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医療と改善活動(特にQCサークル活動)について①


医療機関でのQC活動について

 医療機関(多くは「病院」)では様々な改善活動が行われています。その中でもQCサークル活動(以下、「QCC活動」と略)は多くの医療機関で行われています。また、そのような改善活動の発表が一同に集まる発表大会も存在します。

 改善活動なので、以前よりも良くなって(改善して)いれば良いものですが、このQCC活動では独特な視点があります。それは「QC的ものの見方・考え方」です。

https://www.juse.or.jp/upload/files/shanai_rensai_kaizen_01.pdf

日本科学技術連盟  連載 改善の手順 ~QCストーリーとその選択~ 
第1回 QC的ものの見方・考え方  須加尾 政一 著

 この視点がQCC活動経験の経験の浅い方にとっては難解であり、QCC活動に対して苦手意識をもってしまう原因の一つであろうと思います。このシリーズでは、医療現場の改善に特化して、QCC活動のポイントや注意点について記載していきたいと思います。

問題解決型QCストーリー

実はQCC活動には、現在、以下の4つの型(ストーリー)があります。

  • 問題解決型QCストーリー

  • 課題達成型QCストーリー

  • 施策実行型QCストーリー

  • 未然防止型QCストーリー

 最も多く、また最初に取り組むべき型はなんといっても「① 問題解決型QCストーリー」です。先ずは問題解決型QCストーリーについて理解していきたいと思います。

「問題」と「課題」

 図1を見てください。3本の線とその間に「問題」と「課題」があります。真ん中の線はいわゆる標準状態を指します。日常生活では「問題」と「課題」は混同して使用されることがありますが、カイゼン、品質管理の領域では明確に区別されます。

図1. 問題・課題と標準

 職場の仕事が「標準」状態よりも下回っている状態(長時間の待ち時間が常態化している外来 など)を「問題」といいます。待ち時間がない、または待ち時間があったとしてもいわゆる「問題」となる程度の待ち時間までは発生していない状態との差(ギャップ)を「問題」といいます。その差(ギャップ)を埋めるのが「問題解決型QCストーリー」です。
それに対し「課題」とは、(標準の状態は維持できているが)近院の閉鎖や感染症の流行等により、通常よりも多くの患者の診察をしないといけない場合、および年度目標・上位方針によって増患・増収対策が打ち出された場合の対応等に相当します。今まで通りの外来業務の行い方では対応は困難です。その差(ギャップ)を埋めるのが「課題達成型QCストーリー」です。

そもそも「標準」とは・・・

 繰り返しますが、標準と下回っている現状との差を「問題」、標準とさらにその上のありたい姿との差を「課題」といいます。このことについてさらに理解を深めていきましょう。以下のような外来待ち時間で考えた場合、皆さんはどのように考えますか?

  • ア)受付から診察までの待ち時間 →15分

  • イ)受付から診察までの待ち時間 →30分

  • ウ)受付から診察までの待ち時間 →45分

  • エ)受付から診察までの待ち時間 →60分

  • オ)受付から診察までの待ち時間 →90分

 病状や患者の状態(ADL)によっては ア)15分でも長く感じるでしょうし、高齢者でもスマホを所有するのが当たり前になった現在、動画を見たりしていれば オ)90分 も長いとは感じないのかもしれません。ですが患者がみな、スマホで動画を見ているのではありません。待ち時間の長さの感じ方は患者によって千差万別であり、当院の「外来待ち時間は●分以内」といった管理幅(基準)が必要になります。待ち時間の基準が60分以内では、誰も理解していただけないでしょう。基準は一方的に決めるのではなく、整合をとって多くの方にきちんと納得していただけるように設定する必要があります。
 

測定できないものはカイゼンできない!

外来待ち時間を例に挙げましたが、待ち時間が測定できていないと長いのか、そうでないのかが分かりません。忙しい医療者とひたすら診察をまっている患者とでは同じ時間であっても感じ方が全く異なるはずです。ここで、デミング氏の名言を紹介します。

  • 定義できないものは、管理できない。

  • 管理できないものは、測定できない。

  • 測定できないものは、改善できない。

「忙しさ」は業務を測定することで改善できる | チームの生産性をあげる。 | ダイヤモンド・オンライン

 DIAMOND ONLINE 「忙しさ」は業務を測定することで改善できる   2017.7.21

私はこの名言をとても気にっています。外来待ち時間であれば、A受付~B簡易問診(トリアージ)~C診察 の順番で行うとした場合、待ち時間の定義をA~C、A~B、B~Cのどれなのかを事前に定義しておかなくてはなりません。医療者や患者によって認識が違えば、言語が異なるのと同じで会話自体が成立しません。
 次に、待ち時間をB簡易問診(トリアージ)~C診察とした場合、何分までが待ち時間として許容され、何分以降が許容できないのでしょうか。このように管理幅(基準)を決めて(定義)しておかないと、現在の状態が良いのか良くないのか判断がつきません。
 定義しても測定していなければ意味がありません。外来待ち時間の問題をカイゼンしたいのであれば、当然、待ち時間を測定しないといけません。

「標準」を論じるには標準作業手順(SOP)が必要

 外来の 「待ち時間15分以内」 が管理幅(基準)であるななら、待ち時間60分は、管理幅(基準)より45分も長いといえます。これがカイゼンによって45分が20分に短縮したのであれば管理幅(基準)まであと5分です。
 このように、定義して、管理幅を決め、測定することで初めてカイゼンが可能になります。職場は一人ではなく、多くのスタッフで行うことが一般的ですので、人によって行い方がバラバラであっては困ります。よって、全ての業務には標準的な作業手順を記載した標準作業手順書(Standard Operating Procedure:SOP)が必要になります。標準作業の手順とその管理幅(基準)がないと、良い状態が維持できているのか、良くない状態が続いているのかが分かりません。当然、カイゼンしてもその結果が判断できなくなってしまいます。
 問題解決型のQCストーリーであれば、以下のようなステップで進めていきます。

  1. 職場・サークル紹介

  2. テーマの選定

  3. 現状の把握

  4. 目標の設定

  5. 要因の解析(重要要因の検証)

  6. 対策の立案

  7. 対策の実施

  8. 効果の確認

  9. 標準化と管理の定着

  10. 反省と今後の課題

一般的な分類よりも少し細かく分類していますので、詳細にみていきましょう。次回は  1. 職場・サークル紹介 です。

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