壊れていく
ずっと文章を書いていなかった。
人に説明するための、端的で分かりやすいものばかり求められて、誰かと私にだけ分かる特別で秘密の感情を帯びた言葉は私から失せていった。
心が沈んだ時に助けてくれるのは、そんな言葉。
自己嫌悪に潰された時に側にいるのはその言葉のはずなのに、どうして大事にできないんだろう。
言葉にするのは憚れるけど、今でも大好きだと思うのだ。
貴方の言葉を追ってしまうのだから。
けれども、苦しかった。
美術館だって、数年前に好きになったもので
映画は観なければ、ドラマも観ない。
アイドルもアニメもゲームも好きだけど、全部中途半端。欠けてる私だから、欠けない努力をする貴方が好きで、しんどかった。
貴方の話に必死で着いていこうとしていたけれど、それはできなくなって。
追いつけなければ自己管理不足で、諦めて仕舞えば失望になる。
今の、等身大の自分でも良いと言ってくれるものに縋りたい。ずっとそんな気持ちが消えなくて、話していてもつらかった。
それなのに、弱った時は助けてくれて、好きなものを分かち合ってくれた貴方だから好きなのだ。
でももう、戻れない。
好きなはずなのに、前に戻れない。何度も試したけれど、戻れる感覚がなかった。
本当はずっと前、生活が大きく変わって1週間も経たない内におかしくなった。
ありのままを受け入れてくれる人に絆されそうになった。単なる会話の、単なる社交辞令でしかない。そんなものに絆されるほど脆かったことを認めたくなかった。つらかっただけで、一過性で、時間が経てば治るものじゃないとしたら、自分の長くあったあの熱は何だったのか分からなくて怖くなった。
自分の本当に好きなことだけ、苦しくて好きじゃないことを頑張ってしまった醜い私のことを、頑張ったねって認めてもらえた。
社交辞令でもなんでも嬉しくて、舞い上がった。
舞い上がった日の夜、自分が裏切り者のようで涙が止まらなかった。
そのあとはもう、貴方の以前から感じていた嫌なところばかり目につくようになって、ダメだった。
貴方と過ごす時間は楽しい。
けど、求められる部分は努力しないといけないことで、努力してた自分が好きだったけれど、それができなくなった。
だから、できない自分が嫌いで死にたくなった。
できない自分を受け入れられたら安心もした。
今は、できない自分でいられる。
それが心地よくて、虚しさにも襲われる。
虚しさは目を瞑れば、ただ楽な感覚だけが側に居てくれる。
将来、仕事でやりたいことのない人。
将来、プライベートでやりたいことのない人。
やりたいことなんて、好きなことをしろなんて、簡単に見つからないし、できないし、諦めたくなる。
そんなしょうもない人間でいれたら楽で醜くて死んでしまいたい。
目の前の快楽だけに縋って、早死にしたい。
そんな簡単にいかないし、死の先が怖いから生きてる。それだけの人間。
そんな簡単なことを認めるのがつらくて、必死に隠して生きている。
自分がしょうもないことの否定として趣味を追うことも嫌で、
好きがないことの言い訳としてそんなことを思ってるのかもしれないと思うと嫌になる。
結局、どちらにも意味はないのだ。
気の向くままに囚われずに生きたい。そんな感情だけが残るのだ。
家を見渡せば、貴方が沢山いる。
貴方の周りに私はあまりいないのだと思う。
広島も池袋も行きたくなかった。
貴方を何かで上書き保存するなんて無粋なことはしたくない。
戻らないのなら、思い出したくない。
貴方みたいに、生きる活力にどうやってするの?
通じ合えた記憶が、戻らないことばかり気になって、苦しくて、自分が最低で辛くて仕方ない。
目を背けていたい。
塗り潰すなんてことできないくらいには大切で、目の前の自分を管理できないほど最低だから。