係なかったとしても不安が拭いきれない状態であった
食事の変化
投薬を始めてから約4ヶ月ほど経ち2021年も終わろうとしていた頃、再びご飯を残すようになっていた
我が家ではペレット、チモシー、フルーツグラノーラを主に与えている
グラノーラは完食するのだが、ペレットを2割ほど残してしまう
2~3週間に1度の通院のたびに軽微ではあるが確実に体重も減ってきていた
先生は前述の通りまだ気にする程度ではないといったスタンスで、これは喜んで絶対食べるというものを探して、それを食べなくなってきたら考えましょうと言われたので、オヤツを色々と買って与えてみるがどれも反応は良くない
改めて思い返してみると子供の頃からあまりオヤツに興味を持たず、上記の3種があればそれで良いという感じであったが、今の状況においてはそう言ってもおれず何かないかと野菜を与えてみることにした
葉野菜は多少食べるとわかっているものの、気分によっては全く食べない。とりあえずウサギに与えて良いとされている野菜を片っ端から食べさせている内に分かったのはアブラナ科の野菜が好みであること
特に大根、カブ、ブロッコリースプラウト、水菜が好きらしい
ご飯を与える前に嫌いな薬を飲んでもらい、飲み終わったら用意された葉野菜を真っ先に食べ出すので、その様はまるで口直しをしているようにみえた
ひとまず必ず食べるオヤツ(野菜)を見つけられて安堵した一方で、なぜペレットを食べないのか、または食べられないのか分からず、ふやかしてみたり色々と手を変えてみるもペレットを食べる量は日を追うごとに減っていくばかりであった
そうこうしているうちに年が開け、2022年1月中旬頃
遂には完食できていたグラノーラも残すようになってきていた
更なる変化
食欲減退は変わらずであるが1日のうち数回部屋をうろついたり、私達から禁止されている場所に入り込んで怒られたり食欲を除けば普段通りだなと感じる動きを見せていたのだが、2022年2月初旬のある日、再度鼻を大きく開いての呼吸をするようになっていた
急いで予約をとり病院へ向かう
先生は一瞥しただけで状況がかなり逼迫してきていると私達へ伝え、再度レントゲンを撮ることになった
あまりレントゲンを撮りたがらない先生が直ぐにその判断をしたということが重くのしかかり、悪い想像だけが頭の中を駆け巡っていた
30分ほど待ち再度呼ばれて診察室へ入るとウサギは酸素室に入れられていた
そして、胸腺腫が再び大きくなっていると知らされた
告知を受けた日にステロイドは寛解を目指して使用するものではないと言われており、いつかこの時が来るのだと想定し心の準備はしていたつもりであったがやはりショックだった
極稀にステロイド投薬で年単位生きられる子もいると言われていたのもあって僅かな希望を持ってはいたものの、現実は厳しい
薬の量を増やすことと、可能であれば酸素室を自宅に設けたほうが良いと私達にパンフレットを渡しながら先生は言った
「1週間ほど、一緒にいられる時間を増やしてあげてください」
それはどういう意味ですか?そう聞きたかった。けれど、聞けなかった。
命の期限を聞かされるのが怖かったのだ
でも結局、いつその時がくるのか誰にもわからないし、いつだってベストを尽くしやれることをやるしかない
酸素室に入って幾分呼吸が落ち着いたウサギを見つめながらそう考えていた
ネザーランドドワーフ(うさぎ)の胸腺腫闘病記 全4回