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【2024年12月】先月聴いた中でお気に入りのアルバム

 こんにちは。やっていきましょう。ギリギリ年内間に合った。

aus『Fluctor』(2024)

 シンプルで美しいピアノとストリングスのサウンドが優しく流れる作品でした。室内楽とエレクトロニカのいいとこどりをした音像は澄み切っていてここちよく、一つ一つの音要素が深くきらびやかに共鳴しています。BGMとして空間に溶け込むさりげなさもありますが、一つの楽曲・一つの音楽作品として聴いたときにもしっかりとした個性を持ち合わせており、鮮明な印象を持ちました。ピアノとストリングス以外のSEなども効果的に加えられていて、エレクトロニカらしい無機質と有機的な要素が融合したような雰囲気に仕上がっています。優美で繊細な世界観がとても魅力的な一枚です。

Sakura Tsuruta『GEMZ』(2024)

 スタイリッシュなサウンドが楽しいアップテンポなエレクトロニカアルバムでした。軽快なループトラックはハウスビートらしく低音が重く響いており、しっかりとしたグルーヴ感がありました。加えて繊細かつフットワークの軽いメロディーも同時に存在していてどの曲にもはっきりとした存在感と華やかさがあります。楽曲はどれも立体的な構造をしていて、様々な音要素が複雑にピッタリと組み合わさっており、密度の高い作品になっていると思いました。それらが多面的な表情を見せながらも一体感をまとって耳にダイレクトに迫ってくる様は圧巻です。抑揚はつけられつつもアルバム全体の印象はとてもダンサンブルで、聴いていて楽しいビートがずっと続く一枚でした。

有田咲花『貉』(2024)

 ローファイな質感の宅録作品がならぶある意味奇妙なアルバムでした。クールで少しダークとも思える雰囲気がアルバム全体に漂っていて少し不安になるような瞬間もありました。歌詞も曲のタイトルも独特で今にも崩れそうなループトラックといいどこか不確定といいますか形を保っているのが不思議に思えるバランス感でした。各楽器の演奏はとても丁寧で、宅録的な粗削りな質感はありながらも正確性の高い演奏が楽曲の完成度を高めていて、ただ者ではない雰囲気をひしひしと感じます。アングラな空気感をまとう歌声はより本作の核となっていて、聴けば聴くほど一気に楽曲の世界観に引き込まれます。余談ですがアーティストの詳しいプロフィールなどが出てこないのも逆にワクワクさせます。

Meg Bonus『18PWRSONAL』(2024)

 楽曲構築、メロディ、さらには曲のタイトルまでどこをとっても独創的という言葉がふさわしい非常にクリエイティブなEPでした。スタイリッシュで歯切れのいいサウンドから壮大でエモーショナルなムード作りまでアレンジが幅広く、クオリティの高さが一発でわかる完成度でした。ネット時代の音楽性にシティポップやジャズなど様座な要素を混ぜあわせ、見事に一つの楽曲へと昇華させています。作詞も日本語と英語を巧みに使いこなし、男声とも女声とも聴こえるような歌声で正確に歌い上げる、総じて守備範囲の広いアーティストだなと思いました。《!!!!!》と書いて「お!」と読ませるタイトル付けなど、独特の感性が随所に現れて不思議さとちょっとしたユーモアも感じられました。初めての作品がこの完成度とは正直末恐ろしいです。コンパクトながらも存在感は圧倒的でした。

cephalo『Fluorite code』(2024)

 ダウナーな雰囲気が漂う気だるげなサウンドが特徴的なオルタナでした。強く歪みながらも空間の広がりを感じるバッキングギターとピアノ線のように鋭く真っすぐなリードギターのコンビネーションは一級品で瑞々しくてここちよい楽曲の土台を築いています。吐息交じりでドリーミーな雰囲気の歌声も艶やかで楽曲に溶け込むようで溶けきらずにしっかりと曲の主役を張っている立ち位置にいました。メロディーもキャッチーで耳が無意識に引っ張られるような魅力がありますし、ポエトリーリーディングも効果的に混ぜ込こむことでより一層楽曲に重心を与え強度を他編めているのではないかなと思いました。シンプルながらもアレンジは多彩で、バンドの魅力がコンパクトにギュッとまとまった一枚になっています。

Nami Hotatsu『Nami Hotatsu』(2024)

 ニューエイジのような透明感のある歌声とフィジカルを感じるハウスやポップサウンドのコンビネーションがすさまじかったです。重量感のあるハウスビートにこぶしの効いたハリのある歌唱が相性抜群でとても迫力がありました。これがとにかくかっこよかったです。かたやスペースポップのような浮遊感と不思議で広い空間の音像にもしっかりと溶け込む柔軟さもあります。スローテンポとハウスビート色の強い楽曲が程よい感覚で交互に出てくるのでアルバム全体にメリハリがついていてずっと楽しく聴けました。ちなみに今年10月にリイシューされたものでオリジナルの発表は1994年だそうです。バナーのジャケ写も当時のものです。

以上。先月聴いたアルバム一覧のリストです↓

 先月に倣って他にも気になったアルバム何作か名前だけあげておきます

高野寛『Modern Vintage Future』(2024)
Shoko Igarashi『Onsen Music』(2024)
H TO O『Cycle』(2024)
PAS TASTA『GRAND POP』(2024)
ナツ・サマー『オレンジ通信』(2024)
betcover!!『時間』(2021)
本田美奈子『1986年のマリリン』(1986)
P-MODEL『P E R S P E C T I V E』(1982)

 ざっとこんなところでしょうか。今月は他の方の年間ベストを見るなりしてさらえてなかった作品を拾っていく感じでした。でも聴ききれてはいないです。多すぎて。年間ベストの記事も書きたかったのですが何かと時間なくて年明けになりそうです。なので年内noteはこれが最後です。たくさんいい音楽に出会えた一年でした。今年も記事を読んでいただきありがとうございました。よいお年を。


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