チームや組織の意図を表す「一枚デッキ」
チームや組織に必要なものは沢山ある。
目的や目標、つまり目指しているものが明確になっていなければ、先の見えない試行錯誤の時間が長く続くだろう。仕事を果たすために、専門性や経験が問われる。集団で何かを実現しようというのだから、うまく機能するための動き方も要る。
だから、こうした観点を補強しようとチームや組織としての改善の営みは果てしなく続いていく。改善のためのアイデアやナレッジは渇望され、重宝され続ける。
近頃、特に必要性を感じることが一つある。それは、「意図を表す」ということだ。意図を表せているか、意図をどのようにして表すか。ここが弱い、おざなりになっている、あるいは実は意図が存在していない、そんなチームや組織は営みに苦労することになる。
意図がどこかにあっても、その「意図を伝え合う手段」が貧弱だとやはり有効ではない。あるチームの意図が、ほかのチームからも見えるからこそ、2つのチームは機能的な動きを取ることができる。もちろん、これは、チーム間だけではない。チームの中でも意図が伝わり合わないと、一つのチームとしての機能性が高まっていかない。
さらには、意図を表すものが残され、アクセス可能な状態になければ、時が経つとともに意図は見失われるままになってしまう。自分たち自身で表したものであっても、時間が経てば別人として向き合うことになる。私達の認識は時とともに変わり、意図の記憶を失っていく。どれほど立派な理念を掲げ、専門性豊かな人材が集まっていたとしても、意図が明らかにならなければ早晩残念な状態となっていく。
そもそも意図とはなんだろうか? 何のために、何をしようとしているのか、という思い描きのことだ。つまり、それは「我われはなぜここにいるのか?」に対する回答である。…ということで、意図を表す手段として、毎度のことながら「インセプションデッキ」を挙げることになる。
この3ヶ月は実にデッキ作りに明け暮れていたが、それでもなお伝えたい。インセプションデッキをつくろうぜと。いまだチームや組織の意図を適切に表すような状況には多くの場合なっていないと感じる。
デッキとは何か?ということはもちろん「アジャイルサムライ」にあたってもらいたいが、ほぼ同じ形だがより組織向けに簡潔にまとめた一枚を示す。この内容は「組織を芯からアジャイルにする」にあたってほしい。
インセプションデッキには正規のテンプレートが存在するので、そちらを活用してもらいたいが、サマリを描く上ではここに掲げた、いかにもキャンバス風のテンプレを用いるのも一手である。
当初私はこのイメージをインセプションデッキ全体の説明用に用意していたのだが、チームや現場によってはこのイメージを書き込み用のテンプレと用いているところがある。正規のテンプレートでは10枚のスライドに個別に答えていくことになるが、このキャンバスイメージだと一枚になっているため俯瞰的に捉えやすい。今だと、miroなどでつくることが多いから、なおさら一枚テンプレートでも十分表現ができる。
こうした「一枚デッキ」をチームごとにつくり、部署全体で眺められるようにする。最初に述べた「意図」は一目で明らかになる。さらに、一枚デッキ間の関連をつけていくことで、部署間で何をしなければいけないかも発見出来る可能性がある。「意図」と「意図」をつなぎ、あらたな「意図」を見出すのだ。
一枚デッキを書こう。そうすれば、いちいち他のチームやグループが何をどうしようとしているのかを把握するためのミーティングがいらなくなる。まず、デッキを確認し、それでも何を意図しているのか分からないとしたら、あるいは意図に基づくフィードバックとして、顔をあわせる時間をとろうじゃないか。