見出し画像

【2024年8月】先月聴いた中でお気に入りのアルバム

 こんにちは。やっていきましょう。

片想い『からまるおも』(2024)

 アンサンブルの一体感がここちよい上質なポップスでした。メンバーが主役を入れ替わりで繋いでくコーラスワークや、それぞれの楽器にスポットライトが当たる瞬間が用意されていたりと流動性の高い作品でした。ボーカルとコーラスのハモり方が声色もニュアンスも楽曲によって使い分けて演技がかった歌い方がクセになるおもしろい作風でした。登場する楽器も多種多様で特に個人的にはパーカッションの差し込み方がさりげないながらもしっかりと楽曲に装飾を施していてとても華やかな印象を受けました。包容力のあるホーンセクションもお気に入りです。全体的に歌謡的なニュアンスがやんわりとありますがどの楽曲もしっかりとしたグルーヴ感がありダンサンブルで楽しい楽曲に仕上がってるのではないかなと思います。どこの要素をとってもクリエイティブで楽しさにあふれている空気感がありました。

武田理沙『Parallel World』(2024)

 ハードコアテクノには収まらない規格外のスケールのアルバムでした。あらゆるルールや法則を逆手に取り、分解し再構築するような独特な曲作りは今回も健在でした。より複雑になっていると思います。曲を構成する音数は洗練されている印象を受けましたが、曲そのもののボリュームは変わらず巨大なままでした。アルバム前半は暴力的とも言える展開で一気に高濃度の音楽が次から次へと繰り出され、終盤になると彼女の美しく力強い歌唱をたっぷりと落ち着いて聴くことができる構成になっていました。この継ぎ接ぎしたような加工された声だけでなく美しいメロディーにのせたプリミティブな歌声が今作ではより堪能できるものになっていました。

リーガルリリー『kirin』(2024)

 現実とファンタジーを行ったり来たりした表現はさらに綿密に混ざり合い、それでも今を見据えたから湧き出る渇望や願いが色濃く表れているように感じました。重厚感のあるギターサウンドと儚さと生命力を感じさせる歌声もより一体感を持ち楽曲の完成度を底からグッと上げていました。厚いグランジギターにさらにエモさのレイヤーが重なってさらに歌声に寄り添うような雰囲気を作り上げていたと思います。今回初めて迎えた3名の外部プロデューサーもバンドの色を全く崩すことなくその音色が描き出す景色を鮮やかに拡大していました。

UNKNOWN ME『Bitokagaku』(2024)

 スタイリッシュながらもオーガニックな優しい雰囲気で包まれたアンビエントテクノです。鳥のさえずりや川がせせらぐ環境音がここちよく柔らかいサウンドも効果的に取り入れ、時に加工を施すことで有機的な質感と無機質な肌触りを同時に体感できました。ゆらゆらとしたシーケンスサウンドを中心としつつ、ボトムはしっかりと重量感がありさらにはビート感をしっかりと感じるシーンもあり、アンビエントテクノでありながらしっかりとした聴きごたえのある作品に仕上がっていました。自然科学なニュアンスやアナウンスみたいな声がどこか科学の教育テレビ番組のようなもを想起させ、自然と親しみやすさや懐かしささえ感じました。

米津玄師『LOST CORNER』(2024)

 現在のJPOPシーンを象徴するような巨大なアルバムでした。収録シングルはどれも大ヒット作ですが、アルバム初収録の曲たちもそれに負けない個性とパワーを放っていました。元々米津さんってタイアップ先のものを深く理解してそのテーマに寄り添うような楽曲を作るのですが、それらがバラバラになることなく一つのアルバムとして完璧にまとめ上げられていました。ダークでひりつく緊張感で始まり哀愁漂いながらも美しく優しいバラードでしめくくる最後まで彼の手腕が遺憾なく発揮されていました。メロディーの構築の仕方また崩し方、優しく吹きかけるような歌声からがなるような激しい咆哮まで巧みに使いこなしてそれぞれの楽曲に情感をたっぷりと載せていました。

カーマイン『カーマイン』(1998)

 シンプルながらも丁寧に作りこまれた時代性を感じるロックサウンドが印象的でした。渋谷系の影響が色濃く出ている歌声と歌い方、シティポップや往年の王道ロック、ポップスへのリスペクトを感じさせるアレンジが非常に高い打点でマッチしていました。穏やかで馴染みやすいメロディーラインと大物感を醸し出す説得力のある演奏とのコンビネーションが最高でした。しっとりな質感でグルーヴ感を生み出しているベースの演奏もお気に入りのポイントです。惜しむらくはこのバンドの作詞作曲・ボーカルをされていた築地原崇史さんがすでに故人だということ。ファーストシングル発売を目前に夭逝され、このアルバムは遺作集のような側面ももっているそうです。このアルバムも1000枚限定だったということなので何かしらで再販などがかかってほしいです。間違いなく邦楽史に名を残すべき名盤です。

以上。先月聴いたアルバムのリストです。↓

 夏休み期間のもあっていつもより少なめです。先月も思ってたのですが今年はメジャーシーンでは規模感が馬鹿でかいアルバムが次から次へと出てくるなという印象です。特に下半期に入ってからですね。ただ圧倒されるというか物質的な質量のでかさで殴られてるような気分です。シングルタイアップが主流のJPOPシーンの世相が反映されているように感じます。それが耳への快感にダイレクトにつながっているのですごいです。それとは対照的にインディーズではアルバムごとに別方向へのクリエイティビティが発揮されている印象を受けました。前にもそんなようなこと書いた気がしなくもないですが…そんな感じです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?