定時制高校勤務
生徒の作文の中に「自分は家庭が複雑で、普通の家族の生活というものを知らない。だから、ここを自分の家庭にしようと思った。周りは年下の生徒がほとんどで、年の離れた年上が一人だけいる。年上には兄と思ってわがままを聞いてもらい、年下は面倒くさい弟や妹と思うことにした。担任は口うるさい親だと思って4年間ここを自分の家庭にしてきた」という内容のものがありました。
彼が各種の大会で獲得した賞状は家に持ち帰ることもなく、教室の掲示板に画鋲で留められています。態度が悪くていつも叱ってばかりの子です。ときには「褒められるようなことをしても何も言わないのに、ちょっとしたことですぐ怒る」と猛烈に抗議されたこともありました。
作文を朗読する彼の声を聞きながら胸が痛みました。帰りの車の中で涙が止まりませんでした。
もし、定時制に勤務しなかったら、日本にこんなに困窮している人々がいるなんて知ることもなかったし、話を聞いても信じられなかったと思います。いや、知ってはいました。理解できなかったのです。
「生活保護を受けているからアルバイトをしても収入があった分だけ保護費が減らされる」「経済的に安定したいから自衛隊に行って資格を取る」そんなことって世の中にあるんですね。
今のアメリカがそうであるように、教育・資格・キャリアを餌に彼らのような若者が戦場に送られることになるのでしょう。
かつて「日本は絶対に徴兵制にはならない。なぜなら、政治の実権を握っているのが金持ちだからだ。自分たちの子どもや孫が戦場に送られるような制度を作るわけがない」と言った人がいました。
そうでしょうか。戦争に巻き込まれる環境を作りながら、自分たちにはその惨禍が及ばないように動く人々がいる一方で、生活のためにその中に放り込まれる人々もいます。
膨大な金を不正に遣いながら弁済も要求されない人と、わずかなバイト代も没収されてしまう苦学生。この理不尽はやりきれません。