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ラブレターをもらった。



昨日、ラブレターをもらった。


仕事中に。



私はレディースブランドの販売員をしているので
お客さんはほぼ女性。

男性なんて
お客さんの彼氏さんか旦那さんかしかほぼ来ない。



そんな環境で働いているのに
私はなぜかラブレターをもらったのだ。



あの日はいつものように店内を歩いていると
お店の外にいた男性と目が合った。


清潔感のある
パッチリとした目が特徴的なお兄さんだった。

陰キャはイケメンを直視できないので
すぐ目を逸らした。
でも面食いなので脳内で思い出して
あー、かっこよかったなぁと思っていた。


通路を歩いている人と目が合うことなんて日常茶飯事。
声出しをしていたら
気になってこちらを見るのは当然で、
こういったことは今日に限った話ではない。



しかし、イレギュラーはそのあと起こる。


数分…いや、
数時間後だろうか。



「すみません」


と声をかけられた。
声の方を見るとさっき目の合ったお兄さんが立っていた。


ちなみにここまでの展開も別に珍しくはない。


よく道に迷った人がお店の中に入ってきて
目的地がどこにあるか聞いてくるからだ。


いつも通り
(あー、道案内する流れかな)
と思い、男性の所へ近づくと
彼は手から小さく折りたたんだメモをこちらに差し出してきた。


「これ…書いたので読んでください。」


断る理由もなかったので言われるがままその紙を受け取ったものの、頭の中はハテナで溢れていてとても困惑していた。
陰キャなので『は、はい…!』とどもっていたことだろう。


その後は特に何を言われるでもなく
「じゃあそれだけなんで」とかなんとか言って
お兄さんは立ち去って行った。




なんだったのだろうと思いながら
いただいた紙を開いて見てみた。


そこには
前から気になってくれていたこと、
良ければデートをしてくれないかというお誘いと
連絡先が書かれていた。




きっと1文字1文字丁寧に書いてくれたのだろうなと想像できる字で。
簡潔な文の中に想いが伝わって
とても心が打たれた。


お礼を言いたかったけれど
お兄さんはもういなくて
手紙に書かれていた連絡先にメッセージを送るしか方法がなかった。



でも、それはできなかった。


私の気持ちは1mmもブレることなく
お付き合いしている彼に向いているからだ。

この先もずっと一緒にいたいのは彼で
少なくとも現状は
彼以外の人を好きになる未来が想像できない。



例え手紙をくれたお兄さんがイケメンだとしてもだ。



デートがしたいと書いてあった以上、
恋愛対象として見てくれているであろうお兄さんの気持ちに応えられないのであれば
連絡をするべきではないことくらい馬鹿な私でもわかる。



だから連絡をすることなく
この手紙はそっと部屋の引き出しに閉まった。



きっとすごく勇気を出してくれたのではないかと思う。


街を歩いている時のナンパであれば
お得意のガン無視を決め込んで
心も痛まず終わるのだけれど。


お手紙を貰うのは初めてで
無視をするのは罪悪感がある。


あのお兄さんに会うことがあれば
素敵なお手紙をありがとうと言いたい。
そして連絡ができなかったことを謝りたい。


傷つけてしまったら嫌だなぁ。

でも、気持ちに応えられない時点で
連絡をしない時点で
傷つけてしまっているのだろうなぁ。



本当に申し訳ない。



めちゃくちゃプレイボーイなお兄さんで
色んな人に手紙を配り歩いていたらいいなぁなんて思う。


モテる女性からしたらこんなの日常的にあることなのだろうか。

モテる女性も大変なんだなぁって
ちょっと味わえた気がする。(調子乗んな)


こんなことを私が言うのは
絶対に間違っているけれど
私以上に可愛い人なんて10歩くらい歩けば余裕で見つかるから幸せになって欲しい。



あと、
前から気になってたっていつからなんだ。
ちょっと教えて欲しい。


その1文だけちょっと怖い、ごめんけど。



次、職場にきた時は
盛大にあくびして本来の不細工な顔を公開しようと思う。


あの素敵なお兄さんが
ストーカーとかになっちゃうタイプの激ヤバな人ではありませんように。


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