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単発短編小説

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【短編小説】幻想の屋上

 僕は放課後、こっそりと学校の屋上へ足を踏み入れる。  左手には、秘密裏に拝借してきた屋上の鍵を。  右手には、暇潰し用の文庫本を携えて。  今日は雨が降っているから、屋上に入ってすぐの軒下に腰を落とし、僕は本を読み始める。僕のこれは雨が降っていようと関係ない。雨天決行なのだ。  この禁断の習慣が始まったのは、去年の夏のこと。  周囲の環境が煩わしくなって、気まぐれに屋上へ逃亡してきたのだが、そこには先客が居た。  先客は視界の端に僕を認めると、くるりと振り返りながら、 「こ