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一ヶ月前、世界終焉の日が全世界に通達され。 二週間前、選ばれた人たちは宇宙へ旅立った。 一週間前、冗談みたいな天変地異に見舞われ。 そうして、世界は滅んだ。 そのはずだった。 「なんで生きてっかなあ」 「そりゃあ、死んでないからっしょ」 世界終焉の、一週間後。 滅んだはずの世界の端で、私は友達と海辺に居た。 ほとんどの生き物は死滅した。一週間前に起きた地震と大雨と洪水と津波と……それから、なんだったか。とにかく天変地異が起き続け、それによって滅んだのだ。 こ
(1)――「殺せるものなら、殺してみろ。ただし、美しくな」 暗闇の森。 この辺りの人間がそう呼び畏れ近寄らない森で、少年が一人、ぽつねんと輝いていた。 輝いていた、という言葉に間違いはない。 老人のように白い髪、陶器のように白い肌、血の色をした瞳。 そんな姿で、陽の光が差さない森の中に居れば、輝いていると表現したくもなるものだ。 魔女は、そんなことを考えながら嘆息し、同時に心を弾ませる。 軽い散歩のつもりで歩いてきたが、思いがけず美しい光景に出会ったものだ―
(1)――今日は、というか、今日も、だ。 酷く嫌な夢をみた気がして、私は目を覚ました。 心臓はまだ早鐘を打っていて息が上がっているし、十月の朝とは思えないほど滝のような汗をかいている。 それなのに、夢の内容は微塵にも覚えていなかった。 怖かった。 その感情だけが色濃く残っていて、余計に後味が悪い。 「ひさぎー? いい加減に起きないと遅刻するよー?」 階下から、私を呼ぶ母の声がした。 この呼びかけで起きなければ、部屋に母が突入してくる。別に、部屋に見られて困る