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記録〜ハードル〜

少年の、受験生としての期間が終わりを迎えた。

地元の公立高校を第一志望とし、学力試験、面接と無事行程を終え遂に受験勉強から解放された。

彼なりに勉強は頑張ったのだろう。
我々里親が提案した家庭勉強の進め方にも沿って一応は取り組んで来た。

将来とか、人生の展望とか、そんな遠い未来の事は、きっと今はまだイメージ出来ないだろう。
とにかく「高校生」になる事を目標にしながらその日を迎えた。

学力試験の感触は、
「まあ、ほどほど書けたよ」

面接も、
「質問には全部答えた」

帰宅後、彼は自分で中学校へ電話をかけて、日程を終えた事を報告した。

お疲れ様!!
終わったね。
ホッとしているのは私も同じ。

「ハードルを超えないと、次の景色が見えてこないよ」

のらりくらりとマイペースな少年に一度言った言葉だ。
あまりに呑気に日々を過ごしているのを横目に、どうしたら良いものかと日々あれやこれや思案した。
放っておけずに、あれやこれや助言やら苦言やらの半年間だった。
英語と国語の問題集に何ページか取り組み、私が丸つけをしてダメ出しをするという毎晩の日課。
それも終わり。
まあ、やるだけはやった。
言うだけは言った。

自己満足だが、私にとっても満了。

そして……
有り難い事に結果はついて来てくれた。

おめでとう!!おめでとう!!

少年にも。
我々夫婦にも。
そしてお疲れ様でした。

表情には出さないけれど、その心の内の「ドキドキ」や「ハラハラ」や「ソワソワ」はしっかりおばちゃんには伝わっていましたよ。


結果が分かる数日前…卒業式は行われた。

彼は立派に卒業証書を受け取った。
口呼吸のため、いつもぽかんと開けている口を、この時はしっかり結んで歩いていた。
やり切った中学校生活。

穏やかで和やかなクラスメイトと先生に恵まれて本当に良かったね。

後で見せてもらった彼の卒業アルバムの背表紙裏の寄せ書き蘭には誰のコメントも無かった。
遠慮なのか自信の無さなのか興味ないのか…分からないけれど、そんな所はかえって彼らしいなと思った。

春はやって来た。

目まぐるしい世界情勢などはどこ吹く風。

人が一つ一つハードルをよっこらしょ!っと超えて行く…その事にいつの時代も変わりない普遍的な喜びがある。

足元の、目の前の、小さな、とても大切な事。

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