第2回書き出しコロシアム 1st Setの感想を書いてみました。
★★ご注意★★
★★ネタバレありの感想です。未読の方はご注意ください!!!!★★
参加者様へ。こちらの記事についてはお礼参り等は不要です。念のためご案内いたします。
第2回書き出しコロシアムが始まりました。
『書き出し祭りで結果を残した手練同士の、匿名ガチバトル』です。
書き出し祭りは書き出しの1話のみですが、コロシアムは、第1話から第3話まで用意して競います。
しかも、書き出し祭りで会場第3位以上に入れた方しか参加できません。
まさに選ばれし者たちの戦いです。
会場はこちらです。
https://ncode.syosetu.com/n6367im/
※『小説家になろう』のページへ移動します。
1st Set(予選)では23名の参加者から投票で上位4名が選ばれます。
参加者でなくても投票はできるので、私も全部読んで投票しました。
読んだ順番
目次ページでタイトルを一望し、気になったタイトルから読みました。
読む際にはあらすじも読んでいますが、順番はタイトルだけで決めました。
1番目『AI自動生成なんて創作じゃねえ!』
時流ネタ、攻撃的な言い回し、これはどうみても、目立つように狙ったタイトルだと思い、目立ったことに敬意を表して最初に読みました。
2番目『龍火絶消(りゅうかぜっしょう)』
タイトルからして、龍やバトルが出てくるファンタジー物を期待しました。自分の好みです。
3番目『はぐれた僕らのカンパーニュ』
他とは違って目立っている系。カンパーニュと聞くと、でかくて丸くて歯ごたえがあって、トーストしてもそのままでも美味いパンをまず連想してしまうのですが、パン屋物系とは思いませんでした。
リズム的に伊坂幸太郎とか、一般文芸のミステリ・エンターテイメント系をイメージしました。
4番目『三つ手の彼!』
とにかくタイトルで目立たせにきた感じ、手が三つある彼が出てくる話なんだろうと思いつつ読みました。特にジャンルや内容の予想イメージはなく『出オチの可能性』を考えました。
5番目『誰が召喚獣じゃボケ ~一文無しの魔女見習いは、目が離せなくて手がかかる~』
タイトルでインパクトを与えるスタイルで目を惹いたのと、バトル要素がありそうなのと、推し参加者様の可能性を考えて読みました。
6番目『北限より来たりし物』
地味ですが、きっと重厚系のファンタジーだろうと期待しました。
7番目『さざなみが呼んでいる』
地味ですが、ちょっと目立っていて、しっかりした内容を感じさせるタイトルでした。
8番目『催眠アプリを手に入れた! これでエロライフをぐへへへ「今からお前達には殺し合いをしてもらう」…ぐへっ?』
not for me なのはタイトルだけで見て取れましたが、他より目立って、内容がわかりやすく、どうなるのかという引きも示しているので、優先して読みました。
9番目『どろだんごの神さま』
他とは違って目立つ字面と、他とは違う話(ほのぼの? 和風? ヒューマンドラマ? 童話風?)を思わせる内容のタイトルでした。
残りの作品は、上から順番に読みました。
投票先
異世界転生デザイナーの魔法陣
北限より来たりし物
誰が召喚獣じゃボケ ~一文無しの魔女見習いは、目が離せなくて手がかかる~
AI自動生成なんて創作じゃねえ!
龍火絶消(りゅうかぜっしょう)
(以上、会場目次順)
投票の基準は『自分が好きな作品か』『続きが読みたいか』『キャラ、アイデアなど作品の要素が優れているか』『作品の技術力が優れているか』の総合です。推し系優先で、空いた枠に優れた系を入れた感じです。
なので、作品の内容や技術力で選ばなかったわけではないです。
実は感想を書くにあたって何度か読み直した結果、入れればよかったなーと思っている作品もあります。でも入れ替えるとなるとまた困る。
というか、基本もう甲乙つけがたいです!!!
全部うまいじゃないですか!(逆ギレ)
各作品の感想(会場目次順・ネタバレ有)
※参加者様へ。ご自分の作品の感想をお読みになる際には『感想について』をご覧ください。お願いいたします。
感想について
◆実績のないアマチュア小説書きの感想です。
書籍化などの実績を持つ優れた参加者様ばかりの作品に、うまいとかここがいいなどの感想を言うのは、正直ぼっきり心が折れそうなほど偉そうで恥ずかしいです。決して思い上がっているわけではありません。
◆私個人の感想です。小説としての内容や技術面について書くように努めましたが、好みや感情のバイアスはあると思います。
読む方はほとんど何でも読めるのですが、好みとは違うジャンルの場合、どうしても知識が不足し、解像度も低くなってしまっていると思います。
◆既存作品のタイトルを上げている場合がありますが、これは作品から感じた良いニュアンス・感覚・要素を伝えるための『共通言語』です。
間違っても類似性とかの指摘ではないです。
既存作品名抜きでうまくまとめられない力不足をお許し下さい。
◆お礼参り等は不要です。(勝手に書いたものですので!!)
自分が貰えたら嬉しい感想を理想としましたが、人それぞれ感じ方も違い、私自身の力不足もあります。
ご不快に思われるなど、何かありましたら、こちらのマシュマロに作品名でご連絡下さい。削除訂正等の対処をいたします。
うろくづのまなご
厚めハードカバーの一般文芸の背表紙にありそうな、大河ドラマ、重厚さ、年代的なイメージを連想するタイトル。
印象としては不穏、神秘。意味はわからないものの古語か方言的な雰囲気の言葉から、因習、伝奇、神話的なイメージがあります。
設定や主要人物、話の展開を、過不足なく伝えるわかりやすいあらすじに、さらにぱっと一目でわかりやすいキャッチコピーもついて、作品の予備知識はばっちりでした。
主人公がのっけから大ピンチというサスペンス状況から始まり、興味要素が強いです。
生死の危機のなかで、主人公の状況、独特な宗教の内容、教義が主人公に与えている影響などが、丁寧な説明や描写でわかりやすかったです。
相手役の少女も一話からさっそく登場、その登場の仕方も意味ありげで、不気味な描写が印象的です。第一話のハイライトだと思います。
血のような赤い夕空を背景にした、不穏さが漂う出会いとともに、その正体や能力の謎も残り、まさしくボーイミーツガール×ホラーにふさわしい出会いでした。
最後の方では、もう一人の主要人物らしきライターも登場して、宗教団体の対外的な説明も具体的な描写で補足されて、あらすじで示された内容を展開する準備をしっかり整えた印象の第一話でした。
無用の塔
ダーク、シリアス系の、SFかファンタジーを連想させる、癖のない普通っぽいタイトル、でも中身は癖つよつよでした。
あらすじでは、具体的な設定や筋立てはわからなかったですが、作品の雰囲気やイメージが伝わるプロローグのような感じで受け取りました。
謎めいて静かで不思議な、美しい悪夢めいた幻想世界でした。キリコやマグリット、ダリなどの絵画、ゲームの『MIST』、ゲームブック『展覧会の絵』などを思い出しました。
選ばれた音だけの静寂、限られた物だけの空間、独自のルールや奇妙な違いが加わった行為。
ここはどこなのか、一体何があったのか、最後どうなるのかといった『こざかしい』『騒がしい』ストーリー性よりも、ただ不思議な雰囲気や光景を静かに味わう作品だなと感じました。
金属やガラスのからくりと化した臓器剥き出しの体や、その体にふさわしい奇妙な食事が、淡々とした丁寧な表現で描写されています。書き方によっては、かなりグロテスクになりかねないものに、不思議な美を感じさせます。
個性と独自性、雰囲気は、23作品中ダントツだと思います。
偽りのアマテラス
タイトルは、SF・ファンタジー系の普通っぽい印象を受けました。80年代くらいのムードがあります。内容はシリアスなSFかファンタジーだろうと予測しました。
実際には、予想よりも構えが大きくて立派な大長編の印象でした。
あらすじからすでに、神と人との壮大な歴史が語られています。
世界観や全体の流れ、物語の行く末のイメージ、一種のプロローグとして読みました。
一番の魅力は壮大さです。SF要素もある古代幻想譚という感じです。
冒頭では、人ではない何かが存在してきたとても長い時間が語られ、漂う壮大ハードSF感。
続いて縄文時代の人びとの暮らしが、言葉まで描写されて、個々の人間の感情に迫り、また大きく世界の位置まで離れたり、神の始点で自在なカメラワークで組み立てられた流れは、もうこれハードカバーの大長編ですよね? どこの出版社ですか? という完成度です。(語彙力……)。
第一話の時点ですでに人物が世代交代しており、この先も長い年月や大きなスケールで語っていく物語だと感じさせます。
最後には血の匂いのする事件も起きて引きもあり、別の神という存在、助けるとはどういうことかなど、次回へ続く謎や興味対象が準備され、いよいよ物語が動きだす期待感があります。
この話のアマテラス自体が、日本神話の天照神ではないようなので、そのあたりがどう展開していくのか、タイトルの回収なども気になります。
異世界転移デザイナーの魔法陣
Web小説的、異世界転移・デザイナーが現代技術を使って異世界で何かをするとわかるタイトル。デザイナーという時点で違いを感じます。
あらすじも、タイトルどおりで、非常にわかりやすく、過去と現在とこの先の展開が過不足なく説明されていました。見本にできそうです。
魔法陣+デザイナーというアイデアがとても良いです。
魔法=不思議で無限で自由で楽しいもの。足し算型。
デザイン=論理的・幾何学的・効率的な美しさ。引き算型。
相反する魅力を持つふたつが、魔法陣という、双方の属性を併せもつものを介して合体していて、ギャップと必然の面白さがあります。
『古代ローマ人+日本の風呂』的なタイプの優良アイデアです。
現代技術で無双していく展開に、技術や論理性で裏付けされた、説得力・納得感のある面白さが期待できるのもポイント高いです。
本編も、解決すべき事件と謎を提示して、次回への強い引き、興味要素があります。
その謎も『いったい誰が何のためにどうやって……?』とミステリー的な本格謎解きが期待できる状況になっています。
あらすじでかなり大きな事件を解決するとあるので、一話では少々?かっこ悪かった主人公が、どう鮮やかに活躍するかも期待しています。
人外ちゃんは命知らずの少年に離れてほしいようです
ラノベ・Web小説らしい印象で、内容も伝えるタイトル。
ちゃんなので女の子、少年に離れてほしい=嫌なのにくっついてくる=異種間恋愛かな?と察せられます。
命知らずということは、この人外は怖いとか危険なものなのだろうともわかります。
あらすじでは、キャラが紹介されて、タイトルからの印象どおり『異種間恋愛』、ラノベっぽいライトな『ラブコメ』だと把握しました。
実際の本編では、予想よりグロい感じの人外ちゃんでした。
人の命に興味が持てない主人公は、思っていた100倍くらいヤバい感じでした。
予想と違うのに違わないものが出てきて、驚きや興味要素になりました。
前半はよくある学園物の風景、会話のなかに、ところどころ不穏な要素のある主人公の語りで違和感がちらつき、後半は回想も含めてびっくりのグログロ展開。主人公の異様さが思いきり前に出て、非常に奇妙な独特の作品だという印象が強くなりました。
ガチの精神的狂気とエンタメは相性が悪い(何でもアリになって葛藤や制約が無くなってしまう為)ので、主人公のメンタル的にはどう設定されているのか、今後はどう展開していく話なのかが気になります。
主人公の過去の事件、なぜか攻撃できないなどの謎もあり、あらすじの印象よりもずっとシリアスで、サイコホラーの要素も感じます。
この先も、シリアスなのか、ダークな笑いを目指すのか、まだ一話の時点でははっきり掴めない印象で、とにかく続きを待つ感じです。
北限より来たりし物
重厚なファンタジーを思わせるタイトル。何かが来る、来襲する、境界を越えてくる感で、戦いやシリアスさをイメージします。
本編も、タイトルから期待したとおりの雰囲気や内容でした。厳しい北の地での、正統派ハイファンタジー。冒頭から危険や苛烈さの匂わせがあり、期待が高まります。
厳しい地でも、心温まる優しさが満ちた家、親を亡くした兄妹の愛が、具体的で細やかな表現で描写され、よく伝わってきます。キャラに酷いことを言ってしまうと、あとでひっくり返すお膳立てとして非常に効果的でした。
襲撃からのスウェルの心情も、強く伝わってきて、共感できました。
不気味な正体不明の『奪う者』、その能力の一端や脅威も示されて幕を閉じる一話目。
そしてここから一体どうなってしまうのか、奪う者とは何なのか、など、淡々と次への興味を感じる終わり方で、ぐいぐい尖ったサスペンスでなくとも、自然と次を読みたくなる第一話でした。
偽りの姿をした僕と、優しい嘘を言う君が、陽の光の下でワルツを踊るまで
新文芸・現代恋愛ものの印象を受けるリズムのタイトル。新海誠っぽいきらめく絵柄の表紙がついた文庫っぽい感じです。切ない・青春・悲恋など。
あらすじはタイトルの印象と異なり、男性主人公の異世界恋愛でした。
物語の前提や状況がよくわかって、これも見本になりそうなあらすじでした。(というか、書き出しコロシアムほぼ全部では?)
いわゆる長文タイトルではないタイトルとの組み合わせで、テンプレとは違う落ち着いた恋愛ものの雰囲気になりました。
本編は、主人公の軽すぎない軽やかな一人称で、テンポよく読み進められました。また、シーンの構成がきれいに整っていて、シーンごとに違う演出や語り方の面白さを提示して、とてもスムーズで読みやすかったです。
冒頭からは、笑えるけど気の毒になってしまうほどひどいメイドとの会話で、困窮した状況を説明せずに巧みに説明、自然にシーンを結んで転換。
次のシーンは、主人公の、笑えるけどちょっと悲しくなってしまう語りで、モート家の豊かさが面白く伝わりました。
当主やサラとの対面は、バレるかバレないかのドキドキが演出されて、一人称ならではの面白さのひとつ、『視点者はわかってないけど、読者は気づく情報』も提示されてニヤニヤ。
偽りの姿以上に、由緒正しき貧乏貴族と成金新興貴族という恋にも支障がある状況、しかもおそらくは他の男貴族の目を引く計画のために、でも自分の家のためには誠心誠意協力する二重のジレンマ、きっと両想いのはずなのにいろいろ前途多難で、続きが気になります。
誰が召喚獣じゃボケ ~一文無しの魔女見習いは、目が離せなくて手がかかる~
Web小説・ラノベ系、内容がわかって、攻勢感情で強く出るタイトル。
召喚獣じゃないのに召喚獣にされる・そう扱われる存在、不憫ヒロイン、世話焼き展開であることがわかります。
あらすじは、タイトルで示した内容を、より具体的に分かりやすくリズムよくまとめて、キャラやその変化、関係性による内面の面白さ、外的物理的な困難による面白さと、対立要素をアピールしてまとめています。
最後の二行だけでも面白そうなキャッチコピーです。
本編はのっけから笑いました。何の罪もなく読書を楽しんでいた姿を、なぜか怠惰の悪魔扱い、しかもそう見えなくもないという!
主人公が哀れになってくる一方で、ヒロインへのヘイトは順調に溜まっていき、それも主人公が不貞腐れるのも当然と思わせつつ、読者がミルクセーキちゃん自体を嫌悪するほどではないという、絶妙な上げ下げで調整されています。
『人間ではない』という認定によって、主人公が人間扱いされずにヒドいことされる理由づけもされて、あくまで世界間の常識のギャップであって、個人の悪意ではない範囲にとどめているのもうまいです。
主人公がヘイトを高めるのも当然で、でもいずれ改善もできるし読者もそれを納得できる素地がつくられています。
最後にはヒロインに可哀そうなほどのマイナスが叩きつけられ、読者の同情を高めると同時に、今後の冒険の難易度も引き上げ、主人公との人間関係にも影響させる、とトリプル効果が決まっています。
しかもそう簡単には良好化させない、じっくりじわじわとマイナスからプラスへの変化を楽しませてくれそうな構えです。
設定と一体化して組み込まれた、ほどよい緊張感のある人間関係とその変化が面白い作品だと思います。
はぐれた僕らのカンパーニュ
読み順で書いたとおり、カンパーニュという言葉には、個人的に強くパンのイメージを持っているにもかかわらず、なぜか伊坂幸太郎とか、一般文芸のミステリ・エンターテイメント系をイメージしました。見た目やリズムが実にそれらしいんだと思います。
あらすじでは、現代の会社が舞台で、横領という犯罪、はぐれ者という愉快な仲間の集まりも出て予想どおりかと思えば最後の一文で「?」。大金が動く事件をよそに、日常まったりしてしまうのかと思いました。
本編は、会社の一室でだらだらしつつ、軽快で人を喰ったようなやりとりを繰り広げる会話劇だけで展開する、舞台劇のような面白さがありました。
ほとんど会話をしていただけで、横領にまつわる仕掛けが解かれ、三人のキャラも立っていき、大きな事件もアクションも場面転換もないのに、話はどんどん進んでいくのに驚かされます。
三人とも、癖が強く、キャラが濃いです。ツッコミどころ満載です。二人よりはまともだと自分で思っているらしき舛田さんでさえ、最後の返事には読者がツッコミます。
何もかもぶち壊す悪意に満ちたダーク南條課長に、金のためにブレない意見をスコーンとぶつける瞳子さん、そこから流れるように新計画が立ちあげられていく、このあたりのリズムと流れが一番面白かったです。
二話以降はどうなるか、特にヒントもない状態なのに、彼らはこれからいったい何をどうするのか? という興味要素でしっかり引きになっています。
ほぼ会話だけで展開していく巧みな一話でした。
婚活魔王(コブつき)を、幼女が勝手にプロデュース ~不幸を望まれた人質王女が、魔王国で溺愛されるまで~
Web小説らしい、キャラと内容がよくわかる長文タイトル。定番のドアマットから溺愛ルートの話で、魔王が婚活中で子供もいて、それをプロデュースするというネタ、やるのは幼女キャラ、など、設定に特徴を持たせているのもわかります。
状況を語っていく演出が上手いです。人質として差し出された王女が、まだ五歳児というギャップの面白さ、うきうき期待してたであろう魔王様の落胆などが伝わりました。
物語の前提は、疑問点なくわかりやすかったです。
人間の国側の事情、魔族の捉え方、主人公の立場などの必要な情報は、主人公のキャラ性とともに語りで簡潔に提示され、魔王国側の考えや事情も、宰相との軽快な会話で面白く説明されていました。
最後にいよいよ、タイトルどおりの内容が始まり、そして主人公の主観では、立場が崖っぷちになっていることで、次回はどうなるかという期待喚起、引きもあります。
まだタイトルの『コブ』も出ていませんし、どんなキャラか、どんな役どころかなどが焦らされています。(もしや文字どおりのコブ? などなど)
文章もなめらかに読みやすく、良質な第一話になっていると思います。
魔王の娘と旅をした。
静かな旅路、人生における特別な時間・期間、過去、追憶、世界の風景、心を揺さぶる大きな何か、切なさなどをイメージさせるタイトル。
『葬送のフリーレン』『ヨルムンガンド』あたりの感じを期待します。
あらすじは、タイトルから感じたものが、期待どおりに入っていました。登場人物、設定、物語の始まり、その先の展開まで、わかりやすく読みやすくまとまっています。
(すみません、書きコロ作者様のあらすじの感想はみんなこんな感じになってしまいます、私ごときがあれこれ言うのもおかしい!!)
本編は、あらすじで語られた内容を、期待を裏切らず、冗長にならず、退屈もさせず、具体的なエピソードできちんと見せて語っていく、安定した第一話でした。
あらすじの最初の段落で説明された主人公の境遇が、読者の感覚と感情に伝わるシーンやエピソードで具体的に書かれ、訴えてきます。
特に冒頭からの主人公の荒んだ感情や、魔王の娘と出会ってからも、魔族への憎悪や自身への無力感に揺れる、というかどん底までジグザグする心の起伏が丁寧に描かれています。
『結婚しよう』とひょいと来られても、そう簡単に心は動かないのも納得ですし、この先どう変化していくかが見どころだと感じます。
最後は主人公に大きな変化が訪れて、また二人の関係や状況が変わっていくことを予感させます。勇者になることで何が変わるのか、具体的にはわからないので、そのぶん引きはやや割り引かれました。
このあとも、具体的な描写と、人物の変化に寄り添った丁寧な展開に期待します。
AI自動生成なんて創作じゃねえ!
読み順のところでも書きましたが、一見して、非常に計算されたと感じるタイトルです。
時流のパワーワードとネタ、強い感情が入る攻勢の言い回し。
意味の分かるアルファベットは目立ちますし、そこまで狙ったかわかりませんが「なんて」と「じゃねえ」はカクカクした漢字の字面に対してソフトな形のひらがなで、単語がはっきり分かれて見えて、ぱっと見たときに見通しのいい字面です。
一般タイトルよりは長く、長文タイトルよりは短い、長すぎず短すぎない長さ。
口に出したときのリズムもなめらかで頭に入りやすいです。
目次のタイトルをざっと見たときに、ぱっと一番目立って見えました。
文章がうまいと思います。感情を刺激する単語や言い回しをつかった組み立て方、漢字、かな、カタカナのバランス、ライトなオノマトペなどの入れ方、読んだ時のリズムの作り方、すべてに意図や演出のねらいがある感じで、文章技術力が高いと思います。
おそらく朗読したとき、作者様の意図したリズムで抑揚や強弱がつくように組み立てられた語り、その流れのなかで、近未来の世界観が自然に入れこまれ、説明せずにどんどんわかりやすく説明されて、これもうまいです。
そして最後のギミックと、強いエネルギーを爆発させてスパっと切ったテクニカルな引き。
とにかくうまかったです。
どろだんごの神さま
ひらがなの多い字面と、ほのぼの、ヒューマン、童話など、他とは違う内容を連想する単語で、他より目立ったタイトルです。
あらすじでは、主人公、ヒロイン?が紹介され、どろだんごの神様とのこれまでの経緯と、里帰りというイベントがわかりました。アラサーになってもどろだんごの神さまだけが友達なんて孤独すぎます……。
本編冒頭では、主人公の夢で、子供時代のどろだんごの神さまとの出会いが語られます。児童小説を思わせるほのぼのさで、団子から手足が生えて動き出すようすが可愛いかったです。
夢から醒めると新幹線のなかでやりとり。どろだんごの神さまはバスケットに入れられて手荷物として一緒にきたようです。可愛いです。
思春期からアラサーまでも、どろだんごの神さまだけが友達なんて、主人公の交友関係が寂しすぎます。しかも(たぶん)パントマイム的なものだけで、言葉的な意思疎通はできない状態で二十年。
後輩ちゃんはどうして、主人公よりもどろだんごの神さまとコミュニケーションが取れるんでしょうか? 普通にコミュ力なのか、それとも神さまがらみ的な別の何かなのか。
後輩ちゃんがゴリ押しに実現した里帰りの理由も気になります。単純に恋愛的なものなのか、それとも神さまの故郷であることに関係があるのか。
旅館での振る舞いをみると、後輩ちゃんは主人公に対して好意があるのではないかと思えます。どろだんごの神さまも、後輩ちゃんに好意的ですから、敵対的な存在ではなさそうです。
どろだんごの神さまが可愛いです。新幹線やレンタカーなど、現実的な状況のなかで、小さくてファンタジーなどろだんごの神さまがちまちまと動いている画は、可愛さが際立ちました。
飲食とかはしないんでしょうか? したら可愛いと思います。
『あざと可愛い』姫勇者さま! ~元悪役令嬢の彼女が俺(モブ)の事を好きすぎる!?~
内容が良くわかる、Web小説としてアピールするタイトル。ヒロインのキャラクター性と、地味な男が愛されるラブコメであることがわかります。姫・勇者・元悪役令嬢と、ヒロイン設定かなり盛っています。
あらすじも、主人公、現状、変化のきっかけ、この先何かが起きそうな情報、魔王の存在まで示されつつ、主人公にとってはヒロインが可愛いことの方が重要らしいラブコメだとわかります。
また、文面だけで、ざっと見た画的な見え方だけでも、作品情報を改行とブロックで起承転結に展開して語ってる形になっているという、書きコロ作者様あらすじクオリティでした。
本編始まるなり、主人公君がヒロインのことを崇めるように大好きなようす。『あざと可愛い』ですから、読者にはこのヒロインが本性を隠してるのはバレていて、騙すヒロインにも、騙されてる主人公にも、最初はあまりいい感じを持てませんでした。騙されてるとも知らない主人公は、ちょっと気の毒にはなりました。
そして、視点者には謎物体でも、読者にはいったい何なのかよくわかる落とし物が! 握りやすい、がついツボりました。
謎物体の拾得から、いかにもゲームらしい移動でシーンが切り替わり、早々に主人公はヒロインの本性を見るという、スムーズでスピーディな展開。
パンくず作戦、あざとい! ついてもいないのにつけてたことにされた主人公、かわいそう! そりゃ好きな子の前じゃ恥ずかしいし、取ってもらうなんて嬉しはずかしすぎるよね! です。
でも、ヒロインは主人公に好かれたかっただけのようで(なんでそんなに好きなのか、聖女とかそのあたりの謎は残りますが)、特に性格が悪いとかもなく、別に素の口調でも可愛い。主人公も、素が見えたからといって即幻滅とかせず、むしろ気楽に喋れる感じで、まわりには秘密でも、二人の間では本当の関係が始まると期待できます。
テオ君、崇める対象じゃなくなっても、エリカさんのことぞんざいにしたりしないで好きでいて~! と願います。
三つ手の彼!
出オチ感はあるものの、目立つタイトルです。短いので、一見しての内容やジャンルの手がかりはなく、手が三つなら、ファンタジーかSF、彼という言い方から現代かなという印象を無意識に与える感じです。
あらすじでは、少ない文字数、見やすいレイアウトで、読み手にとても親切な情報提供がされています。『これは何の話なのか』を、シンプルな一文でびしっとわかりやすく表現し、一話~四話のサブタイトルを出して、全体のボリュームも見やすくなっています。 全体、と思ったのですが、読み返すと全話とは書いていないし、第四話の『風の到来』というタイトルは、最終話よりは新エピソードや新展開を思わせなくもないので、今後の予定を勝手に勘違いしてたらすみません。
いずれにせよ、作品を見通しよくシンプルに伝えてくれるあらすじでした。
本編は、季節のエピソードとともにめぐっていくオーソドックスな青春物の構成に、やたらハイテンションな主人公の女の子のセリフや語り、さらに『手が三本』という謎設定の彼という、とても奇妙な組み合わせでした。 どうしても『何で手が三本?』というところが気になってしまって、乗り切れない部分はありました。現実の遺伝的変異などで実際にあり得る症状なのか、ファンタジーないしはSF的な理由があるのか、そのへんは気にしない寓話的なノリなのか。
リアリティのラインがあいまいなままで、ちょっと周波数が合わせづらい作品でした。
元気で明るい前向きな主人公の女の子は、面白くて魅力的でした。
騎士令嬢と偽者悪女の共謀~婚約破棄させたので自由に生きます~
わかりやすい婚約破棄のテンプレート。女性キャラ二人、共謀という単語から、テンプレアレンジ、百合かシスターフッド要素も感じさせます。
あらすじもタイトルどおり、婚約破棄をきっかけに、二人の令嬢がそれぞれ自由に生きる展開が示されます。
本編冒頭は定番の婚約破棄シーンから。タイトルどおり、ヒロインのリリアーナは剣術を嗜む武闘派で、戦える女子はそれだけで好感度アップです。
次のシーンで、婚約破棄が関係者全員の芝居だったことが明らかに。しかも、リリアーナは行方不明の弟を探す自由を得るのが婚約破棄の目的で、弟のふりをして囮にまでなるつもり、勇ましい! また好感度アップです。
悪役を引き受けたジュリエットの方も、投資したり、相場から世の中の動きを予測したりと、自分で稼げる能力があり、こちらも好感度アップです。
弟ユリシスの行方不明と、戦争の気配がからむ陰謀の動きもあって、今後大きな事件になりそうな展開も、期待が持てます。
ロミオ&ジュリエットからの餞別は、超強力なチートアイテムだし、腕の立つ従者も同行しますし、リリアーナさんの旅は陰謀渦巻いていても心配なさそうなのですが、姿を消してしまったジュリエットさんの方は心配です。
ロミオがジュリエットを好きじゃない? ロミオとジュリエットなのに!? ありえん!……真相はどうなんでしょうか。
ロミオとジュリエットが愛し合うと、悲劇フラグが立ってしまいそうですが、Wヒロインが幸せになれることを願っています。
さざなみが呼んでいる
海、呼ぶといったキーワードから、海辺の街や海を舞台とした話で、伝奇・ホラー系か少し不思議なヒューマンドラマあたりを予想します。
あらすじの内容も、タイトルからのイメージに沿ったものでした。人魚の肉をめぐるホラー、因習っぽいものだとわかりました。
冒頭の画が強烈でした。この小説の最強ハイライトだと思います。
下半身に魚がびっしりたかった、人魚のように見える死体。
人魚物関連でも、見たことのないイメージでした。グロテスクさと美しさ、恐ろしさがあります。しかもよりによってス○ミーの例え。非現実的な幻想性と、現実的な生臭さとが同時に伝わる、つかんでくるファーストシーンでした。
学校のシーン、夜の待ち合わせのシーンと、時間を戻して冒頭へとつなげる流れの中、その時々の主人公の心理や感覚が、とても丁寧に描写されています。
謎めいた美少女を見たとき、約束をするときには、妖艶な美しさと不思議な雰囲気がまざまざと、さらに、それに呑まれるような主人公の感覚が。
死体を見た時や、恐怖に耐えられず逃げ出したときには、心臓の鼓動や息づかいが伝わってきそうな主人公の恐怖やパニックが。
主人公の心理と感覚に深く没入した描写、味や匂いまで伝える臨場感が、この小説の一番の強みだと思いました。
そして最後は、たぶんそうだろうと予想していたので驚きはなかったですが、消えたことで話は展開していくので、次話を見て状況を確認しようとするくらいの引きになっていると思います。
いずれ魔王になる彼と、彼を愛した魔女の話
アンハッピーエンドかメリーバッドエンドの結末と、追憶的な内容を感じさせるタイトルです。魔王ではなかったのに魔王になるわけで、何か大きな苦痛や悲劇がありそうです。たぶん彼を愛した魔女に。
あらすじでも、魔族撲滅の極端な価値観によって、魔の国だけでなく世界中が迫害や蹂躙で傷つけられ、悲劇がくりひろげられている感じです。
侵攻した女勇者に対し、侵攻された魔王が語る追憶の物語。二人の運命が変わるということは、少しは良い結末が期待できるのかもと思いました。
冒頭から、女勇者は、偏見に満ちた価値観で教育され、支配され、行動してきたのがわかります。自分では正しいつもりで、操られるままに国ひとつを滅ぼそうとしている。
侵攻してきた国境とかの序盤ではなく、すでに大勢殺してほぼ制圧状態=過ちが大きくなったあとなので、バッドエンド率があがってしまいました。
もうすべてが取り返しがつかないまでに終わってしまい、魔の国は偏見に押しつぶされて、必死に生きた女勇者も救われない。これはもう幸せな結末は望めないだろう、悲劇なんだなと感じました。
そんな絶望的な雰囲気のなかで、魔王の謎めいた言葉と行動。
最後の最後のようなこの場所で、いったい何を話したいのか、何のためなのか。
魔の国の王は、なぜ臣下たちに先制を禁じ、手を出されない限り戦うなと命じたのか、国を守るために強大な力を振るわなかったのか、なぜ散々にやられてからやりかえすつもりなのか。
勇者に話を聞かせて『ロウ』の呪縛を説くことに強くこだわっていることに、何か重要な理由がありそうです。これから語る過去の物語によって、謎や理由が解き明かされていくことを期待します。
悪役令嬢は幸せな夢を見ない
悪役令嬢テンプレだとわかるタイトル。不穏で暗いイメージ、不幸や鬱展開を感じさせます。
あらすじでは、婚約破棄・断罪といった人気要素も入り、最愛の人を失いそうになったり、最愛の人からの婚約破棄を回避せんとする戦いだったりと、暗く不穏な展開の悪役令嬢物だとわかります。断罪されるまでの物語ということは、ギミックが無ければアンハッピーエンドになります。ヤメテ。
という願いをよそに、ヒロインの見る夢は現実になる可能性があるらしいし、婚約者アルベールは、よく婚約破棄をつきつける顔だけバカ王子とはかけ離れた、合理的で有能な皇太子だけど、合理的であれば婚約破棄も断罪もしそうだという見通しだし、順調に最悪の未来の布石が並べられています。
ヒロインの見る婚約破棄の悪夢は、現状ではとてもありえないような事態のはずなのに、そこをパズルのようにひっくり返していくドツボ型アンハッピーエンドにしないで下さい。
ヒロインと親しい男爵令嬢が、うっかり公的の場で身分をわきまえない振る舞いをしてしまうのをフォローしている、というエピソードも、悪役令嬢物を知っていれば、なかなかヤバい事態につながりかねないなと感じさせ、一話の時点では問題なくても、今後の不安を高めています。
そして新たな悪夢はアルベール毒殺の未来、一方、婚約破棄の夢で断罪された罪状のひとつは『毒殺未遂』。
おそらく、今後も夢の不幸に対応せんとすれば、『傷害』『詐欺』と罪状が重なり、イザベラが悪役令嬢になっていくという悪循環は明白。
それでも愛する人を助けようと行動するイザベラが、不幸にならないことを祈ります。
闇色の世界で、禁断の果実をほうばって
ダークファンタジー的なタイトルです。具体的な内容は不明ですが、禁忌、破戒、局外者、絶望、官能などのキーワードが浮かぶ感じです。
あらすじは、正統的で退廃的な感じのダークファンタジーでした。
主人公たちの設定と、今回の事件を伝えつつ、世界観と雰囲気の闇で包みこむ感じの、筋立て以上のものも伝えてくるあらすじでした。
作品全体で、闇と官能の静かな美を感じるふんだんな描写が魅力的です。
冒頭からのシーンのつながりかたも無駄なくなめらかで、不気味で微グロな戦闘シーンで緩急をつけつつ世界観を説明する冒頭から、主人公と少女の関係をじっくり描く中盤、最後には人物と危険が投入され、激しさが予想される引きと、場面構成もきれいです。
永遠に若いままの少女が、死体の血肉を味わうさまを描いた美しくてグロテスクな表現と、そこで主人公が感じる絶望の深さ、このシーンが一番よかったです。
苦悩の中で最後の一線だけは護ろうとする主人公にも好感が持てます。
少女と主人公の間には危うい均衡感があって、シーソーがいつどう傾くのか、そんな緊張感も、この先も物語を貫く静かなサスペンスになっていると思います。
催眠アプリを手に入れた! これでエロライフをぐへへへ「今からお前達には殺し合いをしてもらう」…ぐへっ?
非常にわかりやすいタイトルです。しかも、何をするか、何が起きるかの流れを示しながら、笑えるオチまでついています。突っこみたくなります、何じゃそりゃ! って感じで。
催眠アプリエロと、デスゲームという、何ら親和性のない組み合わせも、面白さをつくっています。
あらすじもぶっ飛んでいます。一見、文字が詰まって読みづらそうなのに、実は全然そんなことはなく、突っこみどころ満載の情報がみっちり詰まっています。字面そのものが、饒舌のテンポを作っている感じです。
しかも主人公、あらすじの段階で、割とというかほぼ死んでます、倫理観。他のキャラもぶっ飛んでます。シニカルでダークな笑いを目指す感じだとわかりました。一応クラスメイトの命は(エロ目的でも)守る流れなところは、良いなと思いました。
本編読んでも、わりとどころではなく、倫理観が欠如していました。エロが好きでスケベなこと自体は、エロ嫌いでもなければそれほど好感度を下げる要素ではないと思うのですが、倫理観は諸刃感があります。
この作品は、基本主人公を好きになって読むものではなく、現実では絶対できないことをやる、やりたがるのを楽しく眺める感じだと思いました。
そして始まったデスゲームが、意外にも、デスゲームとしてガチでした!
ちゃんと独自のルールが作られたゲーム、本当のデスゲームが始まってびっくりしました。デスゲームシチュで笑いを取るんじゃなかった!
デスゲームに対策をとったり、ゲームの本質というひねりが入って緊迫感が高まったり。主人公が勝利を導く道筋も、デスゲームとして理屈が通ってました!
ここだけ取ったら、普通にデスゲーム物なんですが!!!
でも主人公は、クラスメイトの命を守るというより、エロ対象を惜しんでるだけでした! 好感度は持ちえませんが、ブレなさと意欲がすごすぎます。
さりげに学年三位の去来川君より頭いいとかあって、まじかと思いました。デスゲーム面ではなるほど、なんですが。
読み順で述べたとおりnot for meなのですが、この作者様はかなりの手練と感じました。『バクマン』では8対2ぐらいに数えていたこういった内容、最近のWeb小説やマンガなどみると、けっこう6対4ぐらいありそうで、人気獲得できそうな気もします。
悪魔で拒絶し、夢を視る
ダークファンタジーをイメージするタイトル。何をするのか、何が起こるのかは曖昧。
実はダブルミーニングの駄洒落みたいになってたんですね。
さくさく読める文面で、まとまりのいいあらすじ……書きコロ作者様のあらすじはどれもレベルが高いです。主人公、状況、なぜそうなったのか、今後どうするのか、つまりどのような面白さを見せる話なのか。縦にぱっと読めるほど簡潔な文章でまとまっています。
悪魔との契約を維持しなければ、家族の魂を喰われてしまう。
一言でわかる、逃げ道のない困難な状況の設定と『他の契約者との戦い』という、バトルと、バリエーションが楽しめそうな(というと主人公には申し訳ないのですが)手段。
あらすじの段階で、面白くなりそうな種がいっぱい埋まっています。
悪魔との契約の結果、家族がどうなったかの描写が凄惨です。その前に、ロリ悪魔ちゃんとのやり取りで主人公の気が緩んでいたために、残酷さが際立ちました。特に、フィルムの巻き戻し的に、血まで綺麗に甦るところが印象的でした。
『他の契約者との戦い』は、特殊なルールに基づいて頭脳戦や駆け引きをするデスゲームタイプの戦いだったので、意外でした。ガチにドカドカやりあうんじゃないんですね。
しかも、主人公自身は無能力のまま、悪魔の能力を持つ相手と戦わなければいけないという、さらなるハンデが追加されて、より厳しい戦いの面白さが楽しめそうです。(主人公には申し訳ないのですが)。
しかも、どんなに頑張って勝っても、家族はもう死んでいるという救われない状況。主人公はただ、家族の魂が食われるという最悪の事態を避けるためだけにしか、頑張れない。この先を思うと、すごくつらい物語です。
最後は、デスゲームにふさわしく、いかにもらしいヤバそうな敵が現れて……え!?
ちょっと回避法の想像つかない感じです。面白い続きを待っています。
できれば、こんな地獄から救ってあげて欲しいです。普通の家族思いの少年が可哀そうです。
(あと、戦っている最中もずっと耳鳴りがするのはしんどそうです)
龍火絶消(りゅうかぜっしょう)
龍が出てくるシリアスファンタジー物、火や死を連想するタイトルです。
漢字四文字なので、日本やアジア系の印象があります。中国感はなかったです。
あらすじ。……。
これはもう、紙の本の裏表紙、帯、カバー折り返しなどに使ってるフレーズです。「8月――龍は燃える。」を帯にデカデカと出して、上の四行を添える感じで。
宣伝文としてかっこよく完成している上に、中身も目を引く要素だけがシンプルにまとまっています。1945という年号、2000メートルの龍、テロ的状況。スケール感と大事件感に加え、8月に燃えるといったら、日本人ならピンときます。
本編のすぐ上で、サッと読める感じで短く添えてあって、中身をばっちりアピールするあらすじでした。
本編も、あらすじからの期待どおりに、大きな構えとスケール感のある、近現代風の異世界ファンタジーでした。巨大な龍、その背中に滑走路や学校があるというビジュアルが映画のように壮大でした。
主人公の少女は、冒頭からの描写で、夢見がちとというか、ファンタジーへのあこがれから龍にこだわり、つい最近まで長く伸ばしていた髪からも、女の子っぽいタイプだとわかりました。
巨大な龍やその上の施設だけでなく、龍の姿や力を持つ人間など、独特の設定が、来訪者である少女とともにわかりやすく示されて、世界観に馴染みやすいです。
龍の鱗や尻尾がある人間が普通に存在している国、その龍の人が超頑丈で力持ちのいわば人間兵器と化すなど、ファンタジー設定的に魅力的です。
とてつもない兵器のような少年兵は、人命救助したり、少女を気遣ったりするところから、好感が持てました。
最後は主人公がかなりヤバい状況となって、引きが効いています。
軍隊や兵器といった現実的で過酷な要素と、主人公の少女らしい素直さやファンタジーへの夢見る憧れという対比も、この先どうなるのかと思わせます。
最後に
第19回書き出し祭りの時は、感想依頼でいくつも書いて頂いたくせに、自分はほとんど書けなかったという反省がありました。
今回の第2回書き出しコロシアムは、上位実力者によるガチバトルにわくわくした勢いで、『23作なら、書き出し祭りよりは少ないし、全感想いけるかな!!』と挑戦してみました。
しんどかったです。何度も途中で諦めそうになりました。
自分よりうまい作品に長々あれこれいうのってセルフ拷問でした!
恥ずかしくて心バッキバキです。もうライフはゼロです!
とりあえず、書き出し祭り関係に多少のご恩返しができたのではないかと、ひとりで満足しています。私自身は、これだけ読みこんで書いたことで、経験値みたいのも得られました。
もし少しでも、何か参加者様のヒントになりましたら幸いです。
至らなかった点は申し訳ありません。何かありましたらマシュマロでご連絡ください。
2nd Setは、さすがにもう全部は無理だと思います。
準決勝の四作品は書く予定です。
以上です。
読んでくださり、ありがとうございました。
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