高齢ドライバー

【※2019年5月8日にFacebookノートに投稿した内容を再掲】


高齢ドライバーに免許を返納させるべきか?マスコミ等で池袋での母子死亡事故をきっかけに議論が「再燃」している。

返納に賛成の意見の多くは高齢ドライバーの運転能力の低下を懸念したもの,一方,反対の意見の多くは返納後の代替となる利便性高い交通手段がないこと,特に田舎では顕著であること,のようである。

しかし,死亡事故を起こした年齢層は高齢者が顕著なのだろうか?事故が多いかに着目するなら,免許人口当たりで事故が起きている割合,すなわち「事故占有率」で見て75歳以上で高いようではあるが,高齢化社会=高齢者人口の増加に伴うところもあるだろう。よって,事故を起こしやすいかに着目して,年齢層人口当たりで事故を起こしている割合,すなわち「事故発生率」で分析すべきである。事実,「事故占有率」では20歳未満の割合も,高齢者層を除く他の年齢層よりも抜けて高く,この若年齢層人口が高齢者層に比べて少ないことを考えると,若年齢層の「事故発生率」も高齢者層並みかも知れない。

ということはである。事故発生率の観点からすれば,高齢者層のみならず若年齢層も高いわけで,その要因は前者は能力低下(経験過信),後者は能力不足(経験不足)と,いずれも「能力(経験)」に関係していると考えられる。すなわち,高齢者だけでなく初心者も事故を起こしやすいということなのだが,じゃあ,初心者に免許返納をという話にはなっていない。中部大学の武田教授は,若年齢層に返納をと言わず,高齢者層だけに返納をと言うのはいじめである,とコメントされているが。。。

では,高齢ドライバーに免許返納を勧める必要はないか?私個人の答えとしては「勧めるべき」である。なぜか,それは,事故起こす「潜在性リスク」が高いということである。すなわち,高齢者は,概して,動体視力,反射神経など運転に必要な「動体能力の低下」や,心臓発作,脳卒中など運転中の「突発的な発病」の可能性まで,事故を引き起こす要因レベルが高くなる。前者に関しては,75歳以上の高齢者が免許更新する前に認知機能検査と高齢者講習を受けることが必須となっているが,認知症と判定されない限り免許取り消しにはならないし,免許返納の推奨もされない。後者については,不測のことであり,人間ドックや健康診断などのチェックの結果で「予備軍」となったとしても,多くは性善説にたって自分は大丈夫と思うだろう。

高齢ドライバーの免許返納を制度化するに当たり,無条件で年齢で区切るのであれば,冒頭記載した「代替となる利便性高い交通手段」を確保すること,特に田舎では必須である。バスや電車などの公共交通機関は田舎ほど廃止の傾向にあるので,一番の候補は「タクシー」が考えられる。しかし,運賃が高いままでは「利便性が高い」とは言えないので,運賃を安く抑える政策が必要となる。例えば,田舎に限って小回りの利く「軽自動車」タクシーの導入を認めるとか,介護・福祉政策の一環としてタクシー補助券を発行するとか,一考すればいいと思う。免許返納を強制としタクシー利用を推進すれば,高齢者の利用が増加するのは間違いないので,自治体もタクシー業界の誘致がしやすいであろう。ただ,「ポスト高齢化社会」の課題はあるが。。。

ちなみに,自動運転自動車の導入は,高齢ドライバーの事故低減に寄与するとは思うものの,低所得者層の高齢者には高額なものであり,この自動車購入費に補助金制度を導入するぐらいなら,上記の通り田舎でのタクシー業界の活性化に資金投入したほうがいいと思う。

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