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単発短編小説

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一話完結の短編小説置き場。
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2024年12月の記事一覧

【短編小説】レファレンスサービス

 本を読むということは、本来、もっと冒険的であったはずだ。  数多ある本の中から己の琴線に触れるものを選び抜く様は、宝を探し出すような、希望に満ち溢れている行為であったはずなのだ。  誰の意見も評価も必要ない。孤独で、しかし安心感のある、他には替え難い素晴らしい冒険の旅。  だから私は昔から本屋や図書館が大好きであった――ように思う。  現に今だって、私は図書館の前に立って居る。  だが、どうにも記憶が曖昧だ。  この図書館を訪れる以前の記憶が、ない。  私は何者で、どこで生