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かけがえのないもの、想い出はプライスレス。

お客様にお渡しした際、
「綺麗になった。また使える」と、涙を流された。

思わずもらい泣きをする。

そのバッグの背景は私にはわからない。
ただ、お客様にとってはとても大切なもの。
思い出が詰まったバッグ。

初心に戻れた気がした。

有難いこと、仕事を頂けるのは。
最近、それが当たり前のような感覚になっているような気がして、
良くないな。と思っていた。

初心。

大道芸人の方がボロボロのバッグを持ってきたことを思い出す。

駆け出し時代、
合成皮革の靴やバッグ、安かろう、悪かろう、
そんなものばかり修理をしては、何とかお金にして販売されるメーカーさんが贔屓にする修理屋で働いていた。

「なんでこんなもの作る?」
「すぐ壊れそうなバッグ」
「数年使って、ゴミ箱やん。」
「生み出す側として恥ずかしくないんか。」
と、何か苛立ちを持ちながら仕事をしていた。

ある日、40代ぐらいの男性が入店された。
手にはボロボロの箱型のバッグ。
内布はボロボロで、
最初見た時、心の中で
「いやいや、こんなバッグ捨てや。」と思った。

その男性は、
この金具だけ直してほしい、とりあえず使えるようにさえしてくれればいい。と言う。

伝票に修理内容を書きながら、
少し申し訳なさそうに男性が話される。

「これ、お世話になった方の遺品で、あなたに似合うわ。と奥さんがくれたんですよ。」

「凄くお世話になった方のものだから、ボロボロなんですけど何とか使えたらいいかなって。」

その話を聞いた時、
数分前に思っていたことが恥ずかしくなった。

「想い入れはプライスレス」

お客様にしか知り得ない価値のあるもの

それを直させてもらうのが自分の仕事。
「修理屋」とはそういう仕事なんだと気付かされた出来事だった。

亡くなったばあちゃんが忘れられなくて、
男ってよえーよなー。
って、70過ぎのおじいちゃんが靴を持ってきたこと。

息子が結婚する時、今までのお礼とくれた財布。
死ぬまで使うんだ。

ランドセルをリメイクしてほしい。
夫が最期に息子にプレゼントしてくれたものなんです。

修理に持ってきてくださる、
綺麗にまた使えるように修理させていただくことが自分の仕事なんだ。

と、初心に戻してもらえる出来事だった。


自分の足なんや。
と、10年使ったキャリーバッグ。
メーカーがなくなり、代理店に修理依頼するもメーカーがないので、
できないとお断り。
どうしても使いたい、今までずっと使ってきた。
愛着。
調べて、ここに辿り着いた。
お兄さんに依頼してよかったわ。

想い入れのあるものを直させてもらうのが私の仕事。

「この人なら」
断らない、作られたものなんだから、「直せない」ものはない。
駆け出しの頃の経験、叱咤を今日思い出させてもらった。

たまたま連続して、
初心に戻してもらえる出来事があったので、
今日の日を忘れないように書き綴ってみた。


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