【短編小説】あのとき守れなかった約束を、もう一度。
身支度を整え、あいつのお気に入りの花である水仙と、一番好きなお菓子だっただろうチョコチップクッキーの袋を持つ。
雨天決行。
傘立てから傘を一本抜き取り、私は家を出た。
傘には、ばつばつと勢いよく雨が当たる。ビニール傘は一瞬にして濡れ、そこに数多の水滴をくっつけていた。
春を待つ季節の雨は、しっとりと足元を冷やす。しかし、それは私が外出をやめる理由にはならない。
今日の私には、約束があるのだ。
だから私は、春の嵐にも負けず、目的地へと歩を進めるのだ。
あいつと