デザイン組織に向けて、アジャイルに行く
ある理想的な状態を描くも、一気呵成には辿り着けないから、試行錯誤を繰り返していく。その過程こそアジャイルだ、という話を書いた。
「アジャイルな組織」「アジャイルなチーム」「アジャイルなプロセス」これらにたどり着くことが唯一の目的ではない。組織、チーム、ある文脈におけるプロセス、それぞれについて、理想としたい状態は多様に存在する。この点を許容すると、「アジャイル」の意義はさらに高まることになる。
例えば、デザイン組織という概念がある。
デザインプロセスと組織構造を統合して、プロダクト開発やサービス提供における「デザイン」の重要性を高めている組織のことであり、問題解決や利用者体験の向上に成果をあげる。
…という組織になっていくためには? ピーター・メルホルツの本をそれこそ読めば良いのだが、どうしたって理想的な組織状態に近づいていくためには、段階を踏む必要がある(もちろん「デザイン組織」に限ったことではない)。
例えば、
(1) 「デザイン」に対する認識と評価について組織内のオピニオンを整備する
(2) 組織内の「デザイン・ケイパビリティ」の確立(育成、調達など)
(3) 「デザインチーム」の立ち上げ、その活動を十分に後押しする
(4) 「デザイン主導の文化」の醸成
(5) デザインチームの拡張、組織全体での「デザイン統合」
といったようなことを段階として講じてみる。
今回の話の主眼は、「デザイン組織に至るための5つの段階」ではない。この各段階において、到達を得ていくためのアプローチにアジャイルを適用しようという話だ。
まず、From-Toを明らかにし、存在するGapを捉える。Gapをもとに必要なこと、取り組むことを洗い出し、バックログの候補とする。以降の具体的な組織移行活動をスプリントで運営する。スプリントプランニングとレビューを繰り返す中で、Gapの具体的な解消を進めていく。
一定、時が進んだところで、全体の方向性を確認する。つまり、Toに向けてどのような状態か?そもそもToの定義を見直す必要がないか?を問う(むきなおり)。進みや目指すものの変化に応じて、Gapがまた変わることになる。新たなGapの定義に基づき、組織バックログをリファインメントする。
こうしたGap解消を、細やかな施策に落とし抜け漏れがないように最初期の段階から綿密なスケジュールを引いて、進捗確認で状況をつくっていく…というアプローチで上手くいくだろうか。たどり着きたい状態自体が、その組織にとっては「初」であり、具体的なイメージや必要な与件が見えきっているわけではない。その過程そのものが本来試行錯誤、仮説検証的であって然るべきだろう。
到達状態としての「アジャイル」が自組織には合わないから、といった判断で「アジャイル」そのものを手放すのではなく。自分たちが向かいたいチャレンジが他にあればこそ、「アジャイル」を手にしたいところだ。